5.天才

 







「こういう時って、ホント、天才あることなんて嫌になるわ・・・。ま、たまに、だけどね。」
ハロルドのつぶやきは、誰に聞こえることもなく、消えてしまう。
どんな悩みでも、聞くものがいなければ、単なる独り言にすぎない。
ハロルドはため息をつく。
誰もいない部屋でつくそれは、なんだか寂しそうだ、と思った。
寂しそうで、意味がない。
ため息は、気にかけて欲しい人が傍にいるから、つくのだ、とその時、知った。










  

わがままな女王さま















 

 

 その日、朝からハロルドは機嫌が悪かった。

 朝食の時間、食堂に顔を出さないハロルドに、様子を見に行ったリアラが「寝ている」と言った。
まさか具合でも悪いのか?と全員が、一瞬、怪訝そうになる。
なにしろ、あのハロルドだ。
今まで、体調を崩したこともなく、たいした怪我もした事はない。
たとえば、戦闘の時など、彼女の攻撃はもっぱら、派手で威力のある上級晶術なのだが・・・。
前回の戦闘では、前衛が後ろに下がり過ぎて手薄になり、あやうく後方で詠晶中だったハロルドに、イノシシに似たモンスターが攻撃を加えそうになった。
突撃するそれを、杖の先でめった打ちにし、泣きながら(と皆には見えた)逃げるモンスターを更に追っかけて行ったハロルドの姿を目撃した一同は、戦闘での前衛、後衛を変更することも、考えたくらいだ。
そのハロルドが、寝込んでいるとなると、ただ事ではない。

 もしや、新種の流行病か!?と騒ぐロニに、一発くれて、ナナリーがリアラに聞く。
「そんなに具合悪そうなのかい?」
「えっと・・・。悪いって言えば、悪いような・・・。」
「熱とかは?」
「ない・・と思う。」
どうも、変な言い回しだ。
「なんだい?リアラ。ハロルドどうかしたのかい?」
「それがね・・。」
ちらり、とリアラは黒い服の男を見る。
「なんだか、ふて腐れてるみたいなの・・・。」
「え〜!?」
そう言ったのは、カイルだった。
「オレ、今日、ハロルドに目からビームが出る雪だるま、作って貰う約束だったのに!なんでさ!」
「やめろ!バカな真似は!!」
命知らずの義弟に、ロニが忠告をくれてから、リアラに自分も向き直る。
「ふてくされてるっつう事は、理由は?言ったのか?」
「ううん。」
リアラが首を振る。
「でも、ベッドに潜ったままで、不機嫌そうに返事するの。食事は?って聞いても、いらないって。」
「返事をするだけマシだな。」
そう言ったのはジューダスだった。
「あいつは、本当に機嫌が悪い時は、口も聞かない。」
あ、やっぱり。とリアラは思う。
ハロルドの事は、ジューダスにまかせておけば安心、という意識が、最近、全員の中で芽生えつつある。
なにかとジューダスにばかり、つっかかるハロルド。
ハロルドの暴走を唯一、止められるジューダス。
このふたりが、ある種の、ふたりだけの関係を築きつつあるのが、感じられる。


 「ねえ、ジューダス、なんとかなんない?」
まだ、目からビームが出る雪だるまとやらが、諦めきれないらしいカイルが言った。
カイルもカイルで、ジューダスがハロルド担当だと思っているらしい。ただし、彼の場合は、無意識にそれを感じて、意識せずに、それを発動させてしまうところがすごいのだが。
「さあな。」
カイルにお願いポーズで、顔をずい、と近づけられ、それを迷惑そうに押し返しながら、ジューダスは言い捨てた。
「あいつの機嫌がいつ直るかなど、僕に聞くな。あいつの場合、きまぐれでパターンがない。なにか面白いことでも思いつけば、すぐにでも直るが、思いつかないなら、一生でもあのままだ。」
「え〜?そんなぁ〜。」
「ならば、試しに実験体にでも志願してやったらどうだ?それなら、機嫌も直るだろう。」
「それはやだけど・・・・。」
最後は小声になったカイルに代わり、溜息をつきながら、今度はナナリーが言う。
「しかし、困ったね。」
「なにがだ?別にあいつがいないと、早急に困る用事などないだろう?」
「そうだけどさ。やっぱり、気になるじゃないか。仲間の中に、機嫌を悪くしている女の子がいるってのに、皆で他所でわいわい楽しくなんてできないよ。」
姉御肌のナナリーらしい、とジューダスは思う。
女の子、といってもハロルドは、ナナリーよりも年上だ。だが、幼い顔立ちに子供のような仕草の彼女は、ナナリーにとっては、守るべき女の子なのだろう。
「わかった。」
つい、それにほだされ、ジューダスは言う。
「食事が終わったら、僕が様子を見てこよう。それで良いだろう?」








