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  また変な小説が出た。
  南條竹則と、魔法?・・・・・・有りか。
  主人公は、本人の弁によれば「吾輩は名利を求めぬ。俗流に媚びぬ。古人の書を友として、ただひたむきに詩の心を磨いてきた人間」である。加えればおばあちゃんに甘やかされて育った売れない詩人、定職に就かず、元大店の遺産を元手に悠々自適の詩人人生を送るべく株に手を出し、完敗したバカ旦那である。やむなく始めた探偵業が猫探しの才により猫専門となり、たまたま魔法杖「猿の手」を貰ったことで魔法探偵となるわけだ。ここで猫にゃん棒を思い出した方は同志。
  魔法探偵には怪しい人からの怪しい依頼ばかりやってくる。やはり道楽者である老医師の反魂の技にも助けられ、依頼は解決されたりされなかったり。魚雷戦ゲームや大阪万博など魔法探偵の思い出にからむ依頼は、作者の郷愁がひしひしと伝わってくる書きっぷりだ。しかもその思い出はおばあちゃんに愛されていた幸せな、しかしちょっぴり痛い思い出だ。ははははは。食い道楽も含め、作者の好きなものがぎゅぎゅっと詰まって、変だけど品のいい、さわやかな小説である。

 

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