九州福岡県柳川市さげもん/静岡県 伊豆稲取 雛のつるし飾り/山形県酒田市 傘飾り傘福
由来伝わる三大吊るし飾り風習の解説です
北島様の伝承さげもんは
柳川藩立花家名勝御花
柳川銘菓越山もちの白雪堂
本店にてさげもん巡りの頃
展示されています
柳川まり保存会のさげもんは
小手まりも模様が決められて
います。
十時おばあちゃんの作風を
残す古賀神具店のさげもん
姫路の日本玩具博物館春の
雛人形展示期間に添えて
飾りつけられる昔つくりの
柳川さげもん貴重な資料です
加藤飴屋のおばあちゃん
(故人)の作品
伊豆河津の雛の会講師宍戸様
よりいただいた写真
雛のつるし飾り正絹つくり
傘福の写真をお送って頂いた
石川様ありがとうございます
つるし飾り風習・三大つるし飾り
北島家の雛飾り
柳川さげもん
柳川さげもんのいわれの一説より 柳川さげもんは城内の奥女中が着物の残り布で、 子どものおもちゃや琴爪入れを作ったのが始まり。 そのうち、それらを下げて楽しむ様になり、今に至っています。 さげもんは、7X7=49ですが、子どもの健やかな成長と人生50年 と言われていた時代に、1年でも長生きしてもらいたいという親の願い 、さらに縁起をかつぎ50という偶数では割り切れるので さげもんの輪の中央に大きな毬を2個下げて51にして飾るようになりました。 さげ方は上に飛ぶもの、中間に山のもの木になる(咲く)もの 下に水中のものを基本としてます。 蝉 土の中に何年もいて、辛抱の象徴、元気な産声 鼠 子沢山 蝶 蛹から蝶へ。きれいに着飾らせて嫁に出したい親心 兎 おとなしく、でも雪山を元気に遊びまわる 猿 子どもを大事にする。元気に遊びまわる 鳩(カナリヤ) 幸せと平和のシンボル(美しい歌声) ひよこ かわいらしさ、あどけなさ 鶏 朝、早起きで、つがいで仲良く卵を温め育てる 鶴(亀) 長生き 唐辛子 小さくても、ぴりっとしている 梅(花) 寒さに耐えて、春にさきがけて咲く 桜 みんなを楽しませる 桃(実) 完成 みかん 城内の宮川家のみかん(早生温州みかんの原木) 桔梗 ものしずかで、上品な花 おくるみ人形 生まれたばかりで、かわいい赤ちゃん 這い人形 生まれて、はいはいするようになった親の喜び 袖振り人形 「はえば立つ。立てば歩け」の親心 三番叟 祝いの席の舞 おかめ 女は愛嬌美人になりますように 瓢箪 無病息災 宝袋 心の豊かさ 蛤 二夫にまみえず 金魚 ゆるやかに泳いで、人の目を楽しませる。 海老 年老いて、腰が曲がってもなお元気 (柳川まり保存会では海老が無く苺になります 栄養豊富で春をつげる) さらにこれらの細工の間には三角,四角の金紙が貼り付けられます これはお金に例えられ、生活に困らない様にとの金縁の意味が含まれています さげわの部分には赤糸との結び目に華をあしらいます。 これを1対で揃え、お雛様の両端に吊るします。 これがさげもんの基本的な飾りつけになります。 その周囲には御祝に戴いた作品や単一の細工で組上げた作品 また5X5=25の中型やガラスケース入りの型も多数飾りつけされます。 まりは木目込みまりや七宝まりで製作されたものもありますが 柳川まりを使ったものが貴重とされ主流です 本来は草木染めの糸、近年ではリリヤーン、 現在では堅牢ピューロンによる手巻きの柳川まりが 加わることが容易に真似る事のできない柳川さげもんの特色です。 縮緬細工は型紙を手にすれば独学で一通り作ることもできますが 柳川まりは最初は地玉を丸くする事すら大変ですがしっかりと師事し て幾種類もある巻き方を習い,数多くのまりをこなした上で中心に飾る りっぱな大まりを巻き上げる事ができます。 この技術の継承があってこそのさげもんだと思っています
