不完全な果実

 

 


 「ねぇねぇ、これ見て!」
ハロルドが目を輝かせてそう言う時は、決まってロクな目に合わない。

 ぎょっとして身を引いたナナリーとリアラの鼻先に、ピンクでふわふわとしたうさぎのぬいぐるみが差し出される。
「可愛いっしょ♪」
そう言ってハロルドは、得意げに胸をそらす。

 それは調度、手のひらに乗るほどのサイズで、体部分よりも大きめの耳をピンと立て、黒いつぶらなボタン目をしていた。ご丁寧な事に、赤いリボンまでつけている。

 「あ、本当。」
これなら安全そうだとほっとして、リアラがピンクのうさぎに手を伸ばした。
「どうしたの?これ買ったの?」
「違うわ。造ったのよ〜。」
「え?ハロルド、お裁縫できたのかい?」
「違う違う。私が造ったのは中身の方よ〜。」
それを聞いて、ナナリーはうさぎに伸ばしかけた手をひっこめる。
「造ったって・・・これ、何?」
ピンクの柔らかい毛に、毒でも仕込んであったかのように、うさぎを地面にほうり投げた、リアラを見て、ハロルドは笑った。
「そんなにビクつかなくっても大丈夫よ〜。これは杖よ。詠唱用の。」
「杖?」
「どこらへんが?」
リアラとナナリーは、それを聞くと、すぐにうさぎを抱き上げ、顔を近づけて、まじまじと観測した。
やはり、ただの愛らしいぬいぐるみにしか見えない。
「ここの長い耳の中に杖の柄の部分が、胴体の中に詠唱力を高めるレンズが入ってるのよ〜。うまくいったっしょ?」
「へえ。」
ハロルドもまともな物を造るんだね、とふたりは言い、素直に感心してみせた。

 そこは、気持ちの良い山道だった。
今日中に山越えを目指していた一行だが、頂上を過ぎ、幾分、楽になってきたところで、休憩を取っていた。
女3人寄れば・・・と言うが、リアラ、ナナリー、ハロルドはかたまって、大きな木の陰で太陽の日差しを避け、おしゃべりに 興じていた。
どこからか風が吹き、近くに湧き水でもあるのか、水のにおいを 運んでくる。

 「あれ?ジューダス、どこ行くの?」
近くでカイルの元気な声がして、見ると、 ジューダスがひとり、立ち上がったところだった。
「水が近くにあるようだ。様子を見てくる。」
そう言って黒いマントを揺らし、ナナリーたちのいる方向に歩いてくる。
ジューダスはすれ違いざま、一瞬、足を止めて、こちらを見た。

 「良いのかい?」
ジューダスが去った後、その後ろ姿を目で追いながら、 ナナリーがハロルドに言った。
リアラにうさぎの詳しい説明をしていたハロルドは、何が?と言いながら振りかえる。
「ジューダス、行っちゃったけど?」
ん?と首を傾げ、ハロルドはナナリーを見る。
「それが何?」
その姿に、ふう、とナナリーはため息をつく。
「何なんだかねぇ。」
「だから、何が?」
「あんた!」
ビシッとナナリーはハロルドの鼻先を指差した。
「あんだけジューダスの後、追いかけてたっていうのに、もう忘れちまったのかい?」
「・・・・ああ!」
言われて思い出したように、ハロルドは胸の前で、 ぱちんと手を打った。


 一時期、ハロルドがジューダスの後を追い掛け回していたことがある。
時折、ひとりになりたがる彼を、どんなに嫌がろうと、逃げようと 必ず見つけ出し、ずっと傍を離れなかった。
その徹底振りは、周囲を呆れさせた程だ。
なによりも、カイルとリアラでさえ、自分たちを棚に上げて 「仲良しね〜。」などと言っていた。
ナナリーなどは思ったものだ。
確かに、本人は迷惑そうだったが、孤立する帰来のある彼が 少しでもハロルドの影響を受けてくれれば良いのに、と。


