8.
その施設は、無機質で近寄りがたく、ベルケンドともシェリダンとも似ていなかった。
同じ研究機関でも、このふたつは人間の気配がわんさかとしている。
それに比べて、ウィザードの第3施設は、建物そのものがまるで動物の遺骸であるかのように、静寂でおよそ命の息吹の感じられない場所であった。
ある意味では計算違いなことに、キムラスカからの伝達を施して、時をおかずに乗り込んできたというのに、ウィザード側にはおよそ、慌てた様子はなかった。
むしろ、こんなに早くお越しいただいて面目ないと感謝さえされてしまう始末だ。
第3施設の長はリグロと言った。
若く見えるが、たぶんジェイドと同じくらいの年齢だ。印象は、もの静かというよりも、無駄な口を一切叩かないタイプにみえる。冗談の類も通じないだろう。そのくせどこか抜け目がなく、調査にきたのはこちらだというのに、言動を逐一、探られているような気配も感じられる。
「フォミクリーの第一人者、バルフォア博士においでいただけるとは、恐縮です。」
リグロが慇懃に頭を下げるのに、興味もないように(実際に興味ないのだろう)おざなりの挨拶を交わし、ジェイドは、研究内容を見せて貰えますかと、いきなり切り出した。
「はい。こちらです。」
リグロは顔の表情筋をひとつも動かさず、どうぞと一同を促す。
遠まわしに探るものだと思っていたのに、ジェイドの直接的な申し出に他の仲間は内心でぎょっとしていたが、さらにリグロのなんの疑いも持たないかのような態度に、肩透かしを食らわされた気分になった。
「なんか・・・余裕ってやつ?」
「・・そういう態度を取っているだけかもしれないぜ?」
リグロに案内されながら、アニスとガイは、視線で施設内に怪しいところがないかを、くまなくチェックしている。
第3施設は、ごくごく普通の・・・誰もが研究施設と言われて思い浮かべるような場所と、たいした違いはない。
天井は高く、小さくあかりとりの窓が廊下に沿って一列に並んでいる。細長くみえるその窓からは、今日のよく晴れた空が覗いていたが、天気に注目するような研究者は、いなさそうだった。
流石は研究施設だな、と感心することがあるとすれば、どういう仕組みなのか、人が歩くと、両側の壁から足元を照らす音素灯が灯るようになっていた。
どうぞ、とリグロが案内してくれた部屋に入ると、そこには多くの音機関コンピュータが並んでいた。
ここに、研究のすべてが集結するようになっています、とリグロが説明する。
「全て、ですか?」
「ええ。」
ジェイドの問いに、リグロは必要以上の言葉では返さない。
「・・・研究は個人か・・・グループ内で行なうものだと思うのですが・・・その成果を逐一、このコンピュータに集めるのですか?」
「と、いうよりも・・・この施設内の全てのコンピュータがこのマザー・コンピュータの端末にあたるのです。そこで作られたデータは端末を通して、全てここに記録されます。」
「なるほど。」
とジェイドは言い、
「しかしそれですと・・・端末ではないコンピュータで記録したデータは、ここでは見れないことになりますね?」
「この施設内には、単独のコンピュータは存在しません。」
「しかし、無断で持ち込まれたり作成したりされたのでは、わからないのでは?」
「その場合は確かに把握できません。しかし、この音機関では、施設内で使用された全てのもの・・たとえば、いつどの機材が使用され、どれだけの材料が消費されたかはもちろん、施設内で消費された音素も自動的に測定されています。このコンピュータで知りえない研究はない、と断言できます。」
「なるほど。たしかに、音素も薬剤も素材も消費せずに、実験を行なうことも、なにかを作り出すこともできない。ゆえに、秘密裏に研究を進めることは、事実上不可能である、と。」
「はい。そうなります。」
リグロは言い、お好きに見てください、とジェイドに音機関コンピュータの使い方を伝授しようとした。しかし、この手の音機関には慣れていますから、とジェイドはそれを断った。
