===== 雲 =====




いつもの時間に時計がなる
いつものようにトマトジュースを飲み
いつものように車のドアを開ける

そして渋滞の中へと入って行くのだ


通勤はたっぷりと1時間
ゆっくり ゆっくりと 進む
一日の苦痛のはじまりである


会社までは海沿いの道を行く
ゆっくり ゆっくりと 行く


「今日は波ないなぁ こんな天気の良い日に仕事に向かうのはうんざりだよ」


ふと 空を見た

「ん...   雲   とまってるよ 」

そのとき私には雲がとまっているように見えた
まだ渋滞は続いている ちっとも車は動こうとしない

私は車を降り もう一度 空を見上げた

「やっぱり  雲  とまってるよ 」

確かに雲はとまっていた。
雲だけじゃない 空も 風も 海も とまっているのだ


この光景に誰も気付いてはいない。
みな朝の苦痛に顔をあげることを忘れているのだ


でも雲は とまっている
すべてがとまっている中で 人だけが蠢いている
その中に私もいる



私は車に戻り渋滞からぬけ出した
そして海と空の見える高台に車をとめ
買ってきた缶コーヒーを飲む


雲はまだ とまっていた とても静かだった

この時を見過ごすことはできなかった


とても長い時間に思えた
とても短い時間に思えた




時計を見ると昼をまわっていた



「きょう仕事  無理だね 」

私はにやけながら呟くと もう一度 空を見上げた