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  多くの人に読まれている歌人で、会社では課長だそうである。この人が紹介してくれる短歌は心惹かれるものばかりなので歌集を読む機会がぐんと増えた。世界を広げてくれてありがとう。
  才能に恵まれ、順風満帆な人生を送ってきたように見えるが、エッセイを読むと恐ろしく不器用な人である。どうやって世界と交わったらいいかわからないまま、ひとりで立ち尽くしてきたようだ。時折登場する恋人とのやりとりもかみあわなくて切なくなる。自分からは働きかけることができず、他人から貰うなんでもない行為(好意)に胸を熱くする著者の姿にまた切なくなる。かと思えばしょうもないことを次から次へと考えているしょうもない人で、さらには自分も同じように考えていたりしてついついうなずいてしまう。よいことをするとプラスのポイントがたまってよい結果がもたらされ、悪いことをしてるとマイナスポイントがたまって悪いことがもたらされるんじゃあああ!?なんて考えてる小心が特に。さらに誰かがポイントを数えているのか、それとも自分の中に自動ポイントチェック機能が備えられていてプラスマイナスがしっかり数えられているのか等々、思考はなかなか止まらない。
  肝心なところを外さない文章は、短詩形文芸の資質というものだろうか。なんだか切なさが薄れて読みやすくなってきたなあ、と思うのは、著者の心情が変わってきたせいだろうか。
 「今はまだ人生のリハーサルだ。本番じゃない。そう思うことで、私は『今』のみじめさに耐えていた」
  それが、ひとつの出来事により本番に変わったらしい。その結果なのかな、
ご結婚おめでとうございます。お幸せに!

 

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