意外なことにリグロは、断られたことに不快感を示すどころか、それで気を良くしたようだった。もしかしたら、ジェイドの存在は研究者としての、同族意識を刺激したのかもしれなかった。
ジェイドたちに、好きにして良いと言って、その場からリグロが去った後、ガイがそんな感想を口にすると、ジェイドは、
「ただ単に、自分の研究にさっさと戻れるから、喜んでいるかもしれませんよ?」
と言った。
時として、研究者というものは、自分の研究以外には、興味を示さないものだ。
ジェイドたちの訪問も、自分の研究時間を削る存在、としか思っていないのかもしれなかった。
「それにしても。」
音機関コンピュータのデータを前に、ジェイドが感心したように、つぶやく。
「・・・たいしたものだ、と言っておきましょう。流石は各国から研究者が集まっただけのことはある。ウィザードの研究がここまで、とは。」
「やっぱり、すごいのかい?」
ええ、とジェイドは答えたが、その目は研究テーマの一覧表から目を逸らさない。
パネルで操作している手は細かく動き、本であればすばやくページをめくっているようなものなのだろう。流し読み程度のようだが・・・記録されている内容もチェックしていく。
途中、リグロとは違う人間が入室してきた。
どうやら、研究者というよりも、第3施設で研究者の生活の世話をしているといった感じの女性で、ジェイドたちにお茶を、と持ってきてくれた。
ジェイドがデータをチェックしている間、他の人間は手持ち無沙汰なので、少し話し相手をしてもらう。
ここでの仕事に不満はないが、研究者たちはあまり研究室から顔を出さないので、時たま、話し相手が欲しくなるとのことで、女性は逆に嬉しそうだった。
しかし、彼女から、求めてきたような情報は得ることはできなかった。
最近起きた火事のことも、どういうことだったのか事情は一切知らない、という。ここに住み込みをしている訳ではなく、近くの村からの通いできていて、その日は仕事が休みだったから、ということだった。
女性が仕事に戻り、しばらくしてから、ジェイドはようやく手を止め、一同の座るテーブルに戻ってきた。
しっかり冷めてしまった紅茶を手に取り、一口飲んで喉を潤してから、ふぅと溜息をこぼした。
お疲れさん、とガイは言った。
「どうだった?ウィザードの研究とやらは。」
たいしたものですよ、とジェイドはさきほどと同じ感想を口にした。
「研究が進んでいるものもあれば、たいして進歩のないものもあるんですがね・・・。しかし、研究のテーマが多岐に渡っている。それが、うまい具合に絡み合って、新しいものを派生させてもいます。・・・アストンさんの言った通りですね。ただ・・・。」
「なんだい?」
「・・・改革派と保守派が協力して始めたという・・・新しい研究は・・・記録されていない。」
えー?とアニスは眉を下げた。
「さっき、リグロのやつが、ここで行なわれている研究は、すべて記録されているって言ってたじゃん?それって、やっぱり嘘ってこと?」
「どっちが嘘なのかわかりませんがね。本当に記録されていないのか、それとも・・・新しい研究がなされていた、という情報がデマなのか。」
それを聞いて、不満そうにアニスはむーと膨れたが、
「事実であるという証拠がなければ、アストンさんの話も単なる噂話の域をでることはできませんよ。」
とジェイドは駄目押しをした。
それはまったく真理なので、ガイはそうだな、と頷き、
「新しい研究の話はこの際おいておいて・・・この前の、火事にまで発展した内部抗争、あの原因はなんだか掴めそうか?」
「いえ、まったく。」
ジェイドは首を振った。
「あの火事も・・・表面上は実験の果ての爆発事故、ということで処理されていますし、ここに並んでいるのは、研究の記録だけですからね。個人もしくは団体の思惑はデータの上には、反映されてはいません。怪しいところもないですし、もしかしたら、荒療治が必要になるかもしれませんね。」
「荒療治?」
「・・・・ああ・・・。」
「・・・・・。」
全員の視線を、ティアは黙殺した。