伝承さげもん@柳川まり保存会
さらに厳格にさげもんを規定すると伝承さげもんになります。 柳川では北島 妙(たえ)様(柳川まり保存会会長)含四名のおばあちゃんで 作られるさげもんが代表作です。 皇室女児生誕の御祝の機会には北島 妙様,先代北島ミチ様の柳川まり さげもんが柳川より贈られています。 金魚に金字での模様付け、苺、さげ輪に桜型の八女手漉き 和紙を貼り付けてあるのが特徴です。 皆様ご高齢で近年は3対しか製作なされないそうです。 すべて下げる動物、這い人形、まりの位置が決まっていて形を変えたり 新しい細工が加わることもありません。 北島 妙様は叔母の北島ミチ様と共に立花家奥女中であった池松フユ様より師事を 受けられておられ、昭和初期頃までは旧柳川藩のなごりつよく 立花家へのおつとめの際は女性のたしなみとして柳川まり、 細工物を習い受け継がれていたそうです。 この風習技術は彼女らの里帰りを通して庶民にも伝わり、 雛壇をひきたてるものとして、又、雛壇を用意できない家庭でも せめて初節句を祝ってあげたい気持ちからさげもんをふとんハギレでつくられたそうです このさげもんの一般的な普及にあたっては30年以上前に当時 柳川に滞住しておられた酒井愛子先生(1951年装美あみもの学園を設立)が さげもんの基礎を北島 妙様より学ばれ、手芸の延長として取り組みやすい形にて 婦人会等で広く御指導なされたことで多くの御婦人がさげもん製作を学ばれ、 引き継がれています。現在、酒井先生は東京に移られましたが さげもん、縮緬細工、手毬に関した本を度々出版なされておられます また比較的生徒さんも多い柳川文化サークル (七宝毬と松竹梅の細工の裏に夢の字が特徴のさげもん) 下田美智子先生も先代北島ミチ様より2年ほど基礎を学ばれておられ これらの源流となる伝承さげもんを代々継承してきた 柳川まり保存会には感嘆の思いがあります。 北島 妙様のさげもん配置図
みかん | ○ | 瓢箪 | ○ | 苺 | ○ | 蛤人形 |
○ | おかめ | ○ | 猿 | ○ | 鶴 |
○ |
赤ちゃん 人形 女 |
○ | 蝉 | ○ | 桔梗 | ○ | 蝶々 |
○ | 桃 |
○ | カナリヤ | ○ | 赤ちゃん 人形 男 |
○ |
鶏 |
○ | 兎 | ○ | ひよこ | ○ | 宝袋 |
○ | 三番叟 | ○ | ねずみ | ○ | 金魚 |
○ |
這人形 男 |
○ | 這人形 女 |
○ | 這人形 男 |
○ | 這人形 女 |
○柳川まり 20cm (細工25個、柳川まり24個で構成されます) 中央部二連大まり 上段大まり48cm菊(三菱帯) 国の花 下段大まり梅42cm(白梅)福岡の県花 柳川まり保存会における伝承型で昭和初期における代表的な型 平成19年, 柳川まり保存会を結成し30年の永きにわたり技術の継承、宣伝 普及に貢献された事により伝統的工芸品産業功労者褒賞を受賞なされました。
伝承さげもんA十時おばあちゃん
十時(ととき)お婆ちゃんも昭和初期に多くの方にさげもんの伝承をなされました 現在、さげもんつむらさん,やすとく糸屋,古賀神具店, 杉森高校(科実習として柳川まり、さげもん製作があります) に伝えられるさげもんは十時満佐子様のさげもんの流れになります。 伝承された時期、人により細工に変化があり 中央大まりの模様も作者おまかせなので基本型を定めにくいのですが ここでは古賀神具店のさげもんを参考に御覧ください 2007年大宰府九州国立博物館 ひなの国九州フェスタには こちら宅からのさげもんが展示されました また例年西鉄柳川駅に雛壇とともに展示されるさげもんもお世話されてあります 十時おばあちゃん系の配置図(昭和後期)
