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 「おはよう、ハロルド。どうしたの?目、赤いね。」
ナナリーが朝一番に顔を合わせたとたん、そう言った。
仲間の体調を常に気をかけている、彼女らしい。
ハロルドは微笑を浮かべる。
「うーん。このところ、よく寝られなかったから。」
そう言いながら、ナナリーの後ろで、黙って朝食を取っている、仮面の横顔を盗み見る。
あいかわらずの無表情は、ハロルドたちの会話を聞いてもいないのか、チラリとも視線を動かす事はなかった。
「さては、遊びすぎたね?」
ナナリーでなくとも、ハロルドがカジノに通い詰めている事は知っていた。
「お前、よくそう、毎日毎日行くよな?」
そう言ったのはロニだ。
最初のうちは、カジノにも遊びに行っていたロニだが、飽きたのか、この頃は夜に外へ出る事もなくなっていた。
「だって、良い研究になるんだもーん。」
「・・・・・は?」
一同は疑問の声をあげる。
カジノというのは、お金をかけて遊ぶ所のはずだが。

 「人間っていうのは、お金が関わると、ついつい本性を出しやすくなるもんなのよ。まあ、人間の精神構造研究の視点から見ても、良いデータが取れるって訳。それで、お金も儲かるし、まさに一石二鳥よねー。くふふー。」
いつものように、節をつけた口調でハロルドは、訳が分かるような分からないような微妙は発言をする。
すでにそれに慣れている一同も、それぞれ、ふうんとか、そうなんだーとあきらかに適当だと分かるようなあいづちを返す。
ただ、ひとりを除いては。

 そのひとりを、ハロルドは右目を細くして見据える。
自分の方を見るまでは、許さないつもりで、じっと見る。
けれど、黙々と食事を続けるその相手は、自分など始めからいないかのように、関心を示さない。
その仕草のひとつひとつを、ハロルドは見る。
パンを千切って口へと運び、嚥下するごとに喉が上下に動く。
皿の上をすべる指は、細く長い。
剣を振るうには頼りなく見えたその手も、触れてみれば、意外としっかりした男の手をしていた。
体も、細身のわりにしっかりと筋肉がついていて・・・・・・。
カァ・・・といきなりハロルドの体温が上がる。
「ハロルド?」
ナナリーが不思議そうにハロルドを見た。
「あんた、大丈夫なのかい?今度は顔が真っ赤だけど。」
「大丈夫よ・・。」
ハロルドは、思わず下を向き、両手で顔を隠す。
その瞬間、椅子から立ち上がる音がした。
「あれ?ジューダス、もう良いの?」
「ああ。」
カイルの言葉に返事を返した後、足音は食堂から出て行った。
そのまま、それは遠ざかっていく。

 結局、1度もジューダスは、ハロルドを見なかった。








 日が沈んでから、ジューダスは椅子にかけてあったマントを手に取った。
まだ、宵の口と呼ばれる時間だ。
帰ってくるハロルドの為に明かりは灯しておく。
ふと、ため息をもらす。
それはたぶん、自分へのため息だ。
こんな事を続ける自分はきっと、笑えるだろう。
そう自嘲的に考え、ドアのノブに手をかけた。



 「・・・・・!」
開けたドアの向こうに、ハロルドが立っていた。
大きな紫の瞳が、ジューダスを見据える。
何かを言うかと思ったが、ハロルドは何も言わず、表情も変えずに立ったままでいる。
「・・・出掛けたのではないのか?」
平静を装った口調でジューダスが言った。
「・・・出掛ける、と言った覚えは今日はないわ。」
その声はあきらかに、怒りを含んでいる。
その怒りの相手はたぶん、自分なのだろうとジューダスは思った。
「僕に何か用か?」
「用がなきゃ来ないわ。」
ジューダスを押すように部屋に入り、ドアを閉める。


 その瞬間、ハロルドの平手打ちがとんできた。

 
 「いったーーーーい!!なんなのよ、もう!!」
「・・・殴られたのは僕だぞ?」
人を殴っておいて、自分が痛がっているハロルドに、怒る気にもなれず、ジューダスは呆れた。
「そのお面にあたったのよ!なんなのよ、それ!!」
「・・・・・。」
手のひらをヒラヒラ振りながら怒るハロルドに、ジューダスは手を差し出した。
「・・・見せてみろ。」
そう言って、小さな手を開かせる。
赤くはなっているが、出血はないようだ。
ほっとして顔をあげると、ハロルドと視線がぶつかった。
「なんで、ここ数日、部屋にいないの?」
ハロルドが言った。
「何か私に文句があるなら、はっきりと口で言いなさいよ。」
「・・・文句などない。」
ハロルドは、ジューダスの言葉など、取り合う気はないようだった。
「そう?私には、不満だらけって顔に見えるけど?私はね、遠まわしな態度を取られるのが、大っ嫌いなの。あてつけがましく、人の気を引こうとするのなんかやめたら?」
その言葉に、ジューダスの体温は、すっと下がった。

