ルークが、夕食に出たチキンのトマト煮をフォークに刺し、あーん、と大口を開けた時に、それは起こった。

「・・・うわっ!マジ、ありえねぇ・・。」
 こんなタイミングで嫌がらせのように通信してくるなんて、アッシュにはこちらの状況が筒抜けなのではないのだろうかと疑いたくもなる。
 ルークは舌打ちしたが、こればかりは一方的で、嫌でも繋がってしまうのだ。
 もっとも、本気で拒否したところで、アッシュが遠慮をしてくれるとは到底思えない。
 ルークは、美味しいチキンをフォークに刺したままで皿に置き、
「・・・なんだよ?」
 と不機嫌丸出しで、通信に答えた。
 同じテーブルについていた一同は、いつものことだとあまり気にも止めない。
 ナタリアだけが、アッシュですの?と質問をしてきたが、それも今更だ。ルークが脳内で会話できるのは、アッシュ以外にいようもないのだから。
 アッシュの要件は、いつものごとく、簡素だった。
『おまえ、今どこにいる?』
「ケセドニアだけど?それが何?」
『・・・明日もそこにいるのか?』
「明日?うん、まぁ。明日は掘り返した交易品を納品する予定だから、いるけど?」
『交易品?』
「あ、いや・・・なんでもねぇ!」
 ルークたちが、ケセドニアのディンと交易品をやりとりしていることは、アッシュは知らない。
 別段、隠している訳ではなかったが、アッシュのことだ。知ったら知ったで、お前たちは暇なのか!と青筋をたてて怒号をあげるに違いない。融通の利かない性格の人間は扱いが難しいのだ。
 気がつくと、アッシュが黙っていた。
 もしや今思ってたこと聞こえてしまいましたかー?とルークが焦っていると、アッシュは、そうか、と相槌としか思えない短い返事をして・・・。
「って、おい!?」
 すっとんきょうな声をあげるルークである。
「ん?どうかしたのか?」
 と隣に座っているガイが言った。
「どうもこうも。」
 ルークは答える。面倒臭そうに。
「いきなり、切りやがった・・・。」
 食事を中断させられたというのに、要領を得ないその仕打ちに、ルークはなんだったんだよ、もうー!と吠えた。

 

 

 

「アッシュさん、ただいま戻りまー・・・。」

 宿にチェックインした後、お菓子の材料を仕入れに、ひとり買い物に出ていたギンジが帰ってくると、室内は冷たく冷え、白いカーテンがゆらゆらと揺れていた。
 花も飾られていないそっけない窓辺には、教団の模様の入ったマントを脱いだ姿のアッシュが、空を見上げていた。
 今日は雲ひとつない夜空で、瞬く星が降ってきそうなほどきらめいている。
 だがそれよりも、もう少しで完全な姿になろうとしている月のほうが圧倒的で、強いその光に魅入られているかのように、アッシュは上を向いたままこちらに返事もしなかった。
 月の光に照らされると、アッシュの真紅の髪は内側から光ってるかのように、銅色に見える。
 その姿は幻想的で、アッシュの丹精な白い面とあいまって、まるで一枚の挿絵のように完璧な風景になっていた。
「・・・ギンジ。」
 しばし、言葉を切って見惚れるギンジに、ふいに振り向き、アッシュが言った。
 
「明日は・・・ケセドニアまで飛んでくれ。」

 

 

 

 

月の恋人 2

 

 

 

 

 


 アッシュの意味のわからない通信には、少し腹がたったが食堂が閉まるまで皆でしゃべっていたら気も紛れた。
 昔はただ、目的の為に集まっただけの面子だったが、すでにちゃんと友人関係を築けて久しい。
 それゆえに、お茶を飲みつつの話題は尽きない。
 ヴァンの動向や自分たちのこれからの行動はもちろんだが、各人の趣味にかかわることも多く話題に上って、ガイの音機関好きに閉口したり(話し出したらキリがないからだ)、ジェイドに質問してものらりくらりと交わされたりと、一同の間には笑い声も絶えなくなってきている。
 ずっとひとりで、友人といえばガイだけ・・という生活を送ってきたから、改めて思わなくても、こういう時間が貴重であることがわからないルークではない。
 だから、時々部屋にひとりで戻ったりすると、急にしんみりと胸に沁みる時がある。
 今が貴重であるということは、いずれなくなってしまうものでもあるということなのだ。

