19.

 

 

 

「一度、整理しましょう。」

 まるで溜息を吐くかのように、ジェイドが重い口調で言ったが、その場には反対する者もいなかった。
「貴方がたの第3施設では、"ローレライ創造"計画が秘密裏に企まれ、その発案者であるローラ・ゲイル博士は、娘のレプリカのドロシーをサンプルとして・・・かつてローレライとの完全同位体である人物と、さらにその人物の完全同位体を造ろうとしていた・・・。しかし、ローラ博士は行方不明になり、貴方がたは研究内容が知れると、国から処罰と、停止命令が下ると思い、これを隠ぺいした。そして、ローラ博士が消える前に、彼女の傍には"ローレライ"と呼ばれる人物がいて、貴方がたは彼こそが、ローラが造り上げた成功例だと思っていた。・・そういうことですね?」
 リグロは無言で頷く。
 その表情は、硬く複雑に引き締まっていて、まるで罪状を読み上げるかのようなジェイドに、言葉に出してしまうと簡単だと思ったかもしれないし、逆に事の重大さ(単純で済むところまでややこしく問題が大きくなっている点について)に気が付いたのかもしれない。
 
 ところで、とジェイドは腑に落ちないという顔で、
「・・貴方がたは、"ローレライ"と貴方がたを呼ぶ人物を、ローラが成功させたサンプルだと思っていたようですが、そこが不可解です。彼こそが、ベルケントの資料にあった『ルーク・フォン・ファブレ』本人だとは思わなかったのですか?」
 それが普通の反応だと思うのですがね、と言った。
「それはありません。」
 リグロははっきりと首を振った。
「・・・なんでだよ?」
 というのは、ルークのセリフだった。
「そいつは、ローレライと完全同位体だったって言ってたじゃないか・・・レプリカ技術が使えない今、そんな簡単に完全同位体が造れるものなのか?」
「いえ。相当な幸運にでも恵まれないと無理ですね。」
 ジェイドが言った。
「・・・もっとも、完全同位体は造れはしますが。けれど、それは従来のレプリカを造れる状況であって、尚且つ、正確な製造方法がわかっていての話です。あの鼻タレが、すでに構築している設計図でもない限り、一から作り出すのは不可能に近い。ディストは猜疑心と自己顕示欲の強い男ですから、他人に決して研究内容を明かしたりはしませんでしたし、盗まれることを恐れて、安易に読み解けるような記録を残してはいませんでした。」
 今でも、あの馬鹿の研究は、マルクトで厳重に保管されていますよ、とジェイドは面倒臭そうに言った。
 ・・・ちなみに、その経緯とは、研究内容を調べようとマルクトの監察官が触れる度に、いちいちディストは大騒ぎをして、とうとう皇帝が根をあげ「ジェイドにすべて任せる」と丸投げした為である。そしてジェイドは、面倒なので、のひとことで、ディストの血と汗と涙の結晶である研究をそこらへんにぽい捨てしていた。・・・のを、事の重大さがわかっているマルクトの優秀な管理官たちが、保管したのである。

「だからこそ、貴方がたが"ローレライ"と呼ぶ人物が、被験者ではないのか、と疑いを持った訳なのですが?」
 もう一度、確認するようにジェイドが言うと、それはありません、と再度リグロは首を振った。
 ローレライは、と言う。

「・・・彼は、レプリカでしたから。」


「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」

 この場に落ちた、沈黙と溜息はもはやどれが誰のものともわからない。
 本当に今回の事件(と呼んで良いのならば)は、いたるところで、レプリカが関わっている。
 そして、彼らの大事なレプリカは、やはり黙ったままだった。
 しかし、その表情はなにかを思案しての沈黙というよりも、青ざめていて、焦燥や苛立ちといったものを滲ませている。