 こうやって人を見下す。
何もかも知っている顔でかき回す。

 その瞬間、全てが嫌になった。
いつも我が物顔で、ふるまうハロルドも。
それに振り回されるバカみたいな自分も。

 いっそ、全て壊れればよい。
それで、せいせいするだろう。
もう二度と、煩わされずにすむだろう。


 ジューダスは、ハロルドを冷たく見下ろすと、先程、心配したその手を振り払うように、空に放した。
そのまま一歩、ハロルドから遠ざかる。
「なら、言おう。」
「何よ?」
「出て行け。」
まっすぐにドアを指差す。
「僕は自分の部屋に他人を入れるのが好きじゃない。特に・・・嫌いな人間は。」
今度は、ハロルドの体温が下がった。
「何よ、それ。」
一瞬、言葉を詰まらせる。
「嫌いな人間って、それ、私の事・・・?私は・・・。」
「出て行け、と言ったのが聞こえなかったか?」
「嘘よ。」
「・・・何がだ?」
冷たく自分を見下ろすジューダスを見て、すっかり色を失ったハロルドの唇が、何か言おうと動いたのが見えた。
けれど、言葉にはならず、うつむいた彼女は、もう1度、聞き取れないような小さな声で、
「・・・嘘よ・・・。」
と言った。
「嘘など言わない。」
「・・・・・・。」
「だから、出て行け。」


 嘘ではない。
ハロルドを好きな訳ではない。
だけど、嫌いな訳でもない。
だから、それは嘘だ。

 ハロルドは、ジューダスの言うまま、部屋を出て行った。
閉じたドアの向こうからは、足音は聞こえなかった。
けれど、ハロルドはいつも、足音を立てないから。
果たして、ハロルドがいつまで部屋の外にいたのか、ジューダスには分からなかった。









 昼と夜の顔を、ハロルドは使い分けている。


 次の朝、顔を合わせてみれば、あいかわらずの口調でにっこり笑い、
「おはよう、ジューダス。」
これだった。

 傷つけてしまっただろうか、と少しだけ後悔していた自分がバカらしい。
たぶん、ハロルドには人の言葉など、そのまま伝わらないのだ。
もしくは・・・
「僕に嫌われてても、痛くも痒くもないか、だな。」





 いつものように、外で時間を潰し、戻ってきた時、夜半はとうに過ぎていた。
昼間のあの調子では、今日はどうでるか分からないと思い、一応、窓の鍵は空けておいた。
出かけていたとしたら、どっくに帰ってきただろう。
そう思い、ジューダスは自分の部屋のドアノブに手を伸ばした。
と。
「あーちょい、待ち!ジューダス!」
「なんだ?」
夜中だというのに、廊下の向こうから大声でナナリーがジューダスを呼び止め、足早に近づいてくると、いきなり指をさして言う。
「休むんなら、その前に、ハロルドを迎えに行ってくんない?」
「ハロルド?」
ジューダスは眉をひそめて、ナナリーを見た。
「まだ、帰ってきてないのか?」
「うん。」
「・・・ほっとけ。そのうち戻るだろう。」
そう言って、自分の部屋に戻ろうとすると、ナナリーはすい、と手を伸ばして、ジューダスが開けかけたドアを押し戻した。
「たぶん、あんたが迎えに行かないと戻らないと思うよ?」
いきなりのその言葉に、ジューダスはナナリーを見る。
ナナリーは少しだけ笑い返す。
何かの暗示だろうか。
「どうしてだ?」
「おや。」
ジューダスが問うと、ナナリーは意味深に笑った。
「心当たりがないってのかい?」
「・・・・・・。」
「つれないねぇ。」
赤いおさげ髪を揺らし、ナナリーはジューダスの顔を覗き込む。
逃げる必要もないのに、ジューダスは、その視線をさけるように顔を背ける。
「昨日の夜、窓を覗いたら、調度、ハロルドが庭に出てた。」
「それで?」
「この寒いのに、又遊びに行くのかって呆れてたら、ハロルドはその2時間後、帰ってきた。どうやら、昨日は遊びに行かなかったらしい。そのうえ、ずっと外にいたらしくって、冷え切った体で目は真っ赤。これ、誰のせい?」
「・・・それは・・・。」
ジューダスはそのまま、言葉を濁す。
「それとこれは、数日前。」
「まだ、あるのか?」
ジューダスの言葉には答えず、ナナリーは節をつけて歌うように言った。
どうやら、ハロルドの真似らしい。
「いつものように、ハロルドは外へ。でもその日はいつもと違ってた。いつもなら、夜半過ぎには帰ってくるのに、その日にかぎって朝帰り。しかも、どこでつけたやら、この・・・。」
ナナリーはいきなり、ジューダスのマントをぐいっと引いた。
突然の事で、ジューダスは危うく倒れそうになる。
「あんたと同じ、香りをさせてね。あたしの言ってる意味、分かるだろ?」