蛤人形 | ○ | 桜 | ○ | 猿 | ○ | 瓢箪 |
○ 雌鳥 |
おかめ | ○蝶 | 亀 | ○ | 梅 |
○ |
みかん | ○貝 | おてふ り人形 |
○貝 | おくる み人形 |
○ 雄鶏 |
福袋 |
○貝 | 桃 | ○貝 | 三番叟 |
○ | 桃 | ○貝 |
せみ |
○ | こしょう | ○ | はと | ○ | ひよこ |
○ | 三番叟 | ○ | ねずみ | ○ | うさぎ |
○ |
三番叟 | ○ | 這人形 男 |
○ | 這人形 女 |
○ | 金魚 |
○柳川まりの代わりに合せ貝を多用する作者もおられたようです 表にはありませんが現在は海老が加わっています 見比べるとこちらの系列が柳川市の細工由来に採用されてある様です 細工の移り変わり 昔の十時さんの作品ではオカメさん細工はお顔を”福”の字を篆(てん)書体で顔に 見立てて書いてありました。額上に点々眉毛が書き添えられた平安顔ですね 平成になってからは伝承を受けた方の作品ではあまり見かける事も少なく 可愛い人形顔になっています さげ輪の花も近年は赤梅で仕上げられる方が多いです 実際の製作では多くの方は細工に慣れで糸を通してありは作品ごとに配置は 異なり、またその年の干支を入れたりして個人差のあるさげもんに変化しています
昔さげもん
柳川市には今なお城下町としてのなごりがあります 柳河藩立花家は明治以降は爵位を授かり現在では 歴代柳川観光協会会長をつとめられています その別荘 御花は柳川観光の要として明治大正期のたたずまいを残し多くの 観光客が訪れます 私の嫁ぎ先にはこの立花家に昭和初期に女中として仕えたおばあちゃんがいます。 どれほど柳川の御殿様のさげもん飾りはすばらしかったのか 尋ねてみると以外な事を言われました。 支那事変直前とはいえ立花家での桃の節句にはさげもんの飾りつけは無かったそうで それどころか立花家のお雛様は豆雛と言うほどの 小さな小さなお雛様だったそうです。 立花家は武門の誉れ高く、開祖 立花宗茂公は関が原西軍に参戦した為、 領地を没収されたものの武名を惜しまれその徳川家に旗本として召し抱えられ、 苦労の末、晩年柳川に復帰したそうです。 そこに質素倹約の精神が引き継がれているのかもしれません 城内の腰元さん達は手まり,裁縫のさげもんの技術は持っていたけれども 立花家自体での飾りつけは太平洋戦争後からの様です。 その一方で幼い頃見た従兄弟の初節句にはたくさんのさげもんが飾ってあったそうです 柳川の御殿様が質素な豆雛ならば城下の人々は遠慮してあまり派手に 雛人形を用意できず経済的な理由も含めて手作りの御祝の飾りとして さげもんが生まれ発展してきたのではないでしょうか 姫路の日本玩具博物館には古い型のさげもんが保管されています 10年も昔、100歳近くで亡くなられた柳川のお婆ちゃんの作品で 大正時代のさげもんを写していると思われます。 昔は畳表の製作が盛んだった為、い草で作った傘、紙折の菱角、金紙の折鶴、 それら細工の位置を調節する為 麦藁に糸を通し藁で細工同士を支えています そして中央手まりの三連飾り現代のつるし飾りの様に型紙製作中心の作品とは違う、 本当に昔の手作りの名残りが見えます
雛のつるし飾り