「・・・"ローレライ"がレプリカだ、というのは?」
 一番早くに、機転をきかせたのは、やはりジェイドだった。
「・・・調べたのですか?」
 ええ、とリグロは頷いた。
「・・彼の第七音素保有率は、体の全音素の93.6%を占めていました。」
「・・・?」
 ジェイドには珍しく、沈黙に疑問符が混じった。
「では、"ローレライ"の第七音素率は、100%ではないということですか?」
 ええ、とリグロは再度頷いた。
「しかし・・・レプリカであるのは間違いないと思います。我々もレプリカに対する研究は続けてきましたが、ごく稀に・・・第七音素以外の音素を含んでいる者がいるという報告があがっています。我々は、それはレプリカ情報を抜かれた時期が早い者・・・つまり、情報が実際にレプリカが生まれるよりも、早くに抜かれ、保管されている間に他の音素の要素が混じったものではないか、と考えています。」
「ん?あれ、それって・・・。」
「・・・アムラジェの話に似ているな。」
 と、アニスとガイが、ジェイドとリグロが睨みあって(いる訳ではないが)いる横で、小声で話す。
 アムラジェも、元素を結合する音素は第七音素だったものの、その他の組織に他の音素が含まれていた。
「・・ということは・・・アムラジェも、昔の人のレプリカだった、ってこと?」
 たとえば、生前に抜き取られたガイの姉マリーのように、実際に情報を抜かれたよりも、ずいぶん後になってレプリカが造られたということだろうか。
 アニスが首を傾げるのを、ガイは見ておらず、白い天井を仰ぎながら、
「・・・リグロさんの説が、正しければ、な。」
 とつぶやいた。
 それに対して、ジェイドは眉を顰め、
「しかし、それですと・・・。」
 と、言いかけたが、いえ、やめましょう、と言葉を切った。
「・・今の状態では、まだ情報が足りません。無駄な憶測はしません。」

 すると、今度は落ち着きない様子で、リグロがルークをちらちらと見ていた。
 それは、伺うような視線で、ルークが気が付いて不思議そうに見返すと、リグロは、どきっとしたかのように、目を逸らす。
 そして、言いにくそうに、それでも確認しないではいられないといった感じで、
「その・・・彼が本当は被験者で、"ローレライ"がそのレプリカ、ということはないのですか?」
 と疑わしそうな顔でルークを見上げる。
「いえ、それに関しては、間違いなくありません、とお答えします。」
 ジェイドが言った。
「・・・・・。」
 その時、ルークの胸に飛来した複雑な思いは、棘のように心のどこかにひっかかった。

 

 

 

 


 リグロとドロシーを残して、一同は民家を去った。
 散々交わした、長い話のおかげで、すでに朝日が森の向こうから顔を出そうとしている。
 あまりにも劇的な展開だった為、全員の頭の中が整理しきれていないのか、なだらかな丘をアルビオールを目指して下りながら、まだ無言の状態は続いていた。
 朝の新鮮な空気の中、周囲の風景すら彼らに参加しようというのか、あたりは静まり返っていた。
 そんな中で、ふいに、ジェイドが口を開いた。
「・・・ルーク・・・。」
 呼ばれ、ん、とルークが顔を向ける。
「・・私は、もしかしたら間違っていたかもしれません・・・。」

 ぎょ!となったのは、なにもルークだけではなかった。
 その声が聞こえた全員がその場で足を止め、ジェイドの顔を見上げる。
 あのジェイドが自分を否定するようなことを口にするなど、珍事以外のなにものでもない。

「な、なんのことだよ?ジェイド。」
 ルークが、驚きのあまり恐る恐る尋ねると、ジェイドはなんともいえない・・・笑みを浮かべ、
「・・ハレルヤのことです。」
 と言った。
「結論を出すが早すぎました・・・。もしかしたら、ハレルヤはアッシュではないのかも、しれない・・・。」
「・・・!」
 ルークの喉がぐぅ、と鳴った。
 それは、縋っていたものを否定された衝撃でもあったが・・・その実、さきほどの話を聞いた後から、ルーク自身、疑っていたことでもあったからだ。
 それを、ジェイドに改めて指摘されると、まるで現実になってしまいそうで・・・知らず知らずにルークの体がこわばる。