最近、ジューダスのマントに、モンスター除けになるというハーヴの匂いをつけたのは、ナナリーだ。
それ故に、この香りをナナリーはよく知っている。

 動揺を隠しきれなかった自分を、ジューダスは呪った。
その顔を見て、ナナリーは笑う。
「やっぱりね。」
思わず、ジューダスは片手で、すでに半分は仮面で隠れている自分の顔を隠した。
これ以上、表情を読まれるような失態をしたくない。
「そういう訳。じゃ、お迎えヨロシク★」
ナナリーは、それ以上追求するようなマネはせず、後をジューダスにまかせて、自分の部屋へとあがっていった。
とり残されたジューダスには、反論する相手すら、すでにいない。




 どうしたものか・・・。
自分の部屋の扉に寄りかかり、ジューダスは考える。
ナナリーが言うように、本当にハロルドが、自分が行くまで戻らない、とは限らない。
ましてや、自分が行ったからと言って、素直に戻るとも思えない。
躊躇っているジューダスの頭に、先程のナナリーの言葉が、ふいに浮かんできた。

 『冷え切った体で、目は真っ赤。誰のせい?』

 ジューダスは扉から身を起こし、物音をたてないように、そっと宿を抜け出した。











 カジノ、というだけあってそこは、やたらと派手な看板と、大勢の人の熱気があふれていた。
町中、あちらこちらに明かりが点り、まるで昼間だ。
ほんの少ししか離れていないのに、自分たちの宿がある町とは、あまりにも違いすぎる。


 町に入ったもの、カジノが多すぎて、どこから探した良いのか、途方に暮れそうになる。
とりあえず、端からのぞくしかないか、と覚悟を決めた時、町の門番に呼び止められた。
「悪いんだけど、お客さん。ここから先は、武器を持って入れないんだが。」
「・・・治安の為か?」
「そうさ。金が絡むと頭に血がのぼるヤツが多くっていけねぇや。それと、それもだ。」
「・・・この仮面、か。」
「顔の見えねぇ者は、全部脱いで貰うのが決まりでな。」
「そうか。」
そういう理由なら仕方がない、と割り切って、ジューダスは仮面を外した。
どうせ、ここで顔をさらしても、誰の記憶に残る訳でもないだろう。
武器と仮面を門番に渡すと、ジューダスは町の中へと踏み込んだ。


 目的の人物はなかなか見つからなかった。
どこの店も、喧騒に近いほどのざわめきと、スロットのジャラジャラした音で、頭が痛くなりそうだった。
空気はよどみ、薄く煙草の煙で白い靄がかかり、のども痛くなる。
なんなんだ、ここは、とジューダスは毒でも飲まされているような気分になって、舌打ちした。
あいつは、こんなところのどこが、夢中になるほど面白いのだろう。
しかも、人を探すには、あまり適した場所でもなく、次々と人にぶつかって行く手を遮られては、無駄に時間だけが過ぎていく。
しかし、そのうち、なんとなくだが、ジューダスにも分かってきた事があった。
この騒々しさと、刺激的な賭け事。
人々の表情は、酔ったように緩んでいる。
ここに来る人々は、たぶん、一時期忘れたいのだ。
今、この場は現実世界と違うものになっている。
日常の自分と今の自分を切り離し、この仮想の現実に陶酔しているのだろう。

