時代を先取り?それとも時勢に合わず?
技術の発達した現代に於いては、ヘリコプターはごく当たり前に運用されております。しかし大東亜戦役中に於いてヘリコプターというものは、実戦に使用されておりません。しかしこれに似たもので「オートジャイロ」は各国で運用・試用されておりました。英米仏日蘇、大抵の国で試作されています。特にドイツは複数の試作機を作りましたが、実戦に参加した数は僅少でしょうまたアメリカでも民間開発が多く、実戦で使用された例は聞きません。とすると日本はオートジャイロを実戦で使用した珍しい国ということになります。まあ、それが時代を先取りした感覚かはどうとして…。
そもそもオートジャイロは、大正12年にスペイン人ファン・ド・ラ・シェルパが考え出して初飛行しました。このときのオートジャイロは、飛び上がる(浮かび上がる)のがやっとだったそうですが、低速ながら旋回性能などいくらでも改良できる要素を持ち、少しずつ注目が集まりました。
ただし、オートジャイロは上面の回転翼に発動機は直結して居らず、前面の発動機が風を起こしてこれを利用して飛ぶものでした。つまり回転翼は翼の代わりであったと思って間違い有りません。ですから無風状態で垂直に離着陸するのは不可能で、多少の助走が必要でした。しかしよく考えてみれば当時の戦闘の推移から無理に垂直に上昇する必要もなく、これはこれで十分な性能だったのでしょう。航空母艦でも運用できますので、有用でした。まして航空母艦はそれ自体合成風力を造り出せますから、ほぼ垂直離着陸は可能だったと思えます。
オートジャイロに熱心に取り組んだのはソビエトとドイツでした。ついでアメリカイギリスも研究しておりましたが、実際には米国や英国の方が性能の良い物が実用化されつつありました。
では日本では、と言いますと、かなり遅れて昭和16年に陸軍兵器技術本部が目を付け、砲兵の弾着観測を主目的に萱場製作所に設計を命じ、完成させました。気球連隊の替わりですね…。設計のベースとなったのは、米国製ケレットK−3と英国製シェルパでありました。特に「カ」号の胴体はシェルパに似ています。昭和17年に試作機完成、思った異常の高性能ですぐに制式化されました。もちろん砲兵科の兵器です。と言っても操縦は砲兵か工兵でした。
この一見貧弱で小さい飛行機(?)は、大陸や比島で大活躍、陸軍特殊船(航空母艦もどき)にも搭載されました。空中で停止したり超低速で飛行できるのが対潜戦闘に有効であったようです。
諸元:全長:6.90米 前幅:3.07米(10.6米回転翼含む) 全高:3.10米
回転翼径:15.00米
自重:745瓩 全備重量:1020瓩(1170瓩?)
最大速力:180粁/時/3000米(2型) 巡航120粁/時/2500米
上昇力:3000米/15秒
実用上昇限度:4000米
航続力:120粁/時 で 240粁(2時間)
離陸距離:0(30)米〜60米 着陸距離:0米
発動機:(1型)アルグスAc水冷倒立V型6気筒
離昇:240馬力 公称:200馬力
(2型)瓦斯電 ジャコブス空冷単列星形7気筒
離昇:240馬力 公称:225馬力
乗員:2名
兵装:60瓩爆弾 だけらしい…