 「はいるぞ。」
小さなバスケットを手に、部屋の前で声をかけたが、返事はなかった。
ジューダスは、気にせず、ドアを開けて中に入る。
ハロルドは起きていて、窓辺に座り、ぽけっと窓の外を眺めていた。
ぽけっとしていると言っても、彼女には、真にそういう時間はない。
今もこうしていながら、頭の中ではもうスピードで、なにかの計算をしているに違いなかった。
「朝食に、これを持ってきた。」
ハロルドのお気に入りの、ポンデゲージョという丸いもちもちとした小さいパンを、テーブルの上に置き、ジューダスが言う。
「聞いているか?」
ハロルドは窓の外を見たまま、なんの反応も示さない。
「うん・・・・・。」
溜息をつき、そのまま部屋を出ようとしたジューダスの耳に、小さく答える声が聞こえて、振り返る。
「カイルが、雪だるまをつくって欲しい、とふくれてたぞ。」
「うん・・・。」
「・・・どうした?」
ジューダスはハロルドに近づき、頭をくしゃりと撫でた。
その感覚に、ハロルドは目を閉じる。


 「バカ・・・・。」
と小さくハロルドがつぶやいた、その声に、ジューダスは首を傾げる。



こういう風に、自分を、まるで子供扱いするのは、この男だけだ。
何も構えず、自分に近づいてくるのも。
そう、まるで、兄のように。
それが当然の事のように。
だがそれは、とある感情から成り立っているのだ。この男の場合。
そして彼自身、その感情にも、それが自分に対して、失礼なのだと言う事にも気がついてない。



 猛烈に腹が立ってきて、ハロルドがジューダスの手を邪険に払いのけると、ジューダスは少し驚いたように、手を引いた。
「・・・どうした?」
「別に?」
すっくと椅子から立ち上がり、ハロルドはジューダスから離れ、テーブルの上にバスケットを開ける。
中から、チーズのほのかな匂いが立ち上り、ぐぅとお腹を鳴らしたハロルドは、バスケットの中に手をつっこんで、ひとつをひっつかんだ。
「お茶!」
「・・・なんだって?」
「お・ちゃ!私はこれから、朝ごはん食べるんですからね!お茶くらい入れなさいよ、まったく!」
いきなり、なんだ?と言いながら、ジューダスは眉を寄せる。
人に謂れない命令をされたのだ、気分も悪いだろう。
だが、ジューダスは、むすっとしながらも、お茶を用意し始めた。
怒りの言葉すらも出さない。
黙ったまま部屋を出るかもしれない、というハロルドの予想は外れた。
ハロルドには何を言っても無駄だと諦めているのか、それとも、もっと違う理由からか。
なぜ、自分に対してはそうなのか。
ハロルドは・・・・その心当たりに、少しだけ、胸を痛めた。


 「ほら。」
白く薄いカップに注いだお湯の中に、紅茶のパックを放り込んで、ハロルドのテーブルに持って来たジューダスに、じろりと一瞥くれて、ハロルドは言う。
「座って。」
「今度はなんだ?」
「そんなとこにいつまでも立ってられたら、鬱陶しいのよ。ここに座って、私と一緒にお茶を飲むの。」
ジューダスはひとつ、溜息をつく。
今は欲しくない、という言葉を飲み込み、ハロルドに用意したのと同じものを持ってきて、テーブルに座る。
逆らっても聞き耳を持たない、ハロルドの顔を見る。
そこには、ありありと不機嫌そうな表情が浮かんでいる。
なにが原因かは知らないが、どうやら、これは八つ当たりらしい。
こんな事に、気分が悪いのを我慢してまで、つきあうなんで馬鹿げてる、そう思う。
だが、ジューダスの方も意地だった。
カイルたちに期待されているからの意地ではなく。
ハロルドの八つ当たりの相手に自分が選ばれた事への、意地。


