episode 2(ジェイド&ガイ&ルーク optionアッシュ)
アニスの背が少しだけ伸びた。
それまで宿での部屋着にしていたワンピースの丈が短くなって、新調したいとアニスが言い出したことで、女3人は買出しに行き、残された男達は、手もち無沙汰になったが、大人しく待っていても暇なので、情報収集も兼ねて、出店を冷やかしに宿を出た。
「しかし、めっずらしいな〜アニスが、服買いたいなんて。」
ルークが本気で感心したように言ったのを聞いて、ガイは苦笑する。
「そりゃ、しかたないだろう?小さくなったもんは。」
「小さくたって着られるうちは、着たおす!とかいいそうじゃね?アニスなら。」
「それはそうだが・・・ものにはそれで通せることと、通せないことってのがあってだな。」
「通せないこと、なのか?」
ワンピースの丈が短くなったくらいで?と小首を傾げ、本当になにも分かっていない風にルークが聞くのを、は〜と溜息をついてガイは頭を抱えた。
「いいか、ルーク。女の子の着るものは、男のそれと必ずしも用途は一緒じゃない。」
「・・・うん?」
「スカートの丈が短くなれば、それ相応に問題点がでてくるじゃないか?」
「問題って?」
「それは・・・えっと・・・。」
今更ながらにガイは言葉に詰まった。
貴族社会で育った以前に、ルークにはそういう概念はない。
生まれてこの方、幼少の記憶も傍にいる幼い女の子もなかったルークに対して、スカートめくりの定義を持ち出したところで、納得するとは思えなかった。
つまりは、とそれまで黙ってみていたジェイドが言った。
「アニスもいつまでも子供ではない、ということですよ。」
「へ?」
ますますもって分からない。
そういう目をするルークに、まあルークにはまだ早すぎますかね、とジェイドはからかいの言葉を口にする。
気がついたルークはムッとして
「子供じゃなくなるとどうなるんだ?」
と聞き返した。意地のようなものだ。
「子供じゃないということはですね。」
それを感じてジェイドは薄く(若干暗く)笑い、
「恋をします。」
と答えた。
「恋?」
「ええ、恋です。先に言っておきますが、池の鯉とは違いますよ?」
そ、そんなんわかるバカにすんなっ!とルークは叫んだ後、けどなぁ、と釈然としない様子で聞き返す。
「子供じゃ恋はできないものなのかよ?」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
大人ふたりは目を丸くする。
「・・・時々、真理をつくねぇ、お前は・・・。」
「え?」
なるほど、とジェイドは言った。
「・・・7歳児も恋ができますからね。アッシュにそう伝えたらどうですか?」
げ、と言葉につまるガイとは対照的に、目を丸く、首を傾げてルークはジェイドに聞き返す。
「なんでアッシュがでてくんだ?」
「おやおや〜。」
ジェイドは人の悪い笑みを浮かべる。
「そこまで言っておいて・・・分かってないところが流石ですね〜。この子供は・・・というよりも、子犬、ですか。」
「おいおい、だんな。」
「なんで俺が犬なんだよ!」
自分のことだとすぐに察したルークがジェイドに対して声をあげたが、つい語尾に、がうっとついてしまうあたりがすでに子犬である。
「なぜって、あなたの言葉なんて、まさに犬の鳴き声ですからね〜。Aから始まってHで終わる。いつもそればかりです。」
「なに!」
「アッシュ、アッシュ、アッシュ〜!」
「・・・・・っ!」
その瞬間、ぼっと音をたてそうな勢いで、急激にルークの顔は赤くなった。
耳まで燃え尽きそうな赤さである。
「おや、本気で今まで自覚なかったんですか。」
半ば呆れたように、今まさに恋を自覚した子供の様子を楽しそうに眺め、ジェイドは笑う。
横でガイは、あああ、と奇声をあげながら、頭を抱えて地面にへばりついた。
「って・・・いてててて!」
「おや、もしかしてアッシュですか?グッドタイミングですねv」
「うるせっ、そんなんじゃ・・・。」
「おや?違うのですか?そうですね、アッシュがあなたにそんなに頻繁に連絡してくる訳もないですし。」
「・・・・・(泣)」
「まあ、彼はあなたになんて用はないでしょうから。」
「う・・うるせー!黙ってろ・・・!あ、アッシュだっ!良かった・・・。」
「おや。」
「いや、今ジェイドのやつが・・・は?あ、いやそういう訳じゃねーから。うん。べっ別にお前からの連絡を待っていたとか、そういうんじゃないし・・・。は?何を言ってるって?そ、そうだよな、俺、なに言ってんだろう?」
(’08 10/21)
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