 「あれはね、もう終わった。」
「・・・・・終わった?」
「そ。」
もう興味を失ったかのように、ハロルドは前を向く。
まるで、ナナリーの言葉など初めからなかったかのように。
「何が終わったのさ?」
「うん、あれはね。」
うさぎの耳を両手で掴み、地面でぴょんぴょん跳ねさせながら、 ハロルドは言う。
「あいつのねー。行動パターンに興味あったし、それに普段人を寄せ付けない人間が、どの程度の範囲のパーソナルスペースを保とうとするものなのか、データになりそうだったから。
初めは、私が傍に行くだけでも嫌がってたけど、最終的には諦めて何も言わなくなったし。だから、あれはもう終わり。」
「・・・・・・・。」
 ナナリーはジューダスが歩いていった方を見た。
ほんのちょっと前なのに、彼の姿は見当たらない。
振り返って行ったジューダスは、あの時、ハロルドの顔を見ていた。
「ハロルド。」
「んー?」
「あたし、そういうの好きじゃないよ。」
「・・・・え?」
ハロルドはナナリーの言葉に、不思議そうに、本当に不思議そうに 首を傾げた。






 「うっわー!結構、急だなぁ!皆!気をつけよう!」
いきなり足場が悪くなった道を見て、カイルが全員に注意をうながす。
「バーカ!そりゃ、俺たちがお前に言うセリフだ!」
ロニがカイルの頭を、パシンッ!と叩きながら先頭に回る。
女性陣の足場を作るため、こういう時は、男たちが先を行くのが常だ。
「でも、確かにこりゃ急だ。しかも結構、ごつごつした岩が多いな。」
「転んで頭でも打ったら、ザクロだな。」
「嫌な表現するなよ、ジューダス。」
軽口を叩きながらも、慎重に道を選ぶ男性陣の後を、リアラ、ナナリー、ハロルドと続く。

 「ふむ。」
岩場を眺めながらハロルドが言う。
「どうも向こうの山が火山だったようね。 今は・・・休火山か死火山かは知らないけど。」
「んー?なんでそう思うんだい?」
ナナリーが振り返って聞く。
「だってほら、ここの道・・・」
ハロルドの指差した方は一本道のようにつながっていた。
それを見たナナリーは納得する。
「あー、本当だ。こりゃ、溶岩が流れた後って訳だね?」
「そそ。」
「・・・・おしゃべりをしていると転ぶぞ。」
リアラの前を行く、ジューダスの耳にも届いたのか、足を止めて 振り返った。
「はいはい。」
ふたりは肩を竦め、再び、歩き出した。


 『そういうの好きじゃないよ。』
さっき言われた言葉を、ハロルドはふいに思い出す。
彼女の実験はいつでも迷惑だと言われるし、データ収集のために仲間の行動パターンを観察するのは、いつもの事だ。
それなのに、何故ナナリーは今回に限って、そう言ったのだろう。
『ううん。違うわ。』
ハロルドは自分の胸の内を考える。
何もナナリーに言われただけでひっかかったのではない。
ハロルド自身、何かを・・・何か間違っているような気分になったのだ。
それは何かを見落としている、そんな感じだ。
ハロルドは坂道に集中しようと、足元をしっかり見た。
確かに、ここで転んだら、洒落にならない。
先に下っていくリアラの頭の向こうに、黒いマントが下からあがってくる風に煽られて、なびいていた。







 足場の悪い坂道を抜けると、小さな小川が流れていて、その近くに山小屋を見つけることができたので、今日は終わりにしよう、という事になった。
 まだ、日が暮れるのにはかなり時間があったが、山越えには無理は禁物だし先ほどの岩場の坂道で、全員、思ったよりも体力を使ってしまっていた。

 場所を決めると、普段ならすぐに薪にする為の小枝を集めに行くのが常だったが、とりあえずは一旦、体を休めるのが先決とばかりに、それぞれ、ごろりと寝転んだり、木材の壁に背をもたれて、座り込んだりしていた。