 「それで?」
「ほえ?」
もごもごと、ポンデゲージョを口に詰め込んでいたハロルドは、顔をあげた。
その目に、ジューダスが、紫色の瞳を半分ほど閉じた冷めた表情で、口を開くのが見えた。
「次の命令は?」
ごくんとパンの飲み込み、それを聞いたハロルドは思わず、笑った。
言ってくれるじゃないの、面白いわ。
「これ食べたら、お風呂入る。」
「で?」
「バスタブにお湯を溜めてきてよ。」
ジューダスは、立ち上がって、風呂場へ向かった。
扉を開く仕草が、乱暴なのは気のせいではない。


 怒ってるなら、いつもみたいに、怒鳴れば良い。
ふざけるな、と言えば良い。
もしくは黙って、部屋を出て行けば。
なのに、どうしてしない。
どうしてそこまで我慢する。
私の機嫌を取る事に、なんの意味がある。


 

 ハロルドは立ち上がり、部屋の隅に置いてあった、ワインのボトルとグラスを手に取った。
昨日、飲んだ残りが、ボトルの底で揺れている。
「まさか・・・・風呂入りながら、飲む気か?」
呆れたような声がして、振り返ると、ジューダスが戻ってきていた。
彼の後ろで、少しだけ開いた風呂場の扉から、水音が聞こえる。
その戸惑ったような声に、ハロルドは一瞬、爽快な気分になった。
「そうよ?悪い?」
「・・・・いや。」
にこりと笑って言ってやると、ジューダスは否定したが、顔はそうは言ってなかった。
お風呂場で、お酒を飲むという行為を嫌う人間もいる。
そういう女を、きっと、この男は好まない。
だが、別に私がどうしようと、自分には関係ないと思ってる。


 ハロルドは、ジューダスの横をすり抜けて、風呂場へと向かう。
その扉を開けながら、ハロルドは振り返った。
「まだ、いなさいね?」
「なんだと?」
たぶん、これでお役ごめんだ、と思っていたのだろう。
この上、風呂から出るまで待たされるのか、と、うんざりした表情を隠しもせず、ジューダスが見返してくる。
その表情を良いな、とハロルドは思った。
この男が、そういう表情をすると、様になる。
「後で、呼ぶから。」
「呼ぶって・・・・。」
ハロルドの言葉に、ジューダスは、明らかに動揺した。
風呂に入っている女に呼ばれる、という事を、どう受け取ったら良いのか、分からないのだろう。
「変な期待はしないでね?」
それを分かっていながら、わざと意地悪く言い捨て、ハロルドは、扉の中に消えようとした。
「おい。」
その背に、声がかかって、ハロルドは振り返る。
「なによ?」
「酒はよせ。」
きょとん、とハロルドは、ジューダスを見た。
その顔は、真剣に怒りを浮かべている。
ああ、やっと怒ったの?とハロルドは思った。
怒らせたくって、やったのだ。
これで良いのだけれど、少しだけ悲しくなった。


 ジューダスを、見据え、挑戦的な気分で、ハロルドが口を開く。
「別に私がどうしようと・・・。」
「昨日、飲みすぎただろう?」
「・・・え。」
「顔に出てる。お前は二日酔いの時は、目の端が赤くなる。」
つかつかとハロルドに歩み寄り、ジューダスはワインのボトルを取り上げた。
「もう、やめておけ。」
ハロルドはボトルを見る。
自分が持つと、重くって大きかったのに。
この男の手の中だと、たいして重そうにも、大きくも見えない。
華奢な手なのに。


 ふいに頭が重く感じられた。
支えているのが辛くって、ハロルドは大きくうつむく。
 「なんでよ・・・。」
「なんだって?」
頭を垂れたハロルドの顔を覗き込むようにしながら、ジューダスが言った。
「私の事はほっときなさいよ!」
「おい・・・。」
いきなり怒鳴られ、ジューダスはぎょっとして身を引く。
「私が何も気がつかないと思ってるの?」
それを、きりっと睨みつけ、ハロルドが言う。
「それとも、本気で自分でも気がついてないの?」
「なにを言っている?」
それでも、変になだめようとしないのが、この男が他の男と違うところだ。
理由を、今は、ハロルドの中だけにある理由を、きちんと聞こうと思っている。

