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  百年佳約。この美しいタイトルの小説が「龍秘御天歌」の続編だというのだから嬉しい。 百婆は死んでしまったが、念願叶ってちゃっかり一族の守り神となりおおせた。キセル片手に饅頭墓の上に腰かけて子孫を見守っているのだ。静かに死んでる場合ではない。いよいよ頑張らねばならぬ。一族の繁栄のために百婆は決意するのだ。それなのに百婆の息子が目論んだ子ども達の結婚話は百婆を激怒させるものだったから話はどんどん面白く転がってゆく。神さまは意外と力を持たなくて、こんなことなら恨みを抱いて死んで悪鬼になればよかったと悪態をつきつつ、孫や若者たちのために百婆は東奔西走するのだ。わたしは笑ったりどきどきしたりしながら読み終わり、最後に大空に向かってぶらんこをこぐ女たちの姿とこの文章が残った。
  「(守り神は)
力なくして、ただ愛の想いのみ溢れる霊魂にすぎなかった。」作家とは愛しい文章が書けるものだと思った。

 

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