白い壁は、外の、なんの音も遮断して聞かせない。
今、聞こえるのは、耳元でする、彼のせわしない息遣いだけだ。
それが、ハロルドを静かに追い詰める。
それを聞くと、嵐のように、心は荒れる。
まるで、時計の針のように、早く早くと急き立ててくる。
けれど。
人を望んだことなどない。望まれた事はそれ以上に。
今、ハロルドを捕らえているのは、初めて飛来した、欲望だった。
他人に触れ、他人と関わりたいと思い、他人にとって必要だと思われたい、という初めての、欲。
今、彼を閉じ込めているものが、私という檻だとしたら、彼は私にとっての鎖だ。
ここに繋ぎ止められたいと思っている訳ではない。
いつかは出なければ。そして、ふたりとも助からなければ。
でも、繋がれているのが自分の方だと分かっていても、それを今、断ち切ってしまったら、彼は自由になってしまう。私の手の中からいなくなってしまう。
私は、そう思う自分を嫌悪する。
彼の自由を奪う事を、心密かに望んでいる自分を、憎みさえする。
けれど、それを押しのけて尚、彼が自分がいないと、生きていけなければ良い、と思う。
私ひとりだけのものであれば、良いと・・・渇望する。
|