 「どうして、私の世話を焼くのか、当ててみようか?」
ハロルドは、ジューダスを睨みながら言う。
今まで溜めていた言葉だ。
「天才に認められるのが、優越感だからでしょ?」
分かってた。
この男が見てるのは。
「私が"天才"だから。」
私自身ではなく、私に対する"称号"だと。
ハロルドは自嘲して、歪めた笑いを浮かべる。
「自分だけが、天才である私を制御できるって事に、優越感を感じるんでしょ?」
怒りのあまり、目の前の景色が歪んで見えた。
「傍にいて、私を理解できれば、満足を得られるんでしょ?だから、私が天才でなかったら・・・。」
しかも、どんどん歪む。
ジューダスの表情をはっきりと見れないほど。
「私自身には、用はないんでしょ?」



バカニシテル。
ソンナモノ、ブビョクイガイノナンデモナイノニ。



 ハロルドは肩で息を整える。
それだけで、どれほど興奮していたか、分かる。
吐き出した後、残るのは後悔だけだった。
言えば、この男は、自分の気持ちに気づく。
そうしたら、もう、自分を構うこともないだろう。
だから。
「そうなんでしょ?」
今まで、言えなかったのだ。



 ジューダスの表情は相変わらず、歪んでいて見えなかった。
ジューダスだけでなく、部屋の中のなにもかも、も。
きちんと認知できないなら、ないのも同じ。
世界そのものが、もうここにはないようだ。


セカイガオワッタヨウナモノダ






 「天才というのは、意外と抜けているのだな。」

 いきなりジューダスの声が浴びせられる。
だがそれは、本当に呆れたという感じで、ハロルドの予想をしていた、自分の気持ちを言い当てられたことに対する、戸惑いのものではなかった。
「なにがよ。」
「お前が天才だから、優越感を感じるのか、と言ったな?」
ジューダスが、言う。
一方的に。
今度は自分が話す番だと思っているかのようだ。
「言ったわよ・・・・。」
「そうだ。」
ハロルドの胸に、その言葉が刺さる。
つきり、と痛んだ、その瞬間を逃さないような、絶対的なタイミングで、ジューダスの言葉が続く。
「お前に認められると言う事は、世界の全てを知ったも同然だ。少なくとも、僕にはそうだ。だが、お前がいくら天才であっても、それを理解できないものには、意味がない。そういう意味では僕は。」
黙ったままのハロルドに、聞いているか?と確かめてから、先を続ける。
「お前の価値を知ってる。だから、興味を持った。それが悪いか?」
「・・・・・。」
「次に、天才でないお前に用がないのか、と聞いたな?」
「聞いたわ。」
「天才でないお前に会ったことなどないから、知らない。それだけだ。」
それは答えとは言わない、そうつっかかろうとしたハロルドの手首をいきなりジューダスが掴んだ。
「そんなことになんの意味がある?」
薄い紫色の瞳に覗き込まれ、ハロルドは息を呑んだ。
「確かに、僕はお前が天才だから認めている。だが、それだけで、構ったりしない。」
「・・・仲間だから・・?」
ハロルドの言葉を聞いた、ジューダスは呆れたように、溜息をついた。
「人間の位置としての分類が、なんの関係がある?今、この話に。」
「だったら。」
「お前の事は嫌いじゃない。女として好きな訳でもないがな。だが、一緒にいて飽きない。退屈しない。それが理由だ。優越感に浸る為だけに、気にいらないヤツの傍になど、僕は寄らない。分かったか?」
まるで、説教するような口調で、一気に言い、ジューダスはハロルドの手首を離した。



 殺し文句、という言葉がある。
これは、それだ、とハロルドは思った。
いつも、なにも大事な事は言わないクセに、時々、重い口を開けば、効果的な言葉を使う。
ハロルドにとって、天才である、という事は、栄光であると同時に、決して引き剥がせない影でもあった。
それが、正しく認識されている者には、この上もなく価値のあるものだ。だからこそ。そういう者は、個人であるハロルド自身を、おまけのように思っている。
そして、天才の価値を、この男も分かってる。
だから、同じだと。私と天才とは切って考えられないのだと。
そう、思ってた。