「もしかしたら、アッシュのレプリカが、もうひとりいるのかもしれない、ってことだろ?」
 ガイは、その様子に気が付いたようで、ルークをかばうように一歩前に出ると、
「そして、"ローレライ"が、ハレルヤなのかもしれない・・・。」
 と、ジェイドの言葉を補足した。
 ええ、とジェイドは頷いた。
「ただ・・・それだと、いつアッシュの情報が抜かれたのかの疑問が残ります。ご存じのように、アッシュのレプリカ情報は彼が10歳の時に抜かれている。"ローレライ"と呼ばれる人物が、ルークにそっくりである以上・・・少なくとも、アッシュが17歳の時に、再びレプリカ情報を抜かれなければならない。」
「しかし・・・ヴァンが秘密裏にアッシュに、なにかしたのかもしれない。」
「ええ・・・。それならば、"ローレライ"はアッシュのレプリカということも可能になりますね。肝心のハレルヤが、果たしてアッシュ本人なのか、彼の新しいレプリカなのか・・・。」
「そうなるとアムラジェはどこから、ハレルヤ様に付き添っていたのかという疑問も湧きます」
 彼女特有の、遠くを見るような視線で、ティアが言った。
「・・彼らが教団に来たとき、すでにふたりは行動を共にしていました・・・。"ローレライ"はローラ博士と一緒に行方不明になったのですから、どこでアムラジェが登場するのか・・・。」
「そもそも、アムラジェって、ローラ博士のレプリカってことで良いのかなぁ?」
 アニスが口を開く。
「アムラジェはドロシーに似ているし・・・ドロシーはローラ博士の娘のレプリカで・・・。つまりは、ローラ博士とアムラジェは似ている可能性がある訳だし。」
「けれど・・・歳が・・・。」
 ティアがそう言った途端、あ!とアニスはジェイドを見上げた。
「確かに、ローラ博士とアムラジェでは年齢が合わないのですよ。」
 ジェイドが答えた。
「ローラ博士は、行方不明になった当初、34歳だった筈です。アムラジェは・・・見たところ、17、8歳といったところでしょう。」
「それだと、リグロの唱えた、レプリカ情報が古いと他の音素が含まれるっていう説が裏付けられるんじゃないか?」
 ガイが言った。
「アムラジェがローラ博士のレプリカで・・・ローラ博士は昔、レプリカ情報を抜かれていた。それが、2年前に使用された・・・。」
「確かにそれだと、辻褄が合いますわね。」
 と、ナタリアが言い、どうでしょう?と、ジェイドを振り向いた。
「ええ・・・そうですね。」
 答えながらも、ジェイドの声は歯切れが悪い。
 それは、どこかが気に入らない、と思っている態度だった。
 それに気が付き、アニスが指摘する。
「大佐ぁ?まだ、なにか拘っていること、あります?」

 こだわっているというよりも、とジェイドは片目を眇めて、言った。
「・・・これも、私の結論が間違いだった、と認めざるおえないのですが・・・。今回の第3施設消滅は、ハレルヤの仕業ではなかったようです。」
「えぇ?」
「まあ、どうしてそのようなことが言えますの?」
「確信がある訳ではないのですが。」
 とジェイドは前置きし、
「どうもタイミングが良すぎる・・・もしくは悪すぎるとは、思っていたのです。私たちが向かった先に、ハレルヤがいて超振動で第3施設を吹っ飛ばしたとなると・・・偶然が過ぎる。しかし、さきほどまで、私はローレライの化身ともいうべき人物は、ルークと、被験者のアッシュしかいないものと思っていた。だからこそ、超振動を起こせるのはふたりだけに違いないとの結論に達したのですがね。」
 ジェイドは眼鏡をあげた。
「・・・第3施設で、"ローレライ"に関する研究がなされていたのなら、話は変わります。超振動は、ふたり以外の原因でも起こりうる。」
「それって、もしかしたら、アッシュの新しいレプリカが犯人かもしれないってことですか?」
 ハレルヤ様じゃなく?とアニスが聞くと、ジェイドは、いえ、と否定した。
「犯人という言い方が、適切かどうかは別として・・・原因はおそらく、ドロシーの実験です。今回の件だけでなく・・・もしかしたら、内部抗争と噂された前回の火事も原因は同じかも、しれない・・・。」

