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パプリカ
著者名 : 筒井康隆
出版社 : 中央公論社
発行年 : 1993.9
N D C : 913
ひとこと : 「パプリカ」=男たちの「アニマ」。
人が眠りながら見る夢を、スキャニングし、自由に録画・再生して精神医療に利用できる「サイコセラピー機器」。その共同発明でノーベル医学生理学賞の有力候補ともなっている、若く美貌の精神医学者、千葉敦子。

彼女のもうひとつの顔は、立場上、精神分析治療を受けていることを公にしたくない人の夢に潜り込んで治療を施す、少女パプリカ。
その能力と美貌ゆえに勤務先の精神医学研究所の勢力争いに巻き込まれ、やがて夢が現実の領域を侵食し始める…。

魅力的な設定と人物、圧倒的な展開でどんどん読ませる。
禍々しくもなつかしい、深層心理を露わにする蟲惑的な夢の描写や、スラップスティックな様相を呈する後半部もさすがの筒井節。
パプリカが、少しばかり中高年男性に都合の良い人物造型ではあるけれど、 それはまあ、パプリカこそが男たちの「アニマ」(※)ということで。

(※ユングは夢分析の際に,男性の夢に特徴的な女性像が多く出現することに注目して,そのような女性像の元型が,男性たちの共通のイメージ(普遍的無意識)に存在すると仮定し,それを「アニマ」と名づけた。女性の場合の男性像の元型は「アニムス」。)
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