14.ピンク

 








 昔から、男というものが嫌いだった。
気のあわない以前に、その行動のほとんどが、無意味に感じられたし、乱暴で、いつでもお山の大将でいないと気がすまない。だから小さい頃のハロルドには、「男の子」というのは、ほとんどが無駄なもので構成されている野蛮な生き物だった。

 








「男の子」

 

 








 やけに喉が乾く。
ハロルドはそう思い、意思に反して閉じようとする重いまぶたをこじ開けた。
うっすらとシーツが、浮かんで見える。
だが、空間的には、どこを向いているのか、一瞬、分からなかった。
しばらく考え、ああ、OK、と思う。
ちゃんと、目の前に見えているのは、宿屋のいつ掃除したともしれない、薄汚れた天井だった。
それが、窓から入り込む光を吸い込むようにして、ぼんやり白くと見せている。
きちんと、ベッドの中にいるようだ。

 もぞもぞと、すぐには力が入らない腕を、シーツから出すと、自由にならない指で、時計を掴み、時間を確認する。
まだ、朝食の時間には、間があった。
もうひと寝入りしよう。
だがその前に、このカラカラに乾いた喉を潤そうか。
そう思い、ベッドの横のサイドテーブルの上にある水差しに手を伸ばしかけて・・・・・。
今、自分の手は、どこにあるのだろう?と疑問に思った。
ぐ、ちょき、ぱーをすると、目の前にある指が動く。
もう一方の手は、水差しを取ろうとしたそのままの体制で、サイドテーブルの上におかれている。
・・・ならば。
今、目の前で、シーツの中から覗いているのは、一体、誰の白く長い指だろうか。

 
 半分まだ、寝ている頭と、かすんでみえる目を凝らし、ハロルドはその手を、まじまじとみる。
たおやかで、綺麗な指だ。芸術的でさえある。
そして、なんとなく、よく知っている指だった。
はて・・・と思いながらしばらくそのまま。
その時、その凝視していた手が、目の前で、動いた。
もぞもぞと、シーツを手繰り寄せている。
その動きの先を目で追い・・・・。
「・・・・あっちゃあ・・・。」
ハロルドは、もう寝るのは無理だ、と反射的に思った。

 その呻き声は、絶対に、色っぽいとは言えなかった。
それが、なぜか悔しい。
自分で、自分の声に採点をする趣味はないが(そもそも、鼻にかかった自分の声が好きではない)この場では、もう少し・・・女の子らしい、反応を示すべきだったのではないか?と後になって思った。
だが、それを聞いている者は別にいなかったのだから、自分ひとりの、気が済むかどうかの問題ともいえた。


 とりあえず。
一層、派手にはねまくっている寝癖のついた頭をがしがしと掻き、そっとベッドから抜け出る。
シーツの中から、そっと足を出して、床につければ、足の裏にひんやりとした感触が伝わってくる。
朝の感覚だな、とハロルドは思う。
まだ眠っている細胞の中で、一番早く対応するどれかが、少しの変化に反応しているようだ。

 とりあえず、立ち上がって、水差しからコップへと、水を注ぐ。
生ぬるい水は、口に含むと、甘く感じられた。

 喉を鳴らして水を飲むと、さて、とハロルドは、目の前の状況に立ち返る。
ベッドから抜け出した自分の格好は、昨日、着ていたキャミソールと、ホットパンツのままだった。
ホットパンツのすそを捲ると、くっきりと固い布の痕が、足の付け根についている。
そこを、ぽりぽりと掻きながら、部屋の真ん中にあるテーブルに目をやる。
その上には、2本のボトルと、2個のグラスが、ほっぽりだされるように、乗っていた。
ボトルの1本は、寝転がっている。
ああ、そうだったな。とそれを見て思った。

 昨日は、少し、ハメを外しすぎたか。

 たまにはつきあいなさいよ。と言って、無理やりに部屋に連れ込んだのが、9時頃。
なんやかやと理由をつけては帰りたがっていたのも、12時を回る頃には、諦めたのかめんどくさくなったのか、何も言わなくなった。
それを良い事に、ずいぶんと長い間の時間を過ごした・・・という事までは記憶にある。
つまり、その後の事は記憶にない、という事だ。

