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 物語は17世紀、北九州。秀吉に強制連行されながらも根をおろし、隆盛を誇る龍窯を築き上げた朝鮮人陶工の長が亡くなった。二代を継ぐ息子は日本に溶け込むべく日本式の弔いを主張するが、その母・百婆はクニの弔いをするといって譲らない。時代は島原の乱を経て檀家制が敷かれており、既にクニの弔いは許されないのだ。しかし、死者は正しく葬られれば家を守る神となって永遠に生き続け、一族一門に果報をもたらすのである。母と子の真っ向勝負はどちらに軍配が上がるのか。

 百婆は夫とともに渡来陶工七百人を束ねてきた女である。激しい気性の下に知恵も行動力も備えていて、息子と寺を向こうに回した駆け引きは胸のすく活躍ぶりだ。文化の違いは百婆に母子の乖離も予感させる重いものだが、おかしみに溢れた表現と百婆の力強さが読者を沈ませておかない。お葬式の話なのに時々大笑いしながら読了。

 

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