江戸時代から伝わる伊豆稲取の風習で、長女の初節句に雛壇の両脇に 無病息災、良縁を祈願して細工を吊すものです もともとはツルシと呼ばれ特に名称はありませんでした またこれらは子供の成長とともに7歳、成人、嫁入りの機会には"どんど焼き" にてお焚きあげてしまう為古いものはあまり残っていないといわれます これらは平成5年頃より稲取の婦人会の手芸講座による復元製作を通じて 見直され雛のつるし飾りの名称をつけられました やがて平成10年稲取温泉旅館協同組合が中心となり観光の目玉として 雛のつるし飾りまつりが開催されました 現在では近郊での類似した吊るし雛イベントの開催、外部の製作者,節句店,手芸店など による 類似異形のつるし飾りの流通の問題をかかえており東伊豆商工会が中心となり ”稲取ももの会”を設立また”絹の会”とともに加盟店による伊豆稲取の基準を満たした つるし飾りの購入を推奨しています 「桃(長寿)」「猿っ子(魔除け)」「三角(薬袋香袋)」を基本として 50種の細工があります、こちらは5列の赤糸に各11個の細工をつるし 配置はドーム型の交差した中心に1列、さげわの4点に1列づつの計5列、これを対で 製作することにより計110の細工がつるされます さげわに工夫がしてあり、傾くずれしにくくなってます。 30cmのさげわに170cmの長さにつるしますのでスリムな感じです
傘福(笠福)
江戸時代において酒田は米の積み出し港として栄え、北前航路(西廻り)を通じて 京都との交流があったことから おそらく北前船によって伝えられたものと考えられています 酒田祭り(旧山王祭り)には亀鉾とよばれる山車の上に 傘を建て小槌、宝珠などが飾りつけられます。 これは1765年に酒田市の豪商・本間家3代本間光丘が、京都の祇園祭山鉾巡行に習い 山王祭りを盛大にすることによって酒田の町を活性化させようと京都の人形師に 山車製作を依頼したもので傘福の原型と考えられています。 近年酒田市指定有形民俗文化財「酒田山王祭例用亀笠鉾」として復元されています。 現在、かつての本間家の別館は本間美術館となっており、庄内藩の御用商人だった 風間家の1対の傘福が雛壇とともに飾られています これが傘福と桃の節句を結びつける由縁のようになっていますが、 本来この風習は観音堂に安産や子供の成長を願って地元の神社に納めたものであり、 昔から傘の中には魂が宿るといわれ子どもが健やかに育つことを思い、 また様々な願いを形にして61種類の細工が吊り下げられているといわれます。 これら風習も衰退の危機にありましたが、 近年、柳川さげもん、伊豆稲取雛のつるし飾りと結び付けられ 三大つるし飾りと呼ばれるようになりました。 2006年度、酒田商工会議所女性会の創立25周年の記念事業として 6000個の細工を使用した盛大な傘福製作が行われました。 最大のものは直径200cmの傘の中に999個の細工をつるした高さ270cmの傘福が 山王クラブに展示されます これら柳川市、伊豆市、酒田市はつるし飾りを通じて交流を始め2008年 第一回つるし飾りサミットが静岡県伊豆市でもようされました。 2009年は福岡県柳川市にて第二回つるし飾りサミット 2010年は山形県酒田市にて第三回つるし飾りサミットが予定されています
表記に関しては”さげもの、提げもん、さがりもん、さげ飾り、さがりもの、下げもん、ひなもん”等、呼名書名がありますが正式表記は”さげもん”です
伊豆の”吊るし”も漢字の表記は推奨されず”雛のつるし飾り”が正しいそうです。酒田市の傘飾り”傘福”も”傘鉾、笠福”と記す時があります
つるし雛、まり製作に係わる方でしたら相互リンクを募集しています。リンク集を御覧ください
このページは資料として以下のサイトでも引用戴ています
吊るし飾り - goo wikipedia (ウィキペディア) 記事検索
さげもん - goo wikipedia (ウィキペディア) 記事検索
雛のつるし飾り - goo wikipedia (ウィキペディア) 記事検索
傘福 - goo wikipedia (ウィキペディア) 記事検索