 「あ。」
ジューダスの言葉を噛みしめていたハロルドの耳に、ジャブジャブという大きな音が聞こえた。
今までの、小さな水音と明らかに違う。
「お風呂!!!」
ハロルドの声に、我に返り、慌てて、ジューダスが風呂場に飛びこんだ。
その後ろからハロルドも続く。
「あ〜・・・・。」
ジューダスが、濡れるのもかまわず、蛇口を閉じたが、時すでに遅し。
バスタブからは水が溢れていて、床のタイルには洪水が起きた後のように、水が溜まっている。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・見つかったら、怒られるかしら・・・。」
「黙って見てないで、手伝え。」
憮然とした表情で、袖をまくり、ジューダスが床の水をかき出す。
「ああ、うん。」
まだどこか、現実感を得られないまま、ハロルドも部屋着のまま、裸足の足を水の中にいれ、排水溝へと、水をかきだし始めた。
「ふふっ。」
「何を笑っている?」
「だって・・・・。」
こみ上げてくる可笑しさに、ハロルドは、真面目な顔をしているのが、バカバカしくなった。
「ふたりもいて、こんな事になるまでほっとくなんて、マヌケだな〜って思って。」
「元はといえば、お前のせいだ。」
むっとした表情でジューダスが言う。
「お前があんな、くだらない事を言い出すから・・・。」
「くだらなくなんか、ないわよ。」
ジューダスの言葉を遮り、ハロルドは言う。
「私にとっては、全然、くだらなくなんかない。」
そうして、ジューダスの顔をまっすぐと見返した。
その言葉の意味が、ちゃんと届くように。


 「・・・・・そうか。」
やがて、口元を緩ませ、ジューダスが言う。
目も笑っていた。
それが、ハロルドの心を和ませる。
この失敗による、水のかきだし作業も、なんだか、楽しい。
「遊ぶな。」
ばしゃばしゃと調子に乗って、音をたてて汲み上げるハロルドにジューダスが、溜息をつく。
子供かおまえは、と言いながら。


 「そういえば、お前。」
「な〜に?」
床の水がほとんど流れた頃、ジューダスが言った。
「機嫌は直ったのか?」
きょとん、とハロルドはジューダスを見た。
その目には、一点の曇りもない。
「何の事?」
「なんだと?」
あれだけ散々こき使っておいて、忘れてるのかとジューダスは、腹を立てる。
「私は初めから、機嫌なんか悪くないけど?」
「・・・・・。」
忘れているというよりも、本気で言っている。
そう判断して、ジューダスは開いた口ふさがらないとはこのことだな、と思った。
「では・・・。」
あの八つ当たりはなんだったんだ?と言おうとして、ジューダスは気づく。
「・・・・・。」
「・・・・・?」
「今日の朝食に出なかったな?」
「うん。」
「あれは、二日酔いで寝てたのか?」
「うん。」
そう、機嫌が悪いと言ったのはリアラだ。
二日酔いと機嫌が悪い。
似ているが非なるものだ。
それを勘違いして、機嫌を取ろうとしていたようなものではないか、これでは。
ジューダスは思い、ハロルドがさきほど、突如あんな事を言い出した、そのきっかけはこれだったのか、と思った。
必要ないときに構われて、なにかこちらに思惑がある、とでも疑ったのだろう。




