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  文章も絵も心にしみる絵本。
  「ペンキや」は出久根育さん、「マジョモリ」は早川司寿乃さん、「蟹塚縁起」は木内達郎さんが絵を描いている。お話はもちろん面白い。文章ももちろんいい。作者は日常生活や言葉のひとつひとつ、人間に関わるすべての事物をとても大事にしてるんだと思う。わたしもそうありたい。その素敵なお話にことごとくぴったりな絵がついていてとても嬉しい絵本になっている。早川司寿乃さんの絵はなんといってもうつくしい。植物も人も物も風景も繊細でやわらかく、見ていて気持ちがいい。小さく描き込まれた人々につい喜んでしまう。木内達郎さんの絵は顔がのっぺらぼうで少しどきりとする。夜の間の物語だから暗めの色調だけれど、温かい筆づかいと黒や茶と必ずいっしょに使われている黄色が健やかさを醸し出している。蟹も見事。出久根育さんの絵は表紙でもうあやしげだなあと引いてしまった。でも読み進むにつれてこれほどぴったりの絵もないと思った。このペンキやさんが塗るペンキはお客さんの心の望みを汲み取ったペンキ。複雑な色合いの絵にものすごく納得した。
 三冊が三冊とも文と絵が共鳴してるかんじ、秋田県立図書館の蔵書なんだけどなかなか返せない。

 

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