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グッドライフクラブ特許検討・ポイント(メールマガジン発行第54号)

第2803236号(発明の名称:情報処理装置及び情報処理方法)

登 録 日: 平成10年7月17日 特許権者: 松下電器産業株式会社
出 願 日: 平成1年10月31日 出願番号: 特願平1−283583
公開番号: 特開平3−144719 分  野: G06F3/14
審査請求日: 平成8年9月26日 請求項数: 3  公報頁数:6
備   考: 松下電器産業が特許侵害でジャストシステムを訴え、ジャストシステムが敗訴した特許。
【発明概要】
 第1のアイコンをクリックした後に、第2のアイコンをクリックすると、第2のアイコンの機能説明が表示される、 情報処理装置及び情報処理方法。
【発明背景】
 本発明は、日本語DTPやワープロ等の機能説明を行う情報処理装置に関するものである。
 近年、より良いマンマシンインターフェースを志向するために、マウス等のポインティング装置を備えた情報処理装置が開発され、その多くが、ウィンドウシステムを採用している。しかし、機能説明に関しては、機能説明キーを設け、 その機能説明キーの押下によってこの装置を有する機能全てを説明するか、機能説明のアプリケーションを起動した後で、キーワードの入力を行わせるものが多い。
 しかしこの方法では、キーワードを忘れてしまった時や、知らないときに機能説明サービスを受けることができない。そこで、所定の情報処理機能を示す第2のアイコンの機能説明が知りたい場合には、 第1のアイコンを指定した後、第2のアイコンを直接指定することで、第2のアイコンの機能説明がなされる、情報処理装置及び情報処理方法を提供する。
【請求項要素・ポイント】
【請求項1要素】
  1. アイコンの機能説明を表示させる機能を実行させる第1のアイコン、および所定の情報処理機能を実行させるための第2のアイコンを表示画面に表示させる表示手段と、
  2. 表示手段の表示画面上に表示されたアイコンを指定する指定手段と、
  3. 指定手段による、第1のアイコンの指定に引き続く第2のアイコンの指定に応じて、表示手段の表示画面上に第2のアイコンの機能説明を表示させる制御手段とを有する、
    情報処理装置。
(請求項1特許ポイント)
 今話題の松下電器がジャストシステムを特許侵害として訴え、ジャストシステム側が敗訴した特許である。 本メールマガジンをご購読頂いている方々では、既に本特許の内容や判決内容等はご承知のことと思いますが、旬な特許ということで今回配信致します。
 判決文は下記アドレスでご覧になれます。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/0/79B15C35C791549249256F9B0023169E?OpenDocument
 当方が判決文を読んだ感想としては、ジャストシステム側の主張がやはり苦しいかな、という思いを受けた。
 本特許の権利自体は請求項のごとく、いたってシンプルなものである。 第1のアイコンをクリックした後に、第2のアイコンをクリックすると、第2のアイコンの機能説明が表示されるというものである。 請求項1で情報処理装置となっているのは、この機能を持つパソコンやワードプロセッサーということである。 もちろん、この機能を持つソフトをインストールしたパソコンも対象となる。
 ただ、裁判でも論点の一つとなったようであるが、明細書には第1のアイコンをマウスでドラッグして、第2のアイコンに重ねるように記述されているが、 請求項では、単にアイコンを「指定する」となっている。この指定が、第1と第2のアイコンをマウスでクリックするのみでも良いのかどうかというこであるが、 当方の解釈も、明細書の実施例は一例であり、請求項では限定していないので、第1のアイコンをドラッグせず、 両アイコンをクリックするのみでも、権利範囲に含まれると考える。
 判決については判決文を読んでもらえれば理解できると考えるので、ここでは概略を述べる。
 今回の裁判での争点は、
(1) 被告製品をインストールしたパソコンに表示される「ヘルプモード」ボタン及び「印刷」ボタンは,本件各構成要件にいう「アイコン」に該当するか。
(2) 間接侵害(特許法101条2号,4号)が成立するか。
(3) 本件特許に無効理由が存在することが明らかか否か。
 というものであった。
(1)の一太郎・花子の問題となるボタンが、本特許でいうところのアイコンに該当するかどうかという争点では、 ジャストシステム側は、「アイコン」とは「『ドラッグ』ないし『移動』ができる,『デスクトップ上』に配置される, 各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示して,コマンドを処理するもの」、であると主張し、ウインドウ内にある、 つまり一太郎・花子等のソフトでのボタンはアイコンに該当しないと主張した。
 判決では、アイコンをデスクトップ上にあるもののみと、限定することはできないとした。当方もやはり、各ソフトにある絵又は絵文字として表示されるボタンは、 アイコンと読んでも差し支えないと考えるのであるが、どうでしょうか。
(2)の間接侵害が成立するかでは、何故ジャストシステムが間接侵害なのかということで説明がいるかも知れない。
 本特許では、各請求項の要素を持つ、情報処理装置及び情報処理方法となっている。この出願当時ではパソコンソフト自体の特許は認められていなかったので、このような記載が多い。