譜歌で全員を眠らせて、その間に探りを入れるなんてもっての他だし、やるとしても(やる気はあるんだ・・とアニスがつぶやいた)それは、ここでの調査が本当に行き詰った時だけだ。まだその時には早い。
もちろん、それはジェイドも承知の上だったので、この場合の荒療治は、ティアのことではありませんよ、と言った。
「たとえば、研究にいちゃもんをつけるとか、ですかね。こちらは、わざわざキムラスカ王女まで出向いているのです。フォミクリーの使用を許可するのに、前回の内部抗争を槍玉にあげて、さらに研究内容以外の部分にも踏み込ませて貰う。そういったことですよ。」
「それってなんだか、肩がぶつかったから金寄越せっていうのと、似てません?」
「おや、アニスには経験が?」
「そんな訳ないですよー。アニスちゃんは純粋で、か弱い乙女ですよ?」
「いえ、私は要求された側のことを言ったのですがね。」
そうですか、自分がカツアゲする側に見える自覚があるんですね、とジェイドが大きくつぶやいて、アニスはぶーっと膨れた。
「それで、現実的なお話・・・こちらの研究に、ユリアシティの建物をフォミクリーするだけの意義はありますの?」
ナタリアが言った。
方便として使ったとはいえ、フォミクリー使用に対する国の許可を引き合いに出した以上、きちんと調査は行なわないとならない。そして必要とあらば、本当にナタリアは国に申請をするつもりでもいる。
ただ単に、興味本位だけで第3施設を訪ねた訳ではなく、きちんと仕事も兼ねているのだ。
それに対して、ジェイドは、なんともいえませんねぇ・・・と答えた。
「やってみる価値はあるかもしれませんね、とお答えしておきましょう。ただ、めざましい進化が見込めるならともかく、今の研究内容を見せてもらった限りでは、そこまでの必然性は感じられません。別に創世記時代の建造物を調査しなくとも、他にもできる実験はある。」
「そうですか。」
ナタリアは少し考えて、では、そのあたりから突付いてみるというのもひとつの手ですわね、となにかを画策しているような事を言った。
相変わらず、ぶっそうなお姫様だ、とガイは苦笑する。
そして、そのことをつっこもうとした時・・・目の端になにかが映って、ん、と瞠目する。
扉が開いていた。
誰かが立ち聞きでもしていたのだろうか、とガイが表情を引き締め、そろそろと開くドアに注目していると、その視線を追って全員が誰かが入ってこようとしていることに気がついた。
扉が半分ほど開いた時、ひょっこりと顔を覗かせた相手に、一同は目を丸くする。
それは、女の子だった。
「え?こども?」
自分よりも遥かに幼いこどもの出現に、アニスは思わず声をあげた。
別段、子供が珍しい訳ではないが、研究施設という名目の場所に、子供がいる、ということは驚愕に値する。
いや、よくよく考えればここは生活区域も兼ね備えた施設だし、研究者の誰かの子供なのかもしれなかったが、この研究所が子供がいるに相応しい場所ではないことだけは、間違いはない。
「ここに所属している研究者の子かな?」
部屋に入ってきて一同を珍しそうに見上げる少女に、ガイが言う。
その視線を受けても、少女は怯えた様子も見せなかったが、話もしなかった。
知らない人間に接する子供などそんなものだろう、とガイは気にしなかったが、アニスは少しだけ、挨拶くらいすれば良いのにと不満げだった。
そのアニスに、少女の目が向けられる。
正確には、アニスの背中にだ。
「ん?」
アニスはその視線を受けて、常日頃から自分が背負っているものを肩越しに見た。
「なになに〜?このぬいぐるみが気になるの?」
少女は答えも頷きもしなかったが、視線はトクナガに注がれたままだ。
アニスは苦笑し、貸してあげたいのはやまやまだけど、と眉を下げた。
「このぬいぐるみ・・・実は私の武器なんだよね。違う道具だったら貸してあげられたんだけど・・・。」
兵士が自分の武器を人に貸すなど、ありえない。
それは、身ぐるみ剥がれるのと同じことで、手元にないというだけで、漠然とした不安さえ感じるものだ。
アニスが、一生懸命に説明したおかげか、彼女は駄々をこねたり、泣き出したりはしなかった。じっとアニスをみつめ、こくんと頷いた。聞き分けの良い子だ。