 ハロルドは溜息をひとつ、つく。
そして、ベッドの中でシーツに包まる寝顔を盗み見る。


 絶世の美女だ。
アトワイトとどちらが綺麗だろうか。
でも、その種の競い合いは、個人の趣味の問題だから、判定は難しい。
私の好みはどっちだろう?
アトワイトの優しい微笑みと、こいつのキツイ表情。
どちらも捨てがたい。
・・・・・それにしても。

 ハロルドは、もう一度、水差しからコップに水を入れ、飲んだ。

 こいつの素顔、見るのなんて初めてだわ。


 いつもは、仮面の下に隠れてる。
とはいえ、あまり隠れる部分がない構造の仮面だから、そこから見えていた部分だけでも、顔の作りはわかっていたので本人だと確認はできるが、やはり、あるとないとでは、印象が違う。
美形だと思ってはいたが・・・・・これほどの美貌とは。

 ハロルドはじ〜〜〜〜〜〜っと、その顔を見る。

 まつげは長く、頬に影を落としている。
色も白い。顔だけ見せられて、女だといわれたら、疑う人間はいないだろう。
これが男だとは、誰も思わない・・・・。

 むかっ。

 思わず、蹴飛ばしてやろうか、と反射的にハロルドは考えた。

 男のクセに、こんなに美人なんて、なんかずるい。
女の自分が、負けているとは思いたくないが・・・でも、たぶん、負けている。
もしも、こいつが女だったら、それこそ、傾国だ。
得られる為なら、命すらも惜しまないという男が、大勢出てくるだろう。

 ぷん、と勝手に腹をたて、ハロルドは部屋の隅に置いてある自分の荷物の方へと向かう。
着替えようと思って、服を引っ張り出し・・・はた、と我に返った。
着替えている間に、あいつが起きたりしたら、きまずい。
一応、あいつは男で、私は女、なんだし。
などと考えていたら、着替えることもできなくなり、ハロルドは手持ち無沙汰に、椅子に座った。
テーブルの上にある、ボトルのうちの1本には、まだ、底の方に酒が残っていた。
どうしようかと思ったが、残しておくにも少なしぎるし、捨ててしまうのも惜しいので、そのまま、ラッパ飲みをする。
ボトルは長く、重く、片手では持ち上がらなかったので、両手でささえる。
なんだか、子供が哺乳瓶を持ってるみたい・・・と自分の姿を想像して、無様だわ〜と思った。
昨日、グラスに注ぐ時は、どうやって持ち上げたんだっけと思い、自分ではなく、相手がお酒を注いで入れていた事を思い出した。
しかも、片手で。

 そうよね・・・やっぱり男なんだし。
とハロルドは思う。
どんなに華奢でも、小柄でも、ついでに美人でも、男は男だ。
力が違う。遺伝子が、体の構造をそう引き継いでいる。
ああ、そういえば、男ってことは、こいつにはミトコンドリアが受け継がれていないって事ね。
などと思っていたら、今日はまだ鏡を見てないことに気がついた。
起きる気配がないのを確かめ、すばやく鏡の中の自分の顔を確認した。
寝癖がひどい。
顔も、飲みすぎたせいで、むくんでる。
ああ、嫌になる。
はあ・・・とハロルドは、さわやかな朝だというのに、溜息をついた。
特に、この顔で、あいつと顔をあわせると思うと、憂鬱だ。
そう、あんな美人だ。
感じなくても良い、引け目を感じてしまう。

 鏡の中の顔は、いつもよりも顔色も悪く見えた。
ふと、その原因が、唇の色が悪いせいだと、思い当たる。
かさかさに乾いて、皮が捲れていた。
リップを縫って、せめて口紅でもつけたら、少しはマシになるだろうか。
そう思い、顔を洗いに行く。

