今回の研究は、直接憚りとは関係ありませんが、そのネーミングが憚りっぽいということで取り上げてみました。
それは「ママコノシリヌグイ」!!
まず、この「ママコノシリヌグイ」とは何か?そして、なぜこの名前が付いたのかから紐解いて行きたいと思います。
研究内容:
●「ママコノシリヌグイ」ってナニモノ?
●なぜこの名前が付いたのか?
●同じ種類の仲間について
●同じ境遇の仲間
●実験?
●結論
いきなりですが、「ママコノシリヌグイ」ってご存知ですか?
植物に詳しい方ならご存知かも知れませんが、タデ科の植物です。
学名は、『Polygonum senticosum(ポリゴヌム センティコスム)』で、Polygonum→多くの節、senticosum→トゲの密生した、という意味です。
別名「トゲソバ」とも呼ばれています。
道端や丘陵地の水辺などに生息しており、茎には下向きの刺があります。
この刺で他のものにひかっかって長く伸びていき、長さは、なんと1〜2メートルにもなります。
花期は、6〜9月で花は淡い紅紫色で名前には似つかない可憐な花をつける(写真1)。
「まあ、なんて可憐な花でしょう」と思って摘み取ろうものなら、その鋭い刺が指を攻撃!「痛っ!」ということになりますので気をつけて下さい。
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写真1
PHOTO BY Masatoshi Nouki |
「ママコノシリヌグイ」というのは和名であり、つまり「継子の尻拭い」の意味です。
継子のお尻を拭う為に使うと言うことを指しているのはわかったけど、「先生〜質問!継子ってなんですか?」という声が聞こえて来そうです。
継子を辞書で引きますと、[血のつながりのない子。実子でない子。仲間はずれにされる者。疎んぜられる者。のけ者。]とあります。
つまり継母[血のつながりのない母]が、継子の尻を拭う時は、こんな刺刺の茎(写真2)で拭うという意味である。
実際、継母がママコノシリヌグイで継子の尻を拭ったかどうかはわかりませんが、昔は継母が継子に対して、いじめ的な行為が行われて来たと言う証拠であり、その例えということなんでしょうね。
ああ恐ろしや〜恐ろしや〜。
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写真2
PHOTO BY Masatoshi Nouki |
同じタデ科の仲間を、少し紹介します。
○アキノウナギツカミ
○イタドリ
○イヌタデ
○オオイヌタデ
○オオケタデ
○ギシギシ
○サクラタデ
○スイバ
○ボントクタデ
○ミゾソバ
○ミズヒキ
ざっと記載しましたが、アキノウナギツカミという草も茎に刺がありざらざらしているので、ぬるぬるしたウナギも捕まえられそうだということで、その名がついたが、こちらの方は、良い意味で使われていて、茎に形状は似ていても、名前から受ける印象はママコノシリヌグイとは正反対である。
ママコノシリヌグイに非常に良く似ているのがミゾソバ(写真3)です。
下の写真は、わたくしTOMの近所に生えていたミゾソバを撮影したものです。
遠目には、どっちがママコノシリヌグイかわかりませんが、近くに行って観察すると、その違いがわかります。
大きな違いは刺の鋭さで、ミゾソバにも刺がありますが、ママコノシリヌグイほどではないです。
もうう1つの違いは、葉の形状です。
ママコノシリヌグイの方は、三角形に近いが、ミゾソバは、「ウシノヒタイ」という別名を持つように、葉の形が牛の顔のように三角形の頂点を引っ張ったような形状をしています。
ミゾソバの花言葉は『純情』なのですが、その花は小さい白とピンクの可憐な花を付けます。
ママコノシリヌグイをお探しの際は、お間違いなく。
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写真3
PHOTO BY TOM |
ママコノシリヌグイのように、かわいそうな名前を持った草花って結構いるんですよね。
ここでは、その仲間達をいくつか紹介してみましょう。
ヘクソカズラ(屁糞葛)
草全体がいやなにおいをはなつことからの名です。
植物に限らず、カメムシのことを、その体臭から糞虫、屁コキ虫などと呼ぶことに近いですね。
クソニンジン(糞人参)
葉をもむと強いにおいがする。
この臭いが糞をイメージさせたのだろうか?
クソニンジンに含まれるアルテミシニンは、マラリアの治療薬にもなっているという、名前にそぐわない優秀な草。
オオイヌノフグリ(大犬陰嚢)
果実の形からついた名前で、2つならんで見える果実(写真4)を 犬の”フグリ”に見立てたものです。
ふぐりとは俗に言う『タマキン』、学術的には睾丸のことです。
でも、『陰嚢』という漢字を見て、”フグリ”と読める人は、どれくらいいるだろう??