アニスは、にこりと笑い、頭を撫でようとして・・・その手を止めた。
「この子って・・・。」
「どうした、アニス?」
つぶやきを耳に入れ、ガイが少しだけ近づいてくる。
「この女の子、まさか知り合いか?」
ちがうよ、とアニスは言い、ねぇ、とティアを呼ぶ。
アニスの態度を不思議に思っていたのはティアも同じなので、なに?とすぐにティアはアニスに近づいた。
「この子さ・・・ちょっとよーく見て?」
「え?なに?」
ティアは不思議そうに首を傾げながら、アニスの前にいる少女の顔を、覗き込む為にかがみこんだ。
「・・・!この子って・・・。」
「ね?ティアもそう思う?」
「なにかあるのか?」
「なんですの?」
ふたりにしかわからないことで納得しあうアニスとティアに、ガイとナタリアがますます怪訝そうになって、説明を求める。
うん、それがさ、とアニスは少し戸惑ったように、目尻のあたりを掻くような仕草をしながら言った。
「・・・・この子・・。アムラジェによく似てる・・・・気がする。」
アムラジェ?とその名前を復唱して、ガイは、はっ!と息を飲んだ。
「あの、アッシュと斬り合いになった相手と逃げたっていう、時期導師の付き人か!?」
まあ、とナタリアは目を丸くし、ジェイドは、テーブルの上に広げていた資料から目を放して近づいてきた。
「でも、他人の空似かもしれないし・・・それに、」
「アニス。」
まるで言い訳のように、言葉を続けようとしたアニスを、ジェイドが止めた。
「今の私たちが、思い込みで暴走する可能性があることは、自覚しています。」
貴女が心配をしなくても、と続ける。
アニスは奇跡を信じない。
しかし、この2年間、本当はあれば良いと何度思ったかしれない。
偶然などというものは、そんなにあるものではないのに、それでも先を急ぐ余り、目の前にあるものを曲げて捕らえて、無理矢理自分たちの求める真実にまつりあげてしまわないか。この子がアムラジェに似ているからと言って、アッシュに繋がる手がかりだ、と決めてかかってしまわないか。アニスはそれを心配している。
「けれど、少しのことでも、なにかの手がかりに繋がる可能性があるのなら、あえてそれに乗ってみるという手もありだと、私は思いますよ。」
「・・・・・はい。」
そうですね、とアニスは言った。
自分たちの危険を承知しているうえで、あえて調べてみる価値はある。
ジェイドにそう言われ、アニスはほっとしたように肩の力を抜いて、改めて、一同に向き直った。
「前にも、アムラジェって、ひとめ見たら忘れがたい感じの人だって言ったと思うんだ。」
一同はふたたびテーブルに戻って、会話を再開した。
女の子は、椅子に座ったアニスの膝の上に抱っこされている。アニスもまだ少女のような体格だが、それよりも小さな彼女は、そうしているとまるでアニスのお気に入りの人形のようだった。
もくもくとクッキーを頬ばりながら、うんともすんとも言葉を発しない女の子の様子を気にかけながら、アニスは続けた。
「黒い髪に黒い瞳。肌は紙みたいに真っ白で。そんで、小柄。」
「確かに、そんなことを聞いたが・・・。」
そう答えながら、ガイはアニスの上に座る少女を見る。
黒い髪に黒い瞳。雪のように真っ白な肌。たしかに特徴は、同じだ。
「顔立ちも似ているわ。」
ティアが言った。
「彼女は・・・造られた人形のように整った顔をしていた。今のその子のようにね。そして、なによりも雰囲気が・・・アムラジェの纏っていた雰囲気がとてもよく似ている気がするの。思い込みだと言われたら否定はできないけれど、逆に親族だと言われたらアムラジェを知っている誰もが疑わない、そんな風に似ている。そう思うの。」
「ふむ。」
ジェイドはつぶやいて、改めて少女を見た。
子供には好かれない性質の死霊使いだったが、ジェイドに見られても、別段少女には怯えた様子も見えない。
そこへ、ノックの音がした。
はーい、とアニスが気軽な様子で答えると、軽い扉の開く音とともに、リグロが顔を覗かせる。その顔には、さきほどと打って変わって、慌てた様子が見てとれた。