 そんな中、ジューダスがひとり、木の扉を開け、出て行こうとしている。
「んー?ジューダス、休まねぇのか?」
「そこの川で水を汲んでくる。」
「おー。行ってらっしゃい。」
「あ、俺も行くよ!ついでに俺、小枝集めてくる!」
カイルが勢いよく立ち上がり、ジューダスの後を追いかける。
「お茶、沸かせるだけありゃ良いよ?後で皆で拾いに行こう。」
その背にナナリーが声をかけると、
「わかった−!」
と、すでに外へと飛び出していたカイルの返事が、扉越しに聞こえてきた。
ふふふ、とナナリーとリアラは笑う。
「あいかわらず、カイルは元気だねぇ。」
「本当。」
くすくす、笑いあうふたりだったが、やがてナナリーが思い出したようにフードサックへと手を伸ばした。
「そういえば、桃があるんだった。夕食前のおやつ、といこうか?」
「おー。いいねぇ。」

 桃はよく熟れていて、美味しそうだった。
柔らかい果肉に傷をつけないようにナナリーが、クッションがわりに紙で何重にも包んでいたが、それらを1枚1枚あけていくと、あたりに甘い香りが広がり、鼻腔を心地よくくすぐった。


 「はい。ハロルド。」
ナナリーに手渡された桃を、ハロルドは力を入れないように気をつけて、そっと両手で包むように持つ。
ハロルドは桃が好きだ。
けれど、実はあまり食べたことがない。
大人になるにつれて戦争が激しさを増し、貴重な果物など、めったに手に入れる事ができなかったせいだ。
だから、皆に会い、この時代に来て、再びめぐりあった時はなつかしかった。
だが、子供の時以来で、扱いを忘れていたハロルドはつい、指先に力を入れてしまい、柔らかい果実はそこだけつぶれ、淡いピンク色の肌に、しみのような茶色い傷をつけてしまう。


  『そうだった。あの時も、確か・・・』
それはジューダスを追い掛け回していたときの事だ。





  「どーこ行っちゃったのよー?」
休憩になったとたん、姿を消したジューダスの姿を探し、ハロルドは木々の間を歩き回る。
手には桃を持っていた。
一緒に食べようと思って。


 草の背が高く、歩きづらかった。
何度が足を採られそうになりながらも、よたよた歩いていると、木に寄りかかっている黒い影を、やっと見つける事ができた。
声をかけようとして近づくと、それよりも早く、ジューダスが立ち上がった。
自分の気配に気付いて、逃げられるのかと思ったが、そうではなく、ジューダスは近くを流れる小川まで行くと、そっと手を伸ばして、手の中の物を、水の中におろした。
川を流れてくるそれは、草でできた舟だった。
「へえ。」
ハロルドは、それを見て声をあげる。
草の船 は、ゆらゆらと揺れ、時にはくるりと向きを逆さにしながら、流れていく。
それはなんだか、忘れがたい風景だ、とハロルドは思った。
川に流れる草の舟の、脆さの中にある、けなげさではなく、 押しつぶされそうなほど、巨大なものの中にあっても、 凛とした、美しい存在感を小さな舟に感じることができた。


 「あんた、結構、風流なとこあんのね♪」
「何しに来た。」
ジューダスは、ハロルドを睨むようにして言った。
「桃、もってきたのよ〜。はい、これ。」
冷たい視線になど、ビクともせずに、ハロルドは両手の桃を前に差し出す。
ジューダスはそれを一瞥すると、
「いらん。」
と言う。
「ちょっとーなによー。まさか、にんじんと同じで食べられないんじゃないでしょうね?」
「そんな、お前の手の痕だらけの桃など食べたくもない、 と言ってるんだ。」
「え?」
そういわれてハロルドは気付く。
自分が力を入れて、桃を握ってしまった事に。
桃のふさふさとした表面には、ハロルドの指の通りのへこみができていた。
「あ〜・・・・。」
がっかりするハロルドに用はないとばかりに、無言で背を向けジューダスは歩き出す。
「待ってよー。ちょっと・・・。」
その背に声をかけたが、視線を桃の方に戻す。
やはり、桃には大きな傷ができていた。
さっきまで綺麗なカタチをしていたのに。
それを見ていると、なんだか、か弱いものを踏みにじってしまったかのような、情けない気分になった。美しいものを壊してしまった後は、いつもこういう気分になる。