 そんな事を考えながら、奥へと目を走らせ、ジューダスは足を止めた。

 スロット台の陰に、黒い服と、薔薇色の髪が揺れているのが見えた。

 一歩、近づく度に、スロットの陰から、だんだんと姿を現わしてくる。


 ハロルドは、いつか着ていた黒いミニのワンピースを着ていた。
シルクの手袋こそしてないが、網タイツとハイヒールも前の時と一緒だ。
丸いツールに腰かけ、たいして面白くもなさそうにスロットのレバーを下げている。
目はスロット台に向いているが、煙草を吸っていた。
それは意外だったが、それよりも、その姿から目が離せない。
こんな場所にいると、まるで品性のかけらもない。
そう心の中で、毒づきながらも、まるで磁石に吸い寄せられているかのように、視線をずらす事ができない。
こいつを、カクテルで酔わせようとしたヤツの気持ちが少しは分かる、とそんな考えがふいに浮かび、ジューダスは自分でも可笑しくなった。


 ふと、ハロルドの視線がこちらを向いた。
立っているジューダスに気付く。

 
 「あら。」
何の表情も変えず、ハロルドが言う。
「誰かと思ったら。およそ似つかわしくない所で、お目にかかれて光栄だわ、何しに来たの?」
それは、結構、予想通りの反応だった。
くすり、と笑うジューダスを見て、ハロルドの方は予想外だったのか、憮然とした顔で、視線をそらした。
「勝ってるのか?」
隣に行き、話しかける。
「いいえ。」
「それで、そんなぶっちょう面しているのか?」
「あのねー!」
イライラした声で、ハロルドはツールから立ち上がった。
けれど、振り向いて見たジューダスの顔には、あいかわらず微笑が浮かんでいて、それで調子が狂うのか、続きの言葉を飲み込んだ。
ふたたび、ツールに腰かけ、スロットに向き合う。
小声でハロルドが、この私がしてやられるなんて・・・とぶつぶつ言った。

 「それを全部、使い切ったら帰るぞ。」
スロットマシーンの受け皿に散らばっているコインを指差し、ジューダスが言った。
「帰る?」
「そうだ。いつまでも、ここにいる訳でもないだろう?」
「いても良いわよ?私は別に。」
ハロルドの言葉にジューダスは笑う。
「子供か?お前は。」
むーっと、ハロルドがふくれたのが、スロットのガラスに映って見えた。
それを見て、ジューダスは再び、ひっそりと笑う。
「帰らないって言ったら、どうするのよ?」
ツールに腰かけたまま、くるりと体をこちらに向けて、ハロルドがジューダスを見上げる。
「私を無理矢理ひっぱって連れて帰る?それとも、ここにほっとく?」
「ああ。」
「どっちの、ああ?」
「無理矢理にでも連れて帰る。」
「へえ?」
ハロルドが目をすがめてジューダスを見ると、挑戦的な笑みを浮かべた。
それは、いつもの童女のような彼女の笑みとは違い、大人びていて、妖艶なほどだった。
「それでどうするの?」
立ち上がったハロルドは、ジューダスの腕に手をかける。
「部屋に連れ帰って、それからどうするの?宿から出ないように閉じ込める?でも私は、また抜け出すわよ?わけないもの。それとも拘束でもする?どうやって?部屋に鍵でもかける?それとも、いつかみたいにベッドにでも連れ込む気?そしたら、逃げられないものね?」
「ああ。」
「どの、ああ、よ?」
「全部だ。」
その時、いきなりハロルドはジューダスの腕を掴んでいた手を離した。
一瞬、殴られるかと思ったが、固まったかのように、ジューダスを見上げたまま動かない。
「・・・・・おい?」
見る見るうちに、ハロルドの顔が真っ赤になっていく。
顔だけでなく、耳も首も真っ赤だ。
「自分で言っておいて照れるな。」
なんだか、こっちまで恥ずかしくなって、ジューダスが言った。
ハロルドはジューダスの視線から逃れようと、顔をうつむけた。
黒いドレスの襟から、真っ赤な首筋がのぞいている。
「だって・・・・。」
うつむいたまま、くぐもった声でハロルドは言う。
「そんな返事するとは、予想外だったのよ。てっきり・・・黙って腕をひっぱってくか、怒るかすると思ってた・・・。」

 いつも、人を振り回す迷惑な女だが、こうしている姿はまるで、少女だ。
このギャップが見ていて飽きない。
まるで、猫の目のようにくるくると表情を変える。しかも、子猫。
さらに、子猫の持つ可愛らしさと、しなやかな色っぽさも兼ね備えてる。

