【稲荷大町神】(いなりだいみようじん)        {ブラウザの戻るをクリックしてください}
〈稲作の守護神〉
稲荷大明神(稲荷神、稲荷大神)は伏見稲荷神社祭神で、五穀を司どる倉稲魂神(うかのみたまのかみ)などの尊称で、翁神(おきながみ)ともいう。親しんで、お稲荷様ともいう。
神道においては、稲荷神は宇迦之御魂神(うがのみたまのかみ)(倉稲魂命)・豊宇気毘売命(とようけひめのみこと)・若宇迦売神(わかうかめのかみ)・保食神(うけもちのがみ)・大宣都比売神(おおけつひめのかみ)・御饌津神(みけつがみ)などとされている。
稲荷神を祀る稲荷社・祠(ほこら)は日本全国津々浦々にあり、または各家の屋敷神としても祀られ、その数は無数といってもよい。これだけ庶民に信奉されてきた神もないであろう。
有名な「伊勢屋稲荷に犬の糞」という江戸の俚諺は、江戸八百八町どこにでもあるという意味の表現である。 二月初めの午(うま)の日を初午(はつね)といい、稲荷大明神の祭日(稲荷詣で)である。
藁(わら)で作ったツトツコに入れた油揚げ寿司や赤飯を稲荷の祠や神棚に供える。集落によってはイナリッコと称して、笛・鉦・ 締太鼓・太鼓などで離子(はや)したり、岡崎(おかざき)(火吹男(ひよっとこ))、お かめの面をかぶって踊ったりする。お稲荷様はこのように庶民のなかに住む神であるといえよう。
もちろん、茨城県の笠間稲荷神社などに見られるように、立派な社殿を持ち貴賎老若男女の信仰を集めているものも、一府県に二社や三社はあるが、その多くは戦前でいう無格社(以前は、官幣社・国幣社・府県社・郷(ごう)社・村社・無格社の六階級があった)であることには違いはない。集落の氏神であったり、屋敷神として、また神棚の隅に祀られている稲荷神は宿なしの神々の部類に入るといえよう。
稲荷社は全国各地に三万余社が祀られているといわれるが、屋敷神や家の神棚に祀られている稲荷社を含めると、おそらく五万を越えるのではなかろうか。
数多い神社のなかで、お稲荷様ほど人々に親しまれているものはないであろう。そして、そのお稲荷様の神使(みさきがみ)は狐であることは、広く知られている。だから狐の好物である油揚げを稲荷神にはお供えし、また油揚げを用いて作る食べ物を俗にイナリ(狐)と称している。
稲荷神の神使すなわち眷属神の狐が口にくわえたり、尾に巻いている宝珠は、火炎の玉である。稲荷社の鳥居は赤く塗られているが、これも火炎を表現したものである。このことなどから、稲荷神は竈(かまど)神にも通じ、さらに竜神であるとも考えられている。
稲荷神の神使は狐とされているが、真言密教で は「叱吉尼天(だきにてん)の別号を白晨狐菩薩(びやくしんこぼさつ)ともこれを称 し、稲荷の神体これなり……」と説いている。また平安時代、陰陽師・呪術者などは狐を媒介として種々の呪術を行って活躍したことが、『今昔物語』などに出ている。
また、冬から春にかけての狐の習性および農民と狐の交渉と、春、山を下りて田の神となり、秋、収穫祭のあと山へ帰り山の神となるという古代信仰とが結びついて、稲荷荼吉尼天−狐の習合が成立したと考えてよいであろう。
荼吉尼天を祀る寺で有名なものは、一般に豊川稲荷と呼ぱれ全国的に信者を持つ、愛知県豊川市豊川町の曹洞宗の寺、妙厳寺(みようごんじ)がある。
中世以降、工業が興こり商業が盛んになるとともに、稲荷信仰も農耕の守護神だけでなく、殖産神・商業神と拡大して行った。「衣食住の大祖、万民豊楽の神霊」と仰がれ、農村だけでなく、町家から武家社会にまで稲荷神が勧請され、屋敷神として、また神棚に祀られるようになっていった。
三万余ある全国の稲荷神社のなかには、伏見稲荷大社の主祭神である宇迦之御魂神(うかのみたま)(倉稲魂神)の ほかに、豊宇気毘売神(とようけひめのかみ)・若宇迦売神(わかうかめのかみ)・保食神(うけもちのかみ)・大宜都比売神(おおげつひめのかみ)・御饌津神(みけつのかみ)などを祭神としているものもある。これらすべての神は食物を司る神であり、穀神・作神でもある。
このように稲荷の鳥居は赤いが、比叡山守護の日吉山王社(日枝神社)の日吉鳥居も赤く塗られている。ことごとに対抗意識を持つといわれる天台、真言両宗は、鳥居の色についても、同じ赤色で競い合つているといえよう。
稲荷は稲霊信仰と結びついたものである。稲の神(倉稲魂(うかのみたま))は一名、御食津神(みけつがみ)ともいう。その音から三狐神(みけつがみ)とも書き、狐が稲荷そのものとも考えられるようになった。狐は、昔から神秘的な動物であったし、春から秋にかけて繁殖する習性が、稲をはじめとする農作物の豊作にも通じているからだろう。
稲荷の狐は、宝珠を口にくわえ、火炎の玉を尾に巻いている。稲荷の鳥居が必ず赤く塗られているのも、火炎を表現している像である。火は浄火でもあり、信仰の対象でもあるからだろう。
最後に、稲荷と直接の関係はないが、狐と男が結婚するという狐女房の伝説は各地に残されているが、なかでも有名なものは「葛の葉」の物語である。

〔稲荷大明神を祀る神社〕
京都市伏見区深草薮之内 伏見稲荷大社
長野県上水内郡飯網山頂 飯網権現
豊川市豊川町豊川稲荷
八王子市大字上椚田 高尾薬王院
和泉市王子町 聖神社

出典:日本神祗由来辞典
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