 本特許の場合、一太郎・花子というソフトをパソコンにインストールすることにより、本特許の請求項1〜3の情報処理装置及び情報処理方法の要件が満たされ、権利侵害となる。 従って、直接侵害しているのは、一太郎・花子のソフトをパソコンにインストールしたユーザーということになる(各ユーザーが特許侵害で訴えられることはない)。 この場合、一太郎・花子というソフトは、本特許の情報処理装置を構成する部品であり、ジャストシステムはこの部品を生産・販売したことにより、間接侵害となる。 また判決文では、「平成14年11月7日に原告が申し立てた仮処分命令申立書の送達の時以降,本件発明が特許発明であること及び被告製品が本件発明の実施に用いられることを知ったものと認められる」と述べられている。
 また、この間接侵害では、ジャストシステムは,Windowsというマイクロソフト社のオペレーティングシステムそのものに,本件発明と同様の機能があるから,被告製品は「その発明による課題の解決に不可欠なもの」ではないと主張した。 しかし、Windowsのヘルプ表示プログラム等によって,「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると,当該他のボタンの説明が表示される」という機能が実現されるとしても, あくまで被告製品をインストールしたパソコンによってしか実行できないものであるから,被告製品は本件発明による課題の解決に不可欠なものであり,被告製品をインストールする行為は,本件特許権を侵害する物の生産であるといわざるを得ない。」として退けられた。
(3)の本特許が無効であるかどうかでは、ジャストシステムは、特開昭61−281358(ワードプロセツサの機能説明表示方式)とマウスで操作する仮想キーボードの事例を出し、本特許の各発明が、出願当時の当業者にとって容易に想到することができたと、 進歩性を争ったが、退けられた。
 判決文からでは、やはりジャストシステム側の主張が弱いのではないかと考えるのであるが、いかがでろう。判決がおかしいという意見があるようであるが、 当方としても判決同様、本特許の請求項から見る限り、ジャストシステム側が特許侵害しているように感じられるのであるが。 当方としては、松下電器、ジャストシステムのどちらの味方でもないが、ジャストシステムとしては、一太郎・花子は権利侵害していない云々ではなく、 本特許が無効かどうかを争う以外にないのではないかと思えるのであるが。
 また、インターネットでもこんな当たり前な技術を特許にすべきではないという意見があるようであるが、 出願が平成1年、今から16年以上も前であるということを考慮に入れなければならない。 まだ、MSドスの時代である。日本では、ほとんどの者がパソコンすらいじったことがない時代である。
 最後にマイクロソフトの面白い意見があるので紹介しておく。実際の文は下記アドレスで閲覧して下さい。
 この文章は、マイクロソフトは、組み込み製品を除く同社製品の顧客が知的財産権の紛争に巻き込まれた場合、訴訟費用と(裁判所の決定した)損害賠償額を「青天井で」(平野氏)補償する、というものである。
http://www.atmarkit.co.jp/news/200501/14/ms.html
【請求項2】
 第2のアイコンの指定が、第1のアイコンの指定の直後でない場合は、第2のアイコンの所定の情報処理機能を実行させる、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】独立項
 データを入力する入力装置(キーボード等)と、データを表示する表示装置(画面)とを備える装置(パソコンやワードプロセッサー等)を制御する情報処理方法で、 表示画面上の第1のアイコンの指定に引き続く第2のアイコンの指定に応じて、表示画面上に第2のアイコンの機能説明を表示させる情報処理方法。
【実際の特許請求範囲】
【請求項1】
 アイコンの機能説明を表示させる機能を実行させる第1のアイコン、 および所定の情報処理機能を実行させるための第2のアイコンを表示画面に表示させる表示手段と、前記表示手段の表示画面上に表示されたアイコンを指定する指定手段と、前記指定手段による、第1のアイコンの指定に引き続く第2のアイコンの指定に応じて、 前記表示手段の表示画面上に前記第2のアイコンの機能説明を表示させる制御手段とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
 前記制御手段は、前記指定手段による第2のアイコンの指定が、第1のアイコンの指定の直後でない場合は、前記第2のアイコンの所定の情報処理機能を実行させることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
 データを入力する入力装置と、データを表示する表示装置とを備える装置を制御する情報処理方法であって、機能説明を表示させる機能を実行させる第1のアイコン、および所定の情報処理機能を実行させるための第2のアイコンを表示画面に表示させ、 第1のアイコンの指定に引き続く第2のアイコンの指定に応じて、表示画面上に前記第2のアイコンの機能説明を表示させることを特徴とする情報処理方法。
【参考文献】
平2−239314 特開 昭63−280316 特開 昭64−68828

(引用文献:特許電子図書館公開公報)
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