 いずれ、必ず終わりがくる。
 結果はどうあれ、ヴァンを追うことが終われば、彼らは彼らの生活の中に戻っていく。
 ティアはユリアシティ、アニスはダアト、ジェイドはマルクトに戻って軍人としても務めを全うし、ガイも今度はマルクトへ戻ってしまう・・・。
 そして、ルークは・・・。

 ルークも待ってくれている人はいる。
 母の言葉に嘘がないことは、たとえ本物ではないとしても、親子だったのだ。わからないわけがない。
 しかし、望まれるように屋敷に帰ることが、本当に良いのだろうか?
 ルークが帰って来いと言われている家に、本来戻るべきなのは、アッシュなのだ。
 あの屋敷に、被験者のアッシュとレプリカのルークがふたり。
 威厳がありながらも穏やかであるあの家に、さざ波が立たないとは言い切れない。
 アッシュが帰ってきたなら、ルークは自分に与えられた責務を全うできるか自信がない。
 もちろん、その為の努力は惜しまないが、何もかも秀でているアッシュに比べられたら、立つ瀬がない。
 アッシュは、そういうルークの態度に殊更腹が立つらしいが、アッシュに自分ができることが他人にできないという事に理解がない以上、ふたりの間に和解が成立する訳もない。
 ルークは、唯一の血縁者といえるべき被験者のアッシュとでさえ、親密な関係を築けていないのだ。

 

 

 

 部屋に戻った後、皺にならないようにと服をハンガーにかけていると、ジェイドに先に風呂に入るようにと勧められた。
 別に遠慮するほどのことでもないので、ありがたく先に入らせてもらう。
 ケセドニアは好きな場所だが、砂漠と海に挟まれている為、暑い上に、粘つく風が吹いている。
 しかも今日は、かんかん照りだった。
 髪も服も埃っぽくなるのに、それを上から汗がコーティングしているようにべとついて、気持ちが悪い。

 たっぷりの湯を張ったバスタブは少し小さく、仕切りのカーテンは安っぽい素材で、あちらが透けそうで落ち着かなかったが、女子じゃあるまいし、別段気にするほどのこともなかった。
 ルークは、ゆっくりと湯に浸かり、体のあちこちをもみほぐすように伸びをすると、ゆらゆらと揺れる水面と立ち上る湯気に心和ませた。
 元々、風呂の好きなルークだが、ルーク本人はガイたちにからかわれるほど綺麗好きという訳ではなく、単純に水が好きなのだと思う。
 水は良いものだ。
 喉を潤すし、癒し効果もある。
 
 バスタブに頭を乗せると襟足が水に浸かるほど頭を上向かせ、ルークはため息をついた。
 その姿勢で眺める天井は網目のような模様で、意味もなくその網を数え、ルークは少しだけぼんやりとしていた。

 こうしていると・・・先ほどの通信のことが気になりだす。
 今いる場所を聞いて来たということは、アッシュは自分に用があるのだろうか?
 もとより、何もないのにアッシュがルークに連絡するとも思えない。
 ならば、近々会いにくる?
 アッシュが。
 ルークに。
 なんだろう、胸がさざめく。
 嫌な予感とかではなく、落ち着かない気分になる。
 何かを期待してもいるくせに、同時に絶望的にもなる。そんな気分だ。


 少し前まではこんなことはなかった。
 アッシュの存在は、ルークにとって圧倒的で絶対的であるがゆえに疎ましく、喜んで会いたいと思う相手ではなかった…筈だ。
 以前、ふたりの険悪な仲を気にしたナタリアに、アッシュを嫌いなのかと聞かれたが、そうではない。
 アッシュは、ルークを嫌いだろうが、ルークはアッシュを嫌いだと思ったことはなかったし、自分という存在を語る上で、大事な相手だという自覚もある。
 だが…それだけだ。
 アッシュとの間に良好な関係が築けない以上、お互いを利用している、それが1番しっくりくる間柄だと思う。
 だから、今まではアッシュと会うことに何も思うことはなかったのに…。
「なんでこんなに気にしてるんだろう、俺…。」
 両手を合わせて水鉄砲を作り、水滴を壁まで飛ばしたが、ルークのもやもやは晴れなかった。

