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 お母さんのお腹にいる時から巫女の力を認められ、生まれて三月で天山に連れていかれたソニン。けれど十二年の修行は実を結ばず家に帰されてしまう。天山と下界の違いに戸惑いながらも温かい家族や友達と暮らしたのもつかの間、口のきけない王子と出会ったことにより宮中の争いに巻き込まれてゆく。
  巫女は、夢見をして困っている人を助ける。巫女の魂は空を駆け、海へ沈み、答えを見つけ出す。正しく見、正しく知り、正しく伝えるために巫女は知識を積み、夢見の技を磨く。
  見たものを正しく判断するためには情に流されてはいけないし、惑わされてもいけない。そんな修行をしていたソニンには喜怒哀楽がよくわからない。そのために誤解を受けてたいへんなことになったりするわけだけれども、修行で培ったスタンスは苦難を救う力となる。
  設定よし、展開よし、文章よし。大切なことをわかりやすく伝えてくれる上質な物語である。天山を降りてまもないソニンはまだ俗にまみれていない。それゆえに成り立った物語でもある。下界で暮らすソニンはいずれ喜怒哀楽を理解するだろう。ふつうの人間らしくなってゆくだろう。
  その時物語はどんな姿を見せるのだろう。 希望の灯火のようだ。

 

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