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田舎暮らしご馳走帖 あおいの「村と農」大食い日記
著者名 : 杉山あおい&杉山彰
出版社 : 無明舎出版
発行年 : 2003.2
N D C : 596
ひとこと : かなり楽しい人生。
 1999年10月3日、結婚の二日後に埼玉県から秋田県東成瀬村に移住した杉山夫妻は 2000年6月にホームページ「東成瀬通信んだすか。」を開設した。そこからあおいさんの食べもの日記、彰さんのコラムをまとめたものが本書である。
  二人の生業は農業であるから収入は押して知るべし、生活は楽ではない。どうせなら雪国より年がら年中食べものに満ち溢れた南国が移住先として妥当ではなかったろうか(わたしの希望でもある。雪に埋もれるのが大好きなのでとてもむずかしい)。しかし、悪戦苦闘しながらもこの若夫婦はへこたれない。互いへの思いやりを忘れない。喜びを見落とさない。そして何よりとても可笑しいのだ、あおいさんの食べっぷりとそれをぼーぜんと見守る彰さんが。
  コラム「妻の食べっぷり」から引用してみよう。
  「甘いものを食べた後に口直し、などと言う発想は彼女にはない。ただひたすらに、まんじゅうなどを連続的にたんたんと食べるのがあおい流だった。」
  「引っこ抜いたニンジンが細かったりすると、用水路で洗ってそのままバリバリ食ってしまっているのだ。」
  「植えつけた種イモの間に発酵肥料を入れていく。甘酒のような芳香が漂う。ハッとあおいの方に目をやる。――が、もうすでに時遅く、あおいの口がモグモグと動いている。」
  餅好きの彰さんが体験した「モチまき」も面白い。
  「特に、おばあさんはモチが来ると非常に機敏な動きで拾っていく。意外だった。腰があらかじめ曲がっているのも、落ちたモチに対して有効なようだった。」
 最後にあおいさんが書いている。
 「ところが、食事を共にする人というのは重要だったらしく、彰が「うまい、うまい」 と言って、ナス炒めに玄米を食べているのを見ていると、私もそれが一番おいしいものの気がしてきて、すぐに彰と一緒に「うまい、うまい」とご飯をおかわりして食べるようになったのである。」
 「ご飯がおいしければ、人生はかなり楽しい。」
 面白い本が読めると、人生はかなり楽しい。
 
(ソーダ)