撃たれ強い標的艦に改造された戦艦
強い海軍を造るためには、演習・訓練は欠かせません。帝国海軍でも欧米列強の海軍に太刀打ちするため血の滲むような訓練を続けてきました。ために世界でも驚異的な訓練命中率をたたき出したのですが、この訓練の陰に標的艦などの特務艦がありました。
標的艦になるためには、特種な装甲を施していなければなりません。演習のたびに高価な軍艦を失うわけにはいきませんから。
装甲という点で強力なのは、やはり戦艦でしょう。そこで明治の設計で艦齢12年になる旧式化した本艦が選ばれました。
勿論戦艦の主砲で打ち込まれたら撃沈されてしまいますので、戦艦の主砲射撃の時には使われませんでした。戦艦が射撃に本艦を使う場合は、子砲(ねほう)または膅内砲という主砲の上や砲身内に収まる中・小型砲を使いました。基本的に本艦は、中・小型砲の射撃訓練に供されていたと考えて差し支え有りません。では、主砲そのものの訓練はどうしたかというと、標的曳航艦が数百メートルの長さで曳航する標的に撃ち込む形となっていました。
後には航空機の爆撃訓練にも利用され、まさに撃たれ強い艦でありました。
装甲は、水平面に25~75粍のDS鋼板を張り、下に記す耐弾性を持っておりました。
また、特筆すべき点として、無線操縦装置を備えていたことが上げられます。試験時は標的艦矢風から操縦し、見事成功、以後かなりの比率で無線操縦による訓練が行われました。
また、本艦は操艦訓練にも使用されました。爆撃訓練と平行して他艦の艦長が回避訓練もしていたようです。但し、爆撃訓練時は防御区画でですので、視認するのは大変だったでしょう。感覚を身につける訓練といったところでしょうか。
かなり古い作図ですので、見づらい点もあります。
耐弾性能
艦上面に25~75粍DS鋼板張り付け
耐30㎏演習弾…………………4000米水平爆撃
耐20糎特型演習弾(艦砲) ……17000米~22000米
耐15糎特型演習弾(艦砲) ……7000米
耐14糎特型演習弾(艦砲) ……5000米
耐10㎏演習弾…………………6000米水平爆撃
諸元
主砲 : 無し (参考・戦艦時代30糎連装砲6基 12門)
機銃 : 九三式十三粍連装 2基 4挺
その他 : 爆雷 若干
排水量 : 20650トン
速力 : 18ノット 改装後17.4ノット
航続力 : 不明
軸馬力 : 20000馬力
主機 :直立三段膨張式
アスカニア式自動噴燃式装置
全長 :152.40米 改装後:159.30米
明治45年 7月 1日 呉工廠で竣工 一等戦艦
大正12年10月 1日 特務艦籍 標的艦 呉鎮守府所属
昭和12年 7月 爆撃標的艦改造
昭和15年 4月20日 連合艦隊付属 内海西部で機動部隊の爆撃訓練標的艦
昭和15年 5月 第2次改装 砲爆標的艦
昭和19年 3月 1日 第1艦隊所属
昭和20年 7月24日 広島湾で敵機により大破 江田島大須海岸に擱座
昭和20年11月20日 除籍
昭和22年 8月 5日 解体終了