- あの日、湖の向こうの外輪山のもっと遠くから
- 渡ってきた風が私の心を動かしたのだと思う。
-
-
-
東京に戻る途中で、すでに月浦に移住することを心に決めていた私は、まもなく東京の暮らしをたたんで引っ越しをし、ここ月浦に小さなcafeのある家を建て、たくさんのハーブの種を撒き、森で拾ってきたドングリを一つ、土に埋めた。
-
- 珈琲と過ごす静かな時間
- 土と太陽とたくさんの小さな生き物が共存する世界を感じられる時間
- 守られた心地よい空間で自分と一緒に過ごせる時間
-
- 私が欲していたのは、私が私でいるために必要な時間と、自分の時間を取り戻すために必要な空間だったのだろう。
-
- それから十数年が経ち、一粒のドングリが、私の背丈をゆうに越えるミズナラの木に育った頃、私のためだけでなく、ほかの誰かがゆっくり過ごせる場所を作りたい、そう思った。
- そして、Cafeの隣に隠れ家のような離れができ、周りに小さな菜園ができ上がった。
-
- 誰でも自分の中に自分の時計を持っていて、本当は自分の時間を生きている。
- 世の中の時計に疲れたら、少しの間ひとりになって、自分が刻む時の音に耳を傾けてほしいと思う。