 「くだらない事で、そんな情けない顔をするな。」
「あれ?」
呆れたようなジューダスの声がすぐ近くでして、ハロルドは顔をあげた。
てっきり自分を置いて行ってしまったのだ、と思っていた彼は、ちゃんとハロルドの前にいてくれていた。
ぱちぱちと瞬きをするハロルドに、ため息をついて、ジューダスはハロルドの手から桃を取る。
もしかしたら、泣きそうになっていたのだと、勘違いしたのかもしれない。
当たらずと言えど遠からじだが、訂正するのは、辞めた。
泣きそうになっていたと思わせておいたほうが、彼は優しい。
そして、その思惑通りだった。
ジューダスは懐からナイフを出すと、桃の皮をむき、傷んだ部分を切り取って、ハロルドの手に戻した。
桃は、あちらこちらに角があるが、ほぼ、球体に近いカタチに戻っていた。
ハロルドはこういう多面形が好きだ。
「ありがと・・・。」
その場に座り、カプッとそのまま、かぶりつく。
桃はよく熟れていて、水気をたっぷり含んでいた。
ジューダスの方は、逃げるのを諦めたのか、ハロルドの横に座り、桃をナイフで削り取っては、そのまま口に運んでいた。


 ハロルドは桃をかじりながら、銀色に光るナイフから、白い桃の果実が、ジューダスの口へと、するりと入っていく様を盗み見る。
それはただ、単純にそれだけの事だったが、目をそらすことができなかった。

 冷たい機械のフォルムや、色取りどりのガラスの中の薬は それまで、ハロルドの目を十分に楽しませてくれていた。
けれど人間には、ただ行動するというだけで、こんなにも綺麗な フォルムを作ることができるのだと、その時、初めて知った。


 「・・・・・どうした?」
視線に気付き、訝しげにジューダスは、ハロルドを見返す。
「あ、うん。」
まさか、見惚れてました、とも言えず、とっさに誤魔化すための嘘を言った。
「それ、甘そうだなぁって思って。」
「甘くないのか?」
「うん・・・ちょっとね。」
そこでハロルドはピンッと思いつく。
「あ、そうだ!」
「何だ?」
「あーん。」
口を開けて、桃をねだるハロルドを、ジューダスは気味悪そうに見たが、押し問答するのも面倒だと思ったのか、何も言わず、 自分の桃を削り取ると、手でハロルドの口へと運ぶ。
桃の果実は、するりとハロルドの口に入った。
「やっぱり、こっちのが甘いわ。」
とっさについた適当な嘘だったが。それは意外にも本当で、ハロルドは匂い立つほどの、その甘さを楽しんだのだ。





 たった、それだけの事だ。
それでも、川を流れる草の舟と、
ナイフから桃を食べるジューダスの姿と、
あの時の桃の甘さを。
ハロルドは今でも、はっきりと思い出せる。

 「ねえ、ナナリー!」
いきなり呼ばれ、桃の皮をむく手を止めて、ナナリーがハロルドを見る。
「なんだい?」
「桃、もうひとつ、頂戴!」
それを勘違いしたらしいナナリーは、顔をしかめた。
「悪いけど・・・人数分しかないんだけど・・・。」
「ちがーーーう!ジューダスの分、頂戴!渡してくる!」
「え?」
「あいつ、もうすぐ帰ってくるんじゃねぇの?
待ってれば・・・・。」
何かを言っているロニを押しのけて、ハロルドはナナリーの前で子供がおやつをねだるように手を差し出した。
ナナリーは、その手とハロルドの顔を交互に見比べてから、母親のように優しく微笑むと、フードサックの中から桃を出した。
「はい。強く握っちゃダメだよ?」
「わかってますって!ありがとう!」
スカートの裾を揺らしながら、扉をダッシュで出て行ったハロルドに、思わずロニが笑いを漏らした。
「・・・・仲が良いこって。」
「おや。あんたも気がついてたのかい?」
「当たり前だろ?」
桃を両手で持って、膝の上に置いたままのリアラが、くすり、と小さく笑った。
彼女はカイルの帰りを待ってから、一緒に食べる気らしい。
「何だかんだと言っても、結局ハロルドはジューダスを追いかけていくのね。ジューダスも。」
ん?と言ったナナリーとロニを見て、リアラはにっこりと笑った。
「ジューダスも、ハロルドが追いかけてこないと、不思議そうにみるのよ?」