「!!」
「え?」

 あんな小さな子が、超振動で建物ひとつを吹き飛ばしたのかと思うと、認めたくない気持ちがして、一同はすぐには返事ができなかった。
 それに気が付いたのか、ジェイドは、ドロシーが理解をしていたかは知りませんけど、と言葉を続けた。
「そもそも、"ローレライ"創造の為の研究は、イコールで、第七音素の研究です。科学者たちは、さまざまな角度から第七音素にアプローチし・・・ドロシーもその過程でしかない。彼らは、ローラ博士の研究記録を失い、それでも強引に、研究を続けようとした。そして、それが今回の事故に繋がったのではないか。私は、そう見ているのですよ。」
「・・・・・。」
 嫌な話だな、とガイが、覗きだした青空を睨んで、
「・・・ということは・・・ますます"アッシュ"本人の痕跡が・・・消えるって事でもある訳か。」
 ハレルヤや、第3施設の爆破や。
 アッシュならできると思っていたことが、実は他の人間にもできたのだとしたら・・・アッシュの存在を証明できるものがなくなる。


 ルークのなかで、喪失感と焦燥感がない交ぜになって湧き上がり、心の内を傍若無人に暴れ出す。
 それはまるで、信じていたものから裏切られた時の痛みのようであり、自己否定の塊が、むくりと顔を上げた瞬間でもあった。

 ハレルヤがアッシュであって欲しい、と思う。
 それは彼が無事でいて欲しいと切望することでもあり、そして。
 
 もしも、"ローレライ"がアッシュの新しいレプリカだったのだとしたら。
 

 アッシュのレプリカは、自分だけではなくなってしまうのだ。


 ルークは、唇を噛む。
 自分以外のレプリカには何度も会ったことがある。
 当然のことながら、彼らには親しみの情が湧く。

 それなのに、アッシュの他のレプリカ、と思った途端に、湧き上がる胸の痛みは、一体なんなんだろう。
 許せないと喚き散らす、落ち着きない駄々っ子がルークの心の中にはいて、それはルークの手には負えない。


 アッシュ、とルークはそっと、その名を誰にも聞こえない大きさで口にした。

 彼に会いたかった。

 それは、もはや願いにも近い。

 ジェイドがルークを見ると、ルークは、唇を噛む幼い仕草で俯いている。
 その頬のあたりを、長い髪がカーテンのように覆っていた。
 旅を始めたばかりの時も、今と同じ様に長かったが、見慣れない気になるのは、濃厚な髪の色のせいかもしれない。
 以前は、上から下へとグラデーションになった朱だったが、今のルークの髪は真紅に近い。
 彼の被験者のものと同じ様に。
 もしかしたら、これも考えるべき事かもしれないとジェイドが思っていた時だった。


「・・・・っ・・!」

 短く噛み殺したような悲鳴とともに、ルークが額を抱えて膝をつく。

「ルーク!?」
「どうした!?」

 仲間たちは、突然のルークの異変に動揺して駆け寄ったが、当のルークは片手をすい、とあげて大丈夫だと合図を送る。
 その様子に、ジェイドは両手を軍服のポケットに入れたままで近づいて、
「通信ですか?」
 と尋ねた。
 こくん、とルークが答えると、一同のルークへの呼びかけも収まる。

「空・・・。」
 とルークが、目を閉じたままで言った。
「青くって・・・白い雲が浮かんでて・・・綺麗だ・・・。」
 ルークは、誰に向かって言ったのでもない言葉をつぶやき、それから次の瞬間には、まるでなにもなかったかのように、けろりとした表情で顔をあげた。通信は、このほんの僅かな時間で切れたようだ。
 その瞳には、もう苦痛の影は見えず、それを確認したガイが、さきほどのつぶやきに対して尋ねる。
「空って・・・空が見えたのか?ルーク。」
 ルークは、うん、と頷いた。
「どっか・・・高いところだと思う。やたらと空が近くって大きくって、綺麗だった。澄み切っていたし・・・ここみたいに、薄い色でもなかった。昼に近い空じゃないかな?」
 ルークが言うのを聞いて、
「見えたのは空だけですか?ルーク。」
 ジェイドが言った。
「他には?たとえば・・・今まで幾度となく見たというアムラジェの姿はどうでしたか?」
「うーん。今回は、アムラジェはなし。」
 ルークは、考えることもせずに断言した。
「ただ・・・空を見上げている感じだったから、もしかしたら、見えないだけで傍にいたのかもだけど。」
 そこまではわからなかった、とルークは言った。
「それと・・・歌が聞こえた。」