 ジューダスは笑った。
「ちょっと何、笑ってんのよー!?」
「いや。」
一瞬、本気で可愛いなどと思ってしまった、不覚な自分が可笑しい。
「何よ!もう!」
ハロルドは照れと怒りとで、真っ赤になったまま、ジューダスに背を向け、スロットを再開した。
「じゃあ、しょーがないから、帰ってあげるわよ!これ、使い切ったらね!」
コインを1枚づつ入れてはガシャンとやりながら、こっちを見もせず、まくしたてる姿がやはり可愛い。
「ああ。気がすむまでやれ。」
そう言ってジューダスは、ふと、落ちていたコインを1枚拾うと、ハロルドがレバーを押すタイミングをぬって、スロットに入れた。
その途端・・・・ジャラジャラジャラ!と今までにない大きな音。
「な・・・・っ!」
それを確認したとたん、
「なにすんのよーーーー!!!」
ハロルドは怒鳴った。












 「あー、朝日がまぶしいわ・・・。」
「そうだな・・・。」


 結局、帰りは朝である。
あの時、ジューダスが入れたコインで、スロットは大当たりを出した。
挙句、帰りそびれ、今に至る。


 「だいたいねー。」
顔を出した朝日に、冷たい空気が熱せられ、空に立ち昇っていく気配がしていた。
遠くで小鳥が鳴き、草は朝露で靴を濡らしていく。
「迎えにくるなら、もっと早く来なさいよ!どこでグズグズしてたのよ!」
完全に人のせいにするハロルドに、ジューダスもむっとなる。
「こっちはお前を探して、店を一軒一軒回ってたんだ。探しに来て欲しいなら、もっと分かり易いところにいろ。こっちの方が良い迷惑だ。」
「探しに来いなんて言ってないっしょー!」
その場で地団太を踏んで、ハロルドが叫ぶ。
「もう!あんたって、仮面かぶっている時と脱いでる時は別人ね!素顔の時は隠すものがなくて、開き直ってるんだか知らないけど、そっちのほうがよっぽど素直じゃない!」
「そうか。それは気付かなかった。」
しれっと言われ、ハロルドはキーキー、悔しがっていた。

 
 まるで、子供だ。
とジューダスは笑う。
けれど、こんな風に子供のような反応を返される相手は、自分だけだという事に、彼が気付くのは、もっとずっと後の事だった。

 
 「ハロルド。」
カジノで気にかかってた事を思い出し、ジューダスは前を行くハロルドを呼び止めた。
「なによー?」
「煙草はやめろ。」
「え。」
きょとんと、ハロルドはジューダスを見る。
「ああ、あれ?ちょっと吸ってみただけよ。何、あんた煙草の煙、嫌いなの?」
「味が嫌いだ。苦いからな。」
「おこちゃまねー。でも別に私が吸ってても、味は関係ないでしょ?」
「そうでもない。」
ジューダスは笑い、一歩、前に出るとハロルドの腕を掴んだ。
「な・・なによ?」
何事かと焦るハロルドのあごに指をかけて、上を向かせると、
「こういう時にな。」
キスをした。


 「あー、なるほど。」
唇を離すとハロルドは、目を輝かせ、ふむふむと納得する。
「あーあ、やっぱ。惜しいことしたかも。」
「何だ?」
ハロルドはにっこりと笑い、その顔には言う事と違って、健全さがあふれていた。
「あの時、当たらなければ、今頃はあんたと一緒のベッドに入って宿で眠ってたのにな〜と思ってさ。」
当然のように言われ、今度はジューダスが赤くなる。
その反応に気を良くしたように、うふふ、と笑うとハロルドは言った。


 「あんたって面白いわよね。大人ぶってても子供だし、クールかと思うと、いきなり積極的になったりするし。まるで、猫ね!」
「・・・・・猫、か。」
複雑な心境のジューダスの言葉を、どう取ったのかは分からないが、ハロルドは嬉しそうに笑い、魅力的にウィンクをひとつ、投げかけた。

 「そう、猫、よ。」







Fin   



昔風、少女漫画・・・・勝手にケンカして勝手に騒いで勝手に仲直り・・・。
しかも、お互いがどう思ってるのかは、結局あやふやなまま。 まあ、日本独特の、あやふやな文化も良いかな〜って事で(意味不明)
ところで・・・・ハロがジュダに泣かされたりしてますが・・・。 これに関してある方から(それ以外の方からも!)お叱りの言葉を受けないか、非常に不安です・・・。 すみませんすみません(汗) 先に謝っておきます(汗)