In 沖縄

琉球村
憚りレポート IN 恩納村
Place : Ryukyu village
 今回紹介するのは、歴史的に貴重な便所です。
2002年3月に沖縄へ訪れた際に、琉球村にて取材してきました。
この琉球村は、沖縄本島中部の恩納村にあり、各地に残っていた歴史的建造物を移築、復元し、沖縄が、まだ琉球だった時代を再現したテーマパークです。
紅型や茶席の体験施設やお約束のハブとマングースの決闘ショーや、旧暦で行う地バーリーやじゅり馬などの伝統行事などのアトラクションも行われています。
琉球村のシンボル的存在が『サーターヤー』と呼ばれる製糖工場で、中央に三つの歯車があり、そこから延びた軸木を水牛が引いてぐるぐる回ると歯車が回り、そこにサトウキビを入れて絞るという仕組みのもので、そこで作られた黒砂糖を使ってサーターアンダギー(沖縄風ドーナッツ?)が作られます。
中に入ると、沖縄と言えばコレ、「シーサー」が出迎えてくれます。
琉球村の中の建物は、前述したように昔ながらの沖縄の民家が建ち並び、その民家の屋根の上にもシーサーが魔除けとして飾ってあります。
ところで、皆さんはシーサーにオス・メスの区別があるのを知っていますか?
金剛力士像のように、口を開けているシーサーと口をつぐんでいるシーサーがいます。
口を開けている方がオスで、つぐんでいる方がメスと沖縄では言われております。
その発祥はオリエント文明とされ、沖縄に伝えられたのが14〜15世紀頃で、日本の神社で言う狛犬であり、それが沖縄で独自に進化し現在のシーサーになったと言われています。
鎖国政策の為、他国との交流が少なかった大和にくらべ琉球王国(沖縄)は、いろんな国、特に中国の影響を強く受けています。
先ほど紹介したサーターヤーも中国福建省からの精糖法です。
この他にも中国の影響を受けた文化がいくつかあります。
それをいくつか紹介しましょう。
まず「ヒンプン」。
これはもともと中国語の屏風(ひんぷん)のことで、沖縄では家の門の内側にある目隠し塀のことを指します。
沖縄の魔物は角を曲がるのが苦手なため、直進して入ってこないように魔除けの意味を持つというのが一般的解釈ですが、気候風土の面で開放的に作られている家の中が丸見えにならないためにも機能しているようです。
ヒンプンを回り込むようにして、敷地内に入るようになっており、正面に母屋、右に新婚夫婦などの離れ座敷、客間、左には高倉、台所、奥の方には家畜小屋や豚小屋というのが、昔の沖縄民家の一般的構造でした。
その昔、男性は右側、女性は左側から入るという決まりがあり、ヒンプンに向かって客間が右側にあることから、右側が表玄関とされ、左側が勝手口を意味していたようです。
昔家に出入りする際、男女が顔をあわさなくてすむようにという説もありますが、どうやら男尊女卑の差別行為だったようです。
そのヒンプンの右奥に位置する場所にある豚小屋ですが、何を隠そう、これが今回のメインとなる歴史的に貴重な便所でございます。
沖縄では、『フーリャ』『ウヮーフール』『フール』などと呼ばれる豚の飼育小屋なのですが、なぜこれが歴史的に貴重な便所であるか、これから説明していきたいと思います。
中国から伝来したといわれており、石積みの区画がなされ、屋根には石造りのアーチ形・茅葺き・瓦葺きで床は石敷きです。
豚小屋の前方、人間が憚るスペースがあります。
左画像のフールAの右側に角張ったU字形の踏み台のようなモノがありますが、そこでお尻を画像左の豚小屋の方に向け、ブリブリッとするわけです。
するとトゥーシヌミーという穴から内側に向かってスロープのような勾配がついており、ウンチが豚小屋に落ち、それを豚さん達がウマイウマイと喜んで食べるという、実に効率的な循環型の施設というのが、この『フール』なのです。
お尻を拭くトイレットペーパーの代わりとして、ユーナの葉を用いたために、豚舎の近くにはユーナの木が植えられていましたので、自然にもとっても優しいです。
ここまで聞いていると、なんて素晴らしいエコトイレじゃないかとお思いでしょうが、それは大間違いで、大きな問題があったのです。
それは、寄生虫の問題で、体内に寄生した状態の人間のウンチを豚さんが食べると当然、豚さんにも寄生します。
その寄生した豚さんを人間が食べる。
これを繰り返すということは、どうなるか想像がつきますよね?
そこで1916〜1917年(大正5〜6)ころ、都市衛生上遺憾な点があるとして、時の警察署長の命令により区長立会いのもとで各家庭のフールのトゥーシヌミーを潰し、新規にフールを造ることを禁止しました。
フールの脇には、新たに設けられた汲取式便所のヤーフールと呼ばれる屋根つき便所が設置されました。
これによって、フールの歴史は幕を閉じてしまったのです。
このような歴史があるから、現在美味しい沖縄の豚肉料理が安心して食べられる訳なのです。
結局、沖縄の郷土料理としてソーキそばしか食べなかったのですが、豚肉の使い方が実にうまい!というのが感想でした。
ソーキそばとは、豚肉と沖縄そばを組み合わせたもので、この豚肉のことをソーキと言います。
僕が食べたのは、そのソーキそばの元祖と言われています名護にある我部祖河食堂で食べたのですが、¥600とリーズナブルな値段でボリューム満点!一見こってりしてそうなのですが、あっさりしているがコクもあり、十分に煮込んだソーキは、とろけるように甘くて絶品でした。
さすが豚と共に生きてきた沖縄の味と感心しました。
話をフールに戻しますが、このようなフールの跡は沖縄の各地で、まだ見ることができます。
有名なのは、北中城村にある中村家でも、この琉球村と同じようなフールを見ることができます。
機会があれば、覗いて見て下さい。

出迎えてくれたのは巨大シーサー


サーターヤーの為に大活躍する水牛、ちょっと疲れ気味


フール@


フールA


フールB


フールC


我部祖河食堂のソーキそば

【琉球村】
住所: 恩納村山田1130
TEL: 098-965-1234

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