 

「出たぞー。」
 ガイが、自分の気分の浮き沈みに対して鋭いことを知っていたからなにげなさを装い、部屋に呼びかけてみると、ジェイドがいない。
 相変わらず長風呂だなーと髪に雫をしたたらせているルークをからかいながら、ガイが、
「旦那なら出かけたぜ。」
 と言う。
 なんでも、ピオニー陛下からの文が届いているらしく、それをマルクト領事館へ取りに行ったとのことだった。
「どうせロクでもないことでしょうに、と本人はかなり不満げだったが・・・まぁ、ほっとく訳にもいかないよな。」
「だよな。」
 納得しながらルークは、髪をふきふき、火照った体を冷まそうと、窓辺へ近づく。

 
 ガイが、風呂に入った音を聞きながら、手を伸ばすとそっと押しただけで窓が開き、とたんにケセドニア独特の、夜でも熱気のある喧騒が、風と共に部屋に入り込んでくる。

 ケセドニアの夜は明るく、まるで眠ることを知らずに、ここまで辿り着いた旅人や海の男たちの喜びを満たす。
 色々な場所に行ったし、それぞれに特徴があるが、ルークはこの、一歩間違えば危険で喧しいケセドニアの空気が嫌いではなかった。
 ルークたちの宿は、通りに面していて、少し視線を下げれば歩いている人の姿が見える。手には遅い買い物に出たのか、果物の入った紙袋を抱えた人や、これから飲みにでも行こうとしているのか、軽装で鼻歌を歌っている人がいて、ルークもつられるように、前の町で教わった流行り歌を口ずさむ。
 窓辺に椅子を持ってきて座り、時折雫のたれる髪を拭きながら、視線を上げれば、他よりも闇の薄い空が見えた。
「それにしても、すげー月…。」
 美しく神々しいまでの満月に、ルークは思わず、ひとりごとで感想を漏らした。

 このまま吸い込まれそうな、自分を見失いそうな。
 夜を支配する女王そのものの威厳は、畏怖さえ覚える。
 こういうのを、魅入られるというのだろうか?
 月から目を離せなくなったルークは、ふっと意識が遠のくような、変な感覚を覚えた。

 

 

 

 

「んー・・・?」
 ベッドで大きく寝返りを打ってから、ルークは、ぱっちりと目を開けた。
 よく眠った後のように、頭はすっきりしていて・・もしやまた寝坊したか!と一瞬焦ったが、部屋の中には、カーテン越しでもそうとわかる、まだ若い日差しが差し込んでいる。
 まだ、早朝のようだ。
 隣のベッドをみれば、すでにガイは起き出しているらしくもぬけの殻だったが、隣室から水音がするから、ジェイドがシャワーでも浴びているのだろう。
 大概ジェイドは、夜に出かけた後の翌朝にもシャワーを浴びる習慣がある。
 軍人で修羅場慣れをしているくせに(本人曰く、だからこそらしいが)ジェイドは、清潔感があり、お洒落で身綺麗にしている。
 それにしても、体が重いなぁ、とルークはベッドの上にのそりと起き上がりながら思った。
 気分は良いのにこんなにだるいなんて、もしや寝過ぎだろうか?こんなに朝早いのに?と半分寝ぼけながらも思い、着替えようとベッドを降りようとした時、

「―――っ!」
 
 驚愕のあまり、悲鳴をあげなかったのが不思議なくらいだった。

「な・・・なんだ、よっ!これ・・・!?」
 慌ててシーツをめくってみれば、そこにも赤い物がついていた。
 ルークは自分の手を見る。
 どこにも切り傷はないし、痛みもない。
 では、これは?

