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王妃の離婚
著者名 : 佐藤賢一
出版社 : 集英社
発行年 : 1999.2
N D C : 913
ひとこと : すかっと!。

 15世紀末、フランス国王ルイ12世は教会に離婚を申し立てた。王妃ジャンヌは抗戦の構えをみせるが、弁護人は権力者を恐れ、判事は権力者にへつらい、弁護側の証人さえも国王側に寝返るありさま。王妃は自分の元侍女の恋人だった弁護士フランソワに弁護を依頼するが、王妃の父ルイ11世は若きフランソワから学究の輝かしい未来を奪い、パリを追放した張本人だった。その娘の弁護などできるはずがない。
 審理は王妃が絶対不利のまま一方的に進められ、とうとう検察側は王妃の処女検査を求める。拒めば裁判に破れ、受け入れても辱めを受けたあげく偽証によって裁判は決着するだろう。稚拙な論理の上に請求された検査にもかかわらず、戦意のない弁護団に同じ弁護士として苛立つフランソワ。わずかな望みを賭けて新弁護人を求める王妃。
 「インテリは権力に屈してはならない。意味がなくとも、常に逆らわねばならない」
 長い逡巡の果て、ついにフランソワは新弁護人の名乗りを上げる。

 フランソワは偏屈だが熱い男である。落伍者だが縦横に才気を活かすことができる弁護士という職業を天職とも思っている。法という名の正義を行うため、英知を武器に権力者に敢然と立ち向かう男でもある。
 そんな男が法廷を我がものとして審理を逆転させていく様はまさに圧巻、胸のすく法廷劇であり、一人の男と一人の女の再生の物語でもある。

 

(ソーダ)