「失礼します・・・ここに・・・。」
入って来ると同時に話しはじめたリグロは、ああ!と顔に安堵を浮かべ、
「やっぱり、ここにいたのですね!どこにもいないので、もしやと思ったのですが・・・。」
とアニスを見る。
正確には、アニスの膝の上を。
少女はリグロが現れると、ぱっとアニスの膝のうえから飛び降りた。
そのまま、とてとてとリグロに走り寄っていく。怒られる心配などしていない様子で、リグロの足に抱きつき、懐いているという感じだ。
「リグロさん、その子は?」
リグロが少女を抱き上げているのを見て、不思議そうな顔で王女が訊ねた。天然な彼女は、人に警戒心をあたえずに物を訊ねられる天才だ。
ああ、というようにリグロは笑った。(ちなみに初めて見るリグロの笑顔だ)
「ご迷惑をおかけしました・・・この子はお客様が好きで。実は、私の姪なんです。」
「姪。」
「まぁ。」
だからそんなに懐いていますのね、とナタリアに言われ、リグロは、ええ、と笑った。
「私の弟と、ここに所属していた研究者の娘でして。」
「所属していた、研究者?」
その表現をジェイドは見逃さなかった。
「と、いうことは・・・彼女の母親は今は、ここにはいないということですか?」
「・・・ええ。」
リグロは急に、暗い表情を浮かべた。
「つい先日の、爆発事故。あれに巻き込まれまして・・・。」
「・・え!」
「・・・!」
「・・・ま、まぁ!」
思わず過剰な反応をしてしまった一同だが、実はそれが内部抗争だと聞いて調べにきました、とは言えないので、慌てて誤魔化す。
「それは・・・お気の毒でしたわね。」
立場上、社交辞令とこういう時のポーカーフェイスが得意な姫がお悔やみをいうと、リグロは残念そうな顔で、実験中の事故でしたから仕方ありませんと、言った。
「しかし・・・母親を失ったショックで、この子は言葉がしゃべれなくなってしまいまして・・・。」
「え!?そうだったんですか?」
さきほどから、一言も話さないショッキングな理由を聞かされ、思わずアニスが叫び声をあげる。
「そんなの可哀想・・・!治らないんですか!?」
「医者に診せたところ、心の問題だから、と正確なことは言えないと、言われました。・・時間が解決するのを待つしかない、と。」
まぁ、そういう訳で私も少し心配性なんです、とリグロが苦笑するのを見て、仏頂面で、研究以外になにも興味もなさそうだった男の、思いのほか暖かい一面に触れた一同は、リグロに対して好印象を抱いた。(ジェイドを覗く)
それでは、お邪魔をしてすみませんでした、とリグロが少女を腕に抱き、その場を去った。去り際、少女が笑いもせず、それでも手を振った様は痛々しく、一同の心を重くした。
しん、としてしまった仲間にひとつ溜息をつき、ところで、とジェイドが切り出す。
「これを、偶然の一致で片付けるのは、少々不自然だと思いませんか?」
「・・・あの子のことですか?」
ティアに聞き返され、ジェイドは、ええ、と答えた。
「この研究施設で、研究者がひとり忽然と姿を消したと言われ、我々はそれを確かめにきた。」
今更な確認なので、一同は無言で頷く。
「それは、本当のところあったのかなかったのか・・・それはわかりません。しかし、ダアトでも同じような事件があり、その時に消えた女性とよく似ている少女がここにいて、その子はダアトの事件の少し前に、ここで起きた火事で母親を亡くしている・・・。」
「確かに。」
ガイは言った。
「ここまできたら、繋がっていると考えたくもなるよな。」
思い込みだとしても、それに至るだけの十分な理由を見つけた気がする。
そうガイが続けると、ジェイドも同意を示した。
「・・・どうやら、我々はここで起きている一連の事件に"無事に巻き込まれた"と考えても良さそうです。」
アムラジェに繋がる一連の事件。
それは、つまりはアッシュにも繋がる。
砂山の中から一粒の砂を見つける作業にも似た途方もなさから、活路を見出せた、と彼らはその時思った。
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