 ルークは、自分の胸元を掴む。
 そこには、身に覚えのない血が、べっとりとついていた。

 は、は、と荒い呼吸が鼓膜の中から聞こえ、目の前がちかちかして、頭がくらくらした。
 崩れそうな肘に力を入れながら、自分がパニックを起こしている事に気がついて、ルークは落ち着こうと、息を吸い、吐き、それからまた吸った。
 昨日、なにがあったか。
 思い出そうとしたが、風呂に入った後の行動の記憶がない。

 そもそも、いつベッドに入った?
 いつ、ハンガーに掛けた服を着た?
 ルークの頭の一部分は真っ白で、そこからはなにも出てこない。
 バクに悪夢を食べられた後のような穴ができている。

 


 風呂場からカタンと音がして、はっと我に返ったルークは、ジェイドが出てくる前に、血のついた服を脱いで袋の中に隠すと、代わりの違う服を引っ張り出した。
 一昨日、洗濯したばかりの赤い外套を一旦手に取ってから…悩んだ末、買ったばかりの違う服を選んだ。
 すばやく着込むと、同時に風呂場の扉が開く。

「おや?ルーク。」
 ジェイドが珍しく、驚いたようにルークを見た。
 もっとも、ジェイドのそんな変化を見分けることができるのは、仲間かピオニー陛下くらいなものだが。
「どうしたんです?貴方がこんなに早く起きているなど。」
「ああ・・・えっと・・・なんか目が覚めて?」
「いつもこうだと我々は、助かるんですがねぇ。」
 嫌味を交えて苦笑しながら、ジェイドは目を細め、意味ありげにルークを見る。
「な・・・なんだよ?」
 その視線に冷や汗を隠しながらルークが、意味を問うと、いえー?とジェイドは答えた。
「貴方が黒い服を着ているなんて珍しいと思っただけですよ。」
「・・・・・。」
「赤と黒は、アッシュのカラーですからね。」
 だからまぁ、貴方にも似合うのは道理なんですが。
 そんなことを言い、ジェイドはルークから、窓の外へと目線を移す。
「アッシュといえば・・・昨日のあの後、連絡はありませんか?」
「あ、いや・・・別に。」
「そうですか。」
「・・・アッシュに、なにか用か?」
「あると言えばあり、ないと言えばない、ですかね。」
 なんだそりゃ、とルークは顔を顰めた。
 その表情をどう取ったのかわからないが、ジェイドはふっと人を小馬鹿にしたような笑みをこぼすと、やっぱりおこちゃまですねぇ、と失礼なことをのたまった。
「我々は、彼がいなければ成り立たないような行動をしていない、ということですよ。わざわざ行動を共にしなければならない理由はない。しかし、アッシュがなにか情報を握っているのであれば、欲しい。あればあったで便利なツールですからね、彼は。」
「アッシュは道具かよ・・・。」
 呆れたようにルークが言えば、それはお互い様でしょうー?とまたもや意味ありげにルークを見る。
「アッシュにとっては、まさに貴方という存在がそうだと思いますよ?自分の都合の良い時にばかり連絡してきて、こちらが連絡を取りたい時は見向きもしない。勝手といえば、あれほど勝手な人もいないでしょうに。」
 貴方も少しはそう思うでしょう?とジェイドに問われ、ルークは即答できなかった。
「・・・俺は・・・。」
 確かにそう思う。
 アッシュは勝手だし、いつもルークの思い通りにはならない。ルークの話を聞かない。話どころか頼みも聞かない。
 よく考えれば理不尽きまわりないが・・・。
 それは時々、こうして今、ジェイドがしているように、誰かに指摘されなければ、ルークにとっては気にならない問題になってきていた。
 アッシュは理不尽だが・・・その理不尽をどこかで許容している自分もたしかにいる。
 それがアッシュだと認めてしまっている自分が。

 黙ってしまったルークに、どう思ったのかジェイドはため息をついた。
 そして、そういうのは、けなげとは違うと思いますよ、と言った。

 

 

 

