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  都会のベランダで花を愛でるベランダーの手記である。
  単行本を持ってるにもかかわらず文庫も購入。追加の章にふらふら誘われた。いや、なくても買うかも。何度も読んだ本だけれど、記憶力がめきめき後退してるおかげで楽しく再読した。やっぱり好きだな、いとうせいこう。どこらへんが好きかって、宇宙の果てまで飛んでいっちゃいそうな思考力がなんといっても好き好き大好き。普通の人は道端に転がっていたアロエを宇宙から来たとか考えないしね。植物に対する擬人化が妙に的を得ていて笑わせてくれるし。その植物たちに深い愛情を注ぎ、栄枯盛衰に一喜一憂、右往左往するあたりがほほえましい。そして言う。
  「内的にも日々変わり続けること。どのような条件下においてもそれに対応し、しかしながら結局のところ最初から決まった形の花を咲かせてみせること。鉢を次々に買い足しながらも、俺はその植物独自の強さをみたいのだなと感じる」
  なるほどその繰り返しは人間も同じことだしな。わたしは人間独自の強さが見たくて本を読んでいる。かもしれない。

 

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