 水は生き返るほど、冷たく、気持ちよかった。
化粧水をたっぷりと顔に塗っている時、昨日、ナナリーが、日焼けして肌が荒れた・・・と嘆いていた事を思い出した。
そうだ、今度、化粧水の新しいのを、作ってみようか。
うるおい成分を含んで、ついでに美白効果のあるやつ。
リアラは、肌が綺麗だから必要ない、と言うだろうか・・・。
いやいや、彼女も女の子だ。きっと、喜ぶに違いない。
そんな事を思いつつ、リップを塗り、いつものピンクの口紅をポーチの中から出したところで、ハロルドの手が止まった。
そのまま、なにがある訳でもないのに、口紅を凝視する。


 ベッドを伺うと、未だに、目を覚ます気配はない。

 ハロルドはぺたんと座っていた床から立ち上がり、そっとベッドに近づいた。
寝ている顔を見下ろすと、そっとシーツをずらして、口元をもう少し、外に出す。
薄い唇だった。
なにもしてないのに、リップを縫っているかのようにつやつやしている。
くそ〜と一瞬、思った後、ハロルドは顔を近づけた。
安定した寝息が頬にかかるほど身をかがめ、ゆっくりと口紅をその唇に近づける。
ほんの少し。
力を入れないように、気をつけて滑らすと、唇にうっすらと色がついた。
ハロルドは体を起こし、それを見下ろす。
唇はわずかに開いている。
寝顔はどこかあどけなく、染まった唇は似合わない。
けれど、色っぽかった。

 そのいたずらに満足し、ハロルドは、口紅を先をくるりと回してしまう。
ポーチに戻そうと、体を反転させると、一歩踏み出したところで、声がした。

 「何時だ・・・?」
「あ。」
ぎょ、っとしてハロルドは振り向いた。
半眼のまま、こちらを見ている彼と目があう。
その表情に、口紅のついた唇。
色気がありすぎる。
うわわっと、プチパニックになりそうになり、顔を真っ赤に染めて見つめ返すと、相手は怪訝そうに、首を起こした。
ちろりと、サイドテーブルの上の時計に目を走らせた後、もう一度、視線をハロルドへと戻す。
「どうした?」
「な・・なにが!?」
その顔を見て、相手は、口の端をあげて、意地悪く笑った。
体をベッドの上に起こし、ハロルドの方に向ける。
「なにもないぞ。」
「な・・・なんの事よ?」
一体、何を言いたいのか、さっぱり分からず、ハロルドが聞き返す。
相手は、ますます口の端をつりあげ、さきほど、ハロルドが水を飲んだのと同じコップに、水差しから水をそそぐ。
「なにもなかった。」
「なにって、何が?」
ハロルドの鈍さを、相手は笑う。
そして、ごくり、とそのまま水を飲み、
「僕はなにもしてない。」
そう言って、今しがた、自分が水を飲んだコップを見た。
「お前!」
コップについた口紅の跡を見て、一瞬で、事態を把握できたらしい。
きっ、とハロルドを睨み、相手は自分の口元を手の甲でぬぐう。
その手にはピンクの色がついていることだろう。

いたずらを見つかった子供のように、ハロルドの体が飛び上がり、急いで部屋の向こう側に逃げようとする。
いつもなら、きゃらきゃらと笑うところだが、その時に限っては、後ろめたさもあった。
だが、相手の手が伸びてくる方が、早かった。
腕をつかまれ、引き戻される。
「きゃ・・・。」
ぱふん、と背中で、ベッドが鳴った。
そして、慌てて見上げると、相手も、一瞬、しまったという顔をした。
勢いで、この体制に持ち込んでしまったが、どうしよう、という感じだ。
思わずふたりして、黙り込み、相手の顔を息を飲んで見つめあう。
目を逸らすのは、簡単だった。
だけど、ハロルドは、それは惜しい、と思っていた。

 これほどの美貌を。
こんなに近くで見られることなど、めったにない。

 昔から男の子に興味がなかった。
なにを言っても反応が遅く、仕草は乱暴で、思い通りにならないと、すぐに暴れる。
ハロルドの目には、どれほど子供に映ったことか。
けれど、この男の品のよさは、今まで会ったどの男とも違う。
スマートで、優雅な動きには、つい目を奪われる。
言う事はキツイが、どこかで哲学的だ。
細く、長い指、腕、足。
作り物のように、完璧だ。
そう、完璧すぎる。
もしも、自分がアンドロイドを作ったとしても、果たして、ここまで美しい姿を作れるだろうか。
ましてや、これは、誰の意思もそこには介入してない。天然のものだ。