 川、川、と頭の中で連呼しながら、ハロルドは走る。
早くしないと行き違いになってしまう。
せせらぎの音のする方に急いでいると、ふいに、カイルの声がした。
「あれ?ハロルド?」
見ると、カイルがひとり、小枝を足元に集めている。
「どうしたの?」
何か急いでいる風のハロルドに首を傾げて、カイルが言った。
「ジューダスは?」
質問に質問で返されても、気を悪くしたりしないカイルは素直に、まだ水汲んでるよ、と答えた。
ほっと息をつき、カイルに言う。
「あんたは、小枝拾ったら帰んなさい。水は私たちが運ぶから。
リアラが桃を食べないで待ってたわよ。」
「え、ホント?」
ぱっと、一瞬で明るく、カイルが笑う。
それを見て、ハロルドは、この子は本当になんて素直なんだろう、と思った。
それに比べて私は、なんて面倒な大人になってしまったんだろう、と。


 カイルの指差した方向へと歩んでいくと、川に向かって、かがんでいる黒いマントの背中が見えた。
その背に、木々の間からのこぼれ陽が、ちらちらと揺れる、模様を描いていた。

 ハロルドは、とんとんと地面を蹴った。
その音に気がついて、ジューダスが体を起こす。
ふり返って、ハロルドの姿を確認すると、少しだけ目を細め、お前か、と言った。
「カイルはどうした?」
せっかく自分が来たというのに、まずそれかと思い、少しだけ面白くなかったが、ハロルドは答えた。
「帰らせたわよー。」
「何でだ?」
「私が代わりに水を持っていくから良いじゃない♪」
なんでまた、カイルの代わりが力の弱いおまえなんだ、とジューダスはため息をつく。
だが、ハロルドは、そんなジューダスのため息など興味がない。
「それで、はい。」
「・・・・なんだ?」
「桃よー。見ての通り。一緒に食べましょ♪」
両手に持っている桃を、ジューダスに差し出すと、ジューダスはむっつりとした表情で、ハロルドの顔を見返す。
「・・・・・どうしてだ?」
「何の事?」
ハロルドは笑う。
それは、先刻の自分への問いかけと同じだ。


 実験だとかデータだとか。
どうしてそんな事を思ったのだろう。
行動の為に理由を探すなど、意味がないことこの上ない。
データ採取が終わったって、続けるものがあったって良いじゃない。


 「あんたと食べたかったの。だから持ってきたの。それが変?」
「いや。」
ジューダスがめずらしく、即答した。
いつもはこういうことを言うと、戸惑うくせに妙だな、とハロルドが思っていると、ジューダスは皮肉気に笑い、
「変だったのは、最近のお前の態度の方だ。」
と言った。
それって・・・とハロルドが言いかけると、ジューダスはハロルドの右手から桃を取り、水を汲んだ水筒はそこに置いたまま、木の根元へと歩いていく。
数歩進み、そこに立ったままのハロルドを振り返った表情は、不思議そうだった。


 ハロルドは笑いを噛み殺し、その背を追いかけて、桃を握らないように気をつけながら、地面を蹴った。

 桃を食べているときに、聞いてやろう。


 「私があんたを追いかけないのが、そんなに不思議なの?」

     






 

 

 

fin

 

                       


「++十字路++」の蒼桐さまへの捧げ物。 これは、蒼桐さまの可愛らしく、かつ花の咲くような色付けのイラストを拝見していたら、「桃」のイメージが湧いてきて、書いた物ですが・・不必要に長いです。