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 ポプリといえば熊井明子。花と香りにまつわるエッセイである。
 あとがきに、
 「花には様々な魅力があるが、私の場合やはり一番ひかれるのは香りである。香りは花の声のように思われる。書きものをしているとき、ふと空気が動き、花の香りを聞くことがある。すると時が止まり、私はペンを置いて花と対話している自分に気づく。(中略)本書は、そうした花や草木との語らいを通じて心に残ったことについて書いたもの。」 とある。
 人生の一瞬一瞬を大事にしている人だからこそ、この思いがあるのではないか。豊かな表現は、小さな喜びも抱きしめる豊かな感情から生まれてくるのではないか。そんな風に感じる一行が多かった。

 栽培された花ばかり扱っていると、香りに期待しなくなる。ついでに自然の香りにも鈍感になっていたようだ。毎年、夢か幻かと惚れ惚れ見つめる合歓がとても香りの良い花だったとは。来年が待ち遠しい。  

 

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