HOME   著者分類 ひとこと おすすめ
ああ言えばこう(嫁)行く
ああ言えばこう食う
著者名 : 阿川佐和子檀ふみ
出版社 : 集英社
発行年 : 1998.9、2000.9
N D C : 914
ひとこと : 嫁かずで悪いか!
テレビや週刊誌といったメディアで颯爽と活躍するエッセイストと女優でありながら、 自分たちを「いつまでたっても結婚できない(しない)二人」というネタと化すことによって、ある種コンビ芸の域に達しているアガワサワコとダンフミ。 前者はそんな二人の「わたしたちはいかにして独身となりしか」について、後者は食にまつわるエピソードについて語った往復エッセイ。

30代未婚子なし女性を「負け犬」と定義した本が話題になっている昨今、わたしもまた三十過ぎた女が独身でいることの「ゆるぐねえ」(※)状態を身をもって経験している一人なのだが、これがまあ予想以上にいろいろあるんである。 家父長制を当然のごとく前提とした、婚姻制度の中に入れという有形無形の圧力。 言ってることが平気で矛盾しているが、自分が制度の中にいないことの不安。(それは制度の中にいる不満の裏面でもあるのだが。) ことあるごとに実感する親の高齢化、自分が子を産める生物学上のリミットまでのカウントダウン。その他もろもろ、まあ面倒くさいのなんの。

こんなものの比ではない数々の嵐を乗り越えてきたであろう二人は、しかし、こうした女が独身でいることにまつわるしんどさや面倒臭さを、さらっと流して笑い話に変えていくのだ。お互いの見合いや食べ物にまつわる失敗談を、あっけらかんと暴露し、罵倒し、「そんなわけで結婚できなかったのよー」という持ちネタで落とすなかでも、二人の持ち前の品のよさが漂う。 この、笑いと罵倒と品のよさの絶妙なバランスこそが、この二人組による往復エッセイの真骨頂!なんじゃないでしょうか。

(※「緩くない」を意味する秋田県南部の方言。社会通念やしがらみで心身ともに窮屈きわまりない状態とでもいうか…)
(は)