 ハロルドは思う。
こんな男が、この世にいるなんて。
まるで、奇跡のようだ。


 じっと、自分を見下ろす美貌に見入っていると。
相手は、居心地悪そうに身じろぎした。
黙ってお互いに見つめあっている事実に、我に返ったらしい。
そっと、さりげなさを装って、ハロルドの上から退くと、べッドからも離れ、もう一度水指しから、コップに水を注ぐ。
「まったくお前は・・・。」
取り繕うように、いつもより少し早口で、言う
「油断も隙もあったものではないな。」
「なによ〜。」
「本当の事だろう。」
む〜、としながら、ハロルドは相手を見る。
それを受け、相手は水を飲みながら、知らん顔をしている。
そうしているうちに、ふ、とさっきの会話が思い出された。
「ねえ?」
「なんだ?」
「あんた、さっき、なんて言った?」
「どのことだ?」
「寝起きに、すぐ。」
「・・・・・。」
相手は少しだけ考え、ああ、と言った。
それから、にやりと笑い、ハロルドを見る。
「なにもしてない、と言ったんだ。」
「それって、そういう意味よね。」
「当たり前だ。僕の名誉の為に、何もしてないと、断言する。」
「ん?」
僕の名誉というのはひっかかる。
私に手を出したら、不名誉という意味ではないか?
そう思い、ハロルドはむっとする。

 「なによ〜。」
「なにとはなんだ?」
「それって、手を出したと思われたくないって事じゃない!?」
相手は、一瞬、間をおいて、そうだ、と答えた。
「あんたって、さいて〜!」
ハロルドのその言葉に、相手は首を傾げた。
「どうしてそうなる?」
本気で不思議顔だ。
酔った女に手を出して、最低だと騒がれるならともかく、紳士的に振舞って、怒られる。
たまったもんではない、と思っているようだ。
「なによ!!」
もはや、そういう問題ではないのだ。
どうもそれが分かってないらしい相手に対して、ハロルドは悔しくなってくる。
頭に血が上って、涙がでそうだ。
だん!と床を踏み鳴らし、ハロルドは叫ぶ。
「最悪!!」
「だから、どうしてだ?」
「このキュートなハロルドちゃんを前にして、何も感じないなんて、はっきり言って男としてはお終いね!金輪際、泊めてやんないから、さっさと部屋に帰んなさい!!」
捲くし立てるハロルドに、相手は眉を寄せた。
困惑している、に近い表情を浮かべている。
だが、この男は、鈍くはない。
すぐに、その困惑は終わり・・・相手が口の端を上げた。
挑戦的な表情で、ハロルドを見返してくる。

 「男としてお終い、か?」
その変化を目の当たりにして、今度はハロルドが困惑する。
「なによ?」
「なら。」
一歩、相手がつめて来たのに、気がつくのが一瞬、遅れた。
「手を出した方が良かったのか?」
「え?」
しまった、とハロルドが思うよりも早く、もう一度腕を掴まれ、引き寄せられ、ベッドに沈められる。
「ちょ・・・。」
びっくりして、腕を上げると、その手首を掴まれ、押さえつけられた。
「そうすると抗議をするのか?さっきの言葉とは矛盾してるな。」
乗り上げてきた相手を、ハロルドは睨みつける。
手首は、たいして力を入れられてもいないのに、びくともしなかった。
張り払うにも、振り払えない。
何もないなら、それはそれで。
こうなったら、これはこれで。
やっぱり、悔しい。
どっちにしろ、叶わない、という状況が許せないのだ。
そう思い、唇を噛んで相手を睨む。