 「さ。お〜わりv」
ハロルドは上機嫌で、風呂場から出た。
バスタブには調度良い感じで、お湯が残っている。
「ホラ、ジューダス!」
「?」
「出て出て。私、お風呂入るんだから。」
「あ、ああ・・・。」
うっかりと想像してしまい、少しだけ、うろたえながら、ジューダスも風呂場から出た。
足と、濡れた服をざっと拭き、出て行こうとすると、ハロルドが言った。
その声も、上機嫌だ。
「まだ、帰っちゃダメよ。また呼ぶから。」
「・・・・・なんでだ?」
2度目に聞くセリフなので、さすがに動揺せずに、ジューダスが聞く。
「頭、洗ってよv」
「ば・・・・・。」
バカな事言うな!!とジューダスが顔を真っ赤にして怒鳴り、ハロルドはそれを見て、にんまりと笑う。
「目をつぶっててくれれば、見えないわよ。あ、それよりも、いっその事、一緒に入る?」
バン!!と音を立てて、扉を閉め、ジューダスは返事もしないまま、出て行った。
くすくすと笑い、服を脱ぐと、ハロルドは少しぬるくなったお湯の中に、体を沈める。
お湯が体にまとわりつき、心地よい。
たちのぼる湯気に、ほうっと息を吹きかける。
それに、うっとりとした後、もうそろそろかと思い、ハロルドは大声で、外に向かって呼びかけた。
「ね〜〜〜〜え?」
「・・・・・なんだ?」
少し遅れて、扉越しに声が返ってくる。
なんだかんだと言いながら、ちゃんと部屋で待っていてくれているジューダスに、ハロルドは嬉しくなる。
「あがったら、コーヒー飲みたい。ミルクもたっぷりいれて、冷たくして?」
「・・・・分かった。」
彼はきっと、用意して待っていてくれてるだろう。
自分が二日酔いだと分かった今、もうこちらの、頼みを聞く必要などないのに、それでも、口では、どうして僕がこんなことを、などと言いながら。
その想像はきっと、当たっている筈だ。
「それを飲んだら、カイルの為に、雪だるま、作りに行きましょう!」
「ダメだ。」
やはり、少し遅れて、声が返ってくる。
「湯冷めしたら風邪をひく。雪だるまは午後まで待たせとけ。」
ハロルドは笑い、は〜い、と答えながら、顔を下半分、お湯に沈ませ、バスタブにぶくぶくと泡をたたせた。

 







fin        







ああああ、もう、本当にくだらない(汗)
今まで書いたものが、くだらなくなかった、とは言いませんが、今までの中でも最強にくだらない・・・。
ハロ→ジュ→? という構図です。
まあ、まだ、ジューダスはハロルドを気に入ってはいるが、好きではない、と。
なのに、構う・・罪作りな男・・・。
ジューダスは、機嫌が悪いのなら、話でも聞いてやろうと思っていて。
ハロルドは、二日酔いで寝込んでるだけだったのに、機嫌を取るような行為をしだして、怪しい・・・・と思っている。
お互いに意思の疎通ならず、な訳です。
こう、微妙にずれているのです。そして、お互いの思い込みのおかげで、ハロルドが爆発しちゃってるんですが・・・。説明がなければ、分かりませんね、すみません(汗)
ここの、ずれの表現が私には、難しすぎまして・・・。

いや、本当は、もういっその事、ラブラブな恋人になってる話にしちゃおうかな〜と、追い詰められて、思いましたもしましたが・・・。
それすら無理でした!!(泣)

それはどういうのかと言いますと、落ち込んでるハロルドの言う事を素直に従ってあげるジューダス、の話だったんです。
普通はありえないが、恋仲にでもなってたら、ほだされる時もあるかな?あのジューダスでも・・って事で。
だから、お風呂に入る前に、ハロルドの肩を揉んであげたり、頭を洗ってあげるところも、実際に書く予定だったんですが・・・。そんなあんた、今時、メロドラマじゃあるまいし・・・・。さらにその後、色っぽいシーンになる訳でもないのに、ハロルドの裸、見えちゃうじゃんとか、色々、考えてるうちに、いきなり、怒り出すハロルドの話になっちゃいました・・・。 まあ、こっちの方が、落ち込んでいるよりも、まだ、らしいかな?と。(落ち込んでるハロルドは、妙に弱々しいんで、書き直しました)
ただ・・・・苦し紛れに書いたような話なので、出来はよくありません(汗)
八割書き終わったところで、ボツにしようと本気で考えたくらい。
だけど、それを書いたのは、ほかならぬ私で、これが私の実力な訳です。
なのに、見栄を張っても仕方ないか、と開き直ってアップしました。
なんじゃこれ〜、と思った方、読み流してやってください(汗)

あ、ちなみに、ポンデゲージョは私の、大好物〜〜〜v うまい!!!

(04' 5.19)