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写真4
PHOTO BY Akiko Kakoya |
ハキダメギク(掃溜菊)
東京世田谷のはきだめではじめて見つかったので、このような名前がついたらしい。
ということで、この植物はゴミ捨て場などで、よくみかけることができます。
原産は、北アメリカだそうで、こちらも名前とは似つかない白い愛らしい花を咲かせます。
実際、この[ママコノシリヌグイ]でお尻を拭くとどれほど痛いものなのか?という実験をやろうと思いましたが、近所で[ママコノシリヌグイ]を採取できなかったので、残念ながら実験はできませんでした。
[ママコノシリヌグイ]に非常に似ていると[ミゾソバ]は、採取できたので、これで試そうかとも思ったのですが、[ママコノシリヌグイ]よりは、刺が鋭くないという[ミゾソバ]でさえ、摘み取るときに指に刺さり激痛が走ったので、これでお尻を拭くなんてもってのほかである
そういえば[モッテノホカ]という植物がありましたよね。
食用菊で「思っていたよりもずっとおいしい」というのが命名の由来らしいです。
おっと、話が脱線しましたが、刺がなんだ!僕のお尻は、そんな柔じゃないぞ!と[ミゾソバ]での実験を果敢にもトライしようとも思ったのですが、勇気ある辞退をさせて頂きました。
なぜなら、この実験は[ママコノシリヌグイ]でやらなければ意味が無いじゃないかという、僕の強いこだわりが、その妥協を許さなかったからです。
というのは嘘で、本当は、ビビってやめたんですがね(笑)
このようなトゲトゲしい植物では、お尻を拭いたことはありませんが、違う植物の葉でならお尻を拭いたことはあります。
僕が子供の頃ですが、親父と山にハイキングに行き帰り道で大の方催し、茂みで野糞をしたのですが、子供なのでティッシュなんか携帯するはずが無く、あいにく親父も持っていませんでした。
そこで親父は僕に「そこにある葉っぱで拭け」とフキの葉っぱを指差しました。
僕はしょうがなく、そのフキの葉っぱをむしりとり、お尻を拭きました。
・・っと、その瞬間、ペリッという音と共に指が葉っぱを貫通!!
その時の経験がトラウマで、それ以来、植物の葉でお尻を拭いたことがありません。
今回の実験は、そんな嫌な過去と決別できるか?というのも1つのテーマでしたが、結局実験は、取り止めという結果になりました。
あー残念、残念(笑)
昔は、お尻を拭くのに木の葉を使っていたということは事実であるが、いくつかの文献などで調べてみたが、実際に継子のお尻を[ママコノシリヌグイ]で拭いていたかどうかは、定かではないというのが今時点での見解である。
シンデレラに代表される継子いじめだが、当然、日本でもあったわけで、その歴史は、源氏物語以前の昔物語に『継母の腹ぎたなき物語』という継子いじめの物語が残っているよう、その歴史はかなり古い。
その歴史の中で継子いじめの象徴として語られてきたというのが、[ママコノシリヌグイ]についての有力な説と言って良いと思う。
それにしても、日本人の植物に対するネーミングのセンスの無さには、参りました(笑)
【同じ境遇の仲間】で紹介した以外にも、ブタクサ(豚草)、ボロギク(ボロ菊)などなど、探せばまだまだかわいそうな名前が見つかります。
これらとは、正反対にキンミズヒキ(金水引)やジュウニヒトエ(十二単)、ヒメオドリコソウ(姫踊子草)など素敵な名前の植物もいるんですが、往々にして[ママコノシリヌグイ]のような、安直で低俗な名前の付け方が多いようです。
ヒメオドリコソウには、悪いですが、この草花のどこが姫踊子なの?ママコノシリヌグイの方が、よっぽど可憐な花を付けます。
それなのに、誰がこんな名前を付けたのでしょう、かわいそうに。
オオイヌフグリも青くて清楚な花をつけるので、非常に人気のある草花ですが、「フグリってタマキンのことだよ」と聞いた瞬間、その草花に持つイメージが変わってきます。
ただ一概に、かわいそう、命名した奴はなんてセンスの無い奴だと嘆くのは、どうでしょう。
こういうネーミングをするということは、それだけ植物の容姿や性質を観察していたから、ついた名前なので、今までその植物に対して感心のなかった者が、それを今さっき知った情報だけで、かわいそうなどと言っている僕を含めた人々の方が、植物に対して愛がなく、よっぽど恥ずべきなのかもしれないとも思いました。
でも、新種の草花が品種改良で生まれた際は、もうちょっと品の良い名前を付けて欲しいとは思いますけどね(笑)。
それから、【実験?】でも、少し触れましたが、排泄の後にお尻を拭くという行為に対して、そのお尻を拭くモノに注目しました。
日本や欧米では、トイレットペーパー(紙)が主流ですが、世界の約3分の2が、それ以外で処理をしています。
今度は、このお尻を拭くモノについて研究してみようかなーなんて思っています。