それを見た相手は、ふっ、と笑うと、ハロルドの上から、どいた。

 「まったく。」
くつくつと笑い、乱れた前髪をかき上げながら、ハロルドを見るその顔には意地悪いものは浮かんでいない。
まるで、出来の良い冗談に笑ったかのような表情だ。
「退屈しない女だ。」
「なによ〜。」
からかわれたと知って、赤くなり、ハロルドは相手に向かって手を上げる。
ぽかり、とやるつもりだったが、その手は空中で掴まれて止まった。
ハロルドの行動など、あらかじめ読んでいたようだ。
じたじたと暴れるハロルドの力など軽く相殺し、相手は涼しい顔をしている。
思いっきり睨むと、余裕の表情で笑う。
それすらも悔しい。
そうハロルドが思っていると、突然、何かに気づいたように、すい、と顔を近づけてきた。
「?」
だが、そのまま相手は何も言わなかった。
じっと、自分の顔を見ているだけの反応に、ハロルドは訝しがる。
やがて相手は、ハロルドの顔を見ながら、言った。
「お前・・。」
「なに?」
「化粧してない顔を始めてみた。」
「あ。」
やっぱり、さいて〜!とハロルドは心の中で罵った。
朝、顔を洗って、口紅をつけようとしたのに、その前に、この男の唇に塗ってしまった。
そして、そのままだ。
今、自分は、先ほど鏡で確認した、むくんでひどい寝癖の、可愛げのない女のままだ。
それをわざわざ指摘しなくても良いものを。
「見ないでよ!」
ぶん!と腕に力を入れて踏みまわし、一歩、体を離した。
相手はそれは予想してなかったのか、振り回された腕に当たり、痛そうに顔をしかめる。
「なんでだ?」
「なにがよ!?」
「見られると嫌なのか?」
「当たり前じゃないの!こんな・・・。」
「どうしてだ?」
そうして、本当にそう思っているように首を傾げると、
「化粧しない方が可愛いじゃないか。」
と言った。

 普通の会話の流れのようなその口調に、ハロルドはぽかん、となる。
この男が、こういう言葉を言うなんて。
その姿を今まで、誰が想像しただろうか。
それは相当、虚をつかれて、間抜けな顔をしたのだろう。
相手は、再び、くつくつと笑う。
「ハロルド。」
「なによ?」
そして、相手はすばやく屈み、ハロルドの頬を唇で掠め取ると、
「!」
びっくりして固まってしまったハロルドに笑いかけ、昨日、椅子にかけたまま朝を迎えた黒いマントを手に取った。
「邪魔したな。」
相手は、にやりと笑って言う。
ハロルドが我に返った時には、もうこちらに背を向けて、扉に手をかけていた。
「あ、うん・・・。」
驚かされて、いつもの調子がでないハロルドは、単にさよならを言われたから返しました、というように、おざなりに、ひらひらと力なく手を振る。
相手はそれを見て、溜息をつくと(おそらく違う反応を期待していた)体は向こうを向いたまま、首を伸ばして、ハロルドに話しかける。
「ハロルド。」
「なに?」
「次に、酔うような事があれば覚悟しておけ。」
「え?」
またもやなにを言われているのか、ハロルドは目をぱちぱちと瞬かせる。
「今度は、何もない、では済まさない。」
そして相手は、にやりと笑うと、続けた。
「なにしろ、昨日、紳士的な態度に出た事も、本当は不本意だったんだからな。」
そうして、身を翻し、今度こそ部屋から出て行った。
パタンとドアの閉まる音がして、ハロルドは、その意味を考える。

 「あっそ・・・。」
ぼすん、とベッドに腰掛けると、スプリングで一瞬、体が跳ねた。
ハロルドは、そのまま、テーブルを見る。
そこにはすっかり空になったボトルが2本、転がっていた。
空、という事は飲むべき液体がもうない、という事だ。
そして、昨日、空けたこの2本で、酒は切れている。
「じゃあ・・・。」
ハロルドは言う。
自分自身に。
あるいは、転がっている2本のボトルに。
「後で、新しいお酒、買ってこなくっちゃ・・・。」








fin   


 









くだらなくって申し訳ない(汗)
とある朝のなんでもない風景、というのを目指しました・・・一応。 故にだらだらしてるんです。 だけど、だらだらするのも限界があるというか。なにを言いたいんだが分からない話になっちゃった・・・。・・疲れのせいにするか?←さいて〜。 今回、ジューダスが、ちょっと偽者クサイです。 アノヒト、カワイイトカ、イイマスカネ? いや、私の疲れがヤツにも・・・(いいかげんにしなさい) 

(04’7.01)