「歌?」
 
 歌、と聞いて全員が思い浮かべたのは、譜歌だったが・・・それじゃない、と言う。
「たぶん、歌っているのは・・・ハレルヤ本人だと思う。朗々と歌うっていうよりも、なんか口ずさんでいる感じ。誰に聞かせているって訳でもなかった。」
「歌・・・。」
「うっわー。それだけじゃ、どこにいるともわからないじゃん!」
 と、アニスが不満爆発で言うと、ルークは自分のせいでもないのに、ごめん、と謝った。
 そして、つい聞かれてもいないことを、言い訳がましく言ってしまう。
「な・・なんか、バビロンがどうとか聞こえたんだけど・・・これでヒントになる訳ないよな?やっぱり・・・。」
 項垂れるルークに、おや?という感じで、救いの手を差し伸べたのは、ジェイドだった。

「バビロン?確かですか?」
「確かかって言われると、自信ねぇけど・・・。たぶん。」
 すると、ジェイドは少しだけ、考えたような様子を見せたが、
「なるほど。わかりました。」
 と答えた。
「え?わかっちゃったんですか?大佐?」
 すっごーい、大佐ってなんでもわかるんですね!とアニスがあからさますぎるほど、ワザとらしく褒めたが、ジェイドはそれには答えず(スルーというやつだ)
「おそらく、レムの塔でしょう。」
 と言った。

「レムの塔・・・?」
「なんでだ?」

「『バビロン』というのは、隠語なのです。」
 ジェイドは言った。

「隠語?どういうことですか?」
 と目を瞬かせたのは、ティアだけではなかった。
 他の人間も知らないらしく、お互いに顔を見合わせたり、目配せをしたりしている。
「レプリカたちの間では、ある意味を持って使われている言葉です。」
 とジェイドが答える。
「レプリカの間で、使われている言葉?」
「ええ・・・。かつてモースたちが行ったのは、刷り込みでしたが、今回は自発的なものです。要するに、それは『エルドラント』と同じです。」
「エルドラント・・・。」
「と、同じ・・。」
「・・・意味で使われています。」
 そして、ジェイドは続けた。
「エルドラントかもしれないという可能性もありますがね。空が近く感じられるほどだったのなら、それはかなり高い建造物の上でしょう。かつてレプリカが楽園を思い描いた時、大事だったのはホド島と、レムの塔です。」
「だから、レムの塔にいるかもしれないって?」
「・・・可能性としてある、という話ですが。」
 ジェイドは確信を持っているが、証拠はなにもない。その状態で仲間の意志までは無視できない。
 前回の騒乱で、人を慮るということを知ったジェイドは、もともと大人だったが、さらに余裕を持った大人になっていた。
 この年になってもまだ成長できるとは、と2年前の彼なら、我が事ながらに感心しただろうが、それはともかく。
「どうしますか?ルーク?」
 と、彼は、年下の赤い髪の友人を見下ろす。
 え?と目を丸くするルークに、ジェイドが問う。
「レムの塔です・・・。行きますか?私の思い違いかもしれませんが。」
「行くよ。」
 反対に、ルークの答えははっきりとしたものだった。
「俺に通信を送っているのが、ハレルヤなのか違うのか・・・そして、ハレルヤがアッシュ本人にしろ、アッシュの別のレプリカにしろ・・・捕まえない限りはどうしようもない。ジェイドが可能性を示してくれたのなら、それに乗らない手はない。」
 そうきっぱりと言い切って、あっと、皆もそれで良いか?と彼らしい、気遣いを見せた。
 もちろん、他の者に異存などある訳もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ここにきてやっとタイトルの登場ですよ・・・(汗)



 

(’10 12.12)