 今は道具袋の中に隠してある服についた血の量を考えると、誰の物にせよ相当の出血量の筈だ。
 早朝稽古から戻ったガイは、ルークがすでに起きていることに大げさなほど驚いたが、別段変わった様子はなかった。
 朝食に全員集まった時も同じだ。普段通りの、傍から見れば彼らが世界の危機を追っているとは誰も思わないような、日常的な会話を交わし、少し味の濃い朝食を取ながら、それとなくルークは伺ってみたが、仲間に怪我を負っている者はない。
 ルークに対する態度も、前日とまるっきり同じだから・・・あの血の主は仲間ではないということだ。

 だったら、誰の?
 いや・・・そもそも血がつくようななにがあったのだ?

 


 交易品をディンに納品する前に、ルークはひとり、宿を抜け出していた。
 誰にも告げずに出てきたが、行くあてはひとつしかない。
 世界を旅してまわってから、ルークにも情報を得る為の知恵がついた。それは、その地に根を張っている者に頼るほうが早い。
 
 内部に混乱の嵐を抱えて決意してきたものの、数段の階段を前に、ルークはそれでも逡巡した。
 知らなければという焦りと、知るのが怖いというためらい。
 ほんの少し手を伸ばせば届く距離の扉が、ひどく大きく、重く感じられた。
 それでも。

 ・・・調べなきゃ・・・。


 事は、ルーク本人のことだ。これは人任せになどできない問題なのだ。
 自分になにが起きたのか。もしくは、起ころうとしているのか。
 

 扉の前で、緊張のあまり、ごくりと塊のように息を飲み込んだルークがドアを開けると、不在だったらどうしよう?という不安は解消された。
「おや?ルークの坊やじゃないか。」
 と、ねっとりとした艶っぽい声に出迎えられたからだ。
「ノワール・・・。」
「めずらしいこともあるもんだねぇ・・・。あの金髪の彼はいないのかい?」
 ノワールはガイがお気に入りだから、本来なら一緒のほうが喜ばれたかもしれない。
 そうは思うが、しかしここはひとりで来なければ意味がなかったのだから仕方ない。
「悪いけど、今日は俺ひとり。ノワールこそ、ひとりか?」
 きょろ、と店の中を見回せば、まだ朝が早い為なのかパブには客がいなかった。客どころか、ウルシーもヨークもいない。完全にノワールひとりだ。
「ちょいとヤボ用・・・っていうか。もしかして、あんたの用事も同じかい?」
「同じ?」
 え?なんのことだ?とルークが読めない会話に目を丸くすると、その様子じゃ違うみたいだね、とノワールは笑った。
「旦那と坊やが同時にこのケセドニアに現れるなんて、同じ要件なのかって思ったのさ。」
「・・・・・!」
 ノワールの言う"旦那"が誰のことであるのか、ルークはすでにわかっている。

『やっぱり・・・アッシュもケセドニアに来たのか・・・。』

 ルークの胸のなかで、ちりん、となにかが合図のように鳴ったが、ルークはそれを胸騒ぎととった。
 
 一体、なんの為にアッシュはケセドニアに現れたのだろう。
 昨日の通信での口ぶりでは、ケセドニアそのものに用事があるようなそぶりは見せなかった。
 だとしたら・・・。

『俺がここにいる、から・・・?』

 まさか、という疑心の言葉と、どこかでそうであって欲しいと思う願望。
 またそれを否定する感情。
 それらが一気に胸を圧迫して、ルークの呼吸は乱れる。


 頭を振り、息を殺してそれらをやり過ごすと・・・ルークは頭を切り替えようとするように、ノワールに聞いた。
「それで?アッシュは、あんたらになんの用なんだよ?」
 それが要領を得ないんだけどねぇ、とノワールは答えた。
「昨夜、このケセドニアで何か変わったことがなかったか、調べてくれってさ。」
「・・・え?」
 それはまさに、ルークが漆黒の翼を訪ねてきたのと、同じ要件だった。


 
 


 

 

 

 

3

 

 

 

 


書き直してルーク中心の話にしましたが・・・アッシュの出番が少ないのは変わらず・・・。

('11 5.04)