人魚姫 The Little Marmaid  Die Kleine Meerjungfrau


ハンス・クリスティアン・アンデルセンの原作から自由に発想した
ジョン・ノイマイヤーのバレエ


音楽
レーラ・アウエルバッハ(委託作品)

振付・ステイジング・舞台美術・衣裳
ジョン・ノイマイヤー

世界初演
2005年4月15日 コペンハーゲン オペラ座 王立デンマーク・バレエ

オリジナル・キャスト    
人魚姫  マリー・ピエール・グレーヴ
王子/エドヴァルド  ケネス・グレーヴ
人魚姫の姉妹  セシリー・ラッセン
スザンネ・グリンダー
フェムケ・メルバッハ・スロット
ミエ・Fjelstrup
ヤオ・ウェイ
海の魔法使い  ジャン・ルシアン・マソー
ヘンリエッタ王女  Gudrun Bojesen
H. C. アンデルセン  Mogens Boesen


ハンブルク初演
2007年7月1日 ハンブルク ハンブルク・バレエ



もし私の心の底をあなたが見れば、私のあこがれの源をあなたは完全に理解するしょう、そして私を憐れむでしょう。凍結しない透明な湖でさえその深さは計り知れないのです、ダイヴァーたちも知らない深さがあるのです。
ーH. C. アンデルセンが1835年にエドヴァルド・コリンに宛てた書簡より


ー ハンス・クリスティアン・アンデルセンの生誕200年祭にジョン・ノイマイヤーは現代的だが時代を特定しない解釈の“人魚姫”を創った、それは二つの対照的な世界(ひとつは海の生物の海面下での単純な生活と、もうひとつは人間の華やかな生活)のドラマティックな物語だ。人魚姫の核となるのは、彼女に託された王子への愛ゆえに、苦痛に耐えながら二つの世界を通り過ぎて、最後には彼女の強さによって乗り越えていく、ということだ。このバレエはハンス・クリスティアン・アンデルセンの伝記の中のおとぎ話との類似点を強調している。


━あらすじ━

プロローグ
航海の途中で詩人(H. C. アンデルセン)は親友エドヴァルドとの別れを惜しみながら彼とヘンリエッタとの結婚式を思い出していた。
エドヴァルドの写真を見つめていると、彼の涙が頬を伝わりゆっくりと深く落ちてくる。下を見ている様子は、詩人が思い出と幻想の海へゆっくりと落ちていく自分の涙の後を追っているように見える。

第1幕
海底でエドヴァルドを待ちわびている詩人は小さな人魚姫の姿になる。その写真に魅せられて、この創造された、愛すべき海の生物は、船が上を通り過ぎていくのを見つめ地上の世界を夢見る。
通り過ぎていく船の甲板では船員たちが訓練をしている。船長の王子は、エドヴァルドにとてもよく似ていて、ばかみたいにゴルフの練習をしている。打ったボールが船外に落ちると、彼はそれを見つけるために海に飛び込む。人魚姫が現れて、写真の中のハンサムな男性が彼女のもとにやってきたので喜ぶ。彼は彼女を見ることはできないが、彼女は彼を香りのように包む、その香りは不思議なことに元気づけるような感覚を吹き込み、彼を海から遠く離れた外部へ激しく動かしていく。
海の魔法使いが現れ、激しい嵐が起こる。すべての海の生き物、人魚たちや船員たちはこの嵐の暴風雨に巻き込まれる。王子は溺れかけるが、詩人が小さな人魚姫に彼を助けさせる。意識を失った彼を抱いていたことで、彼女の愛は強くなる、詩人のエドヴァルドへの愛のように、これ以上抑えることのできない情熱となる。彼女は彼に口づけをする。
鐘の音が聞こえてくる。修道院に付属する学校の女生徒の一団が修道女に付き添われて海岸にやって来る。彼女らの一人の、ヘンリエッタにとてもよく似ている王女が、王子を発見する。彼女はためらいがちに彼を目覚めさせようとすると、彼は息を吹きかえす。王女が彼を助けてくれたのだと信じた王子は恋に落ちたようだ。王女は教会の中へ入っていく。小さな人魚姫は彼らの間に愛が生まれるのを見て悲しく思い落胆する。彼女の王子への思いは絶望に変わる、詩人の心を映すように。
人間になることを決心して、小さな人魚姫は姉妹と共に海の魔法使いを探す。悪い魔法使いが現れたとき、恐怖におののいて姉妹たちは逃げるが、愛が小さな人魚姫に勇気を与え、魔法使いに人間にしてくれるように乞う。身の毛もよだつような儀式があり、代償として彼女の美しい尾がなくなり、魔法使いは彼女を乱暴な方法で作り変える。小さな人魚姫は脚を手に入れる・・・。
彼女は海岸で生まれたままの姿で目を覚まし、一歩踏み出すと耐えがたい痛みが襲ってくるのに気づく。王子が通りかかり、この見知らぬ少女を哀れに思って彼の船に連れて行く。彼女の夢が現実になったように思える。
船が出航しようとしたときに、王子は乗船客の中に王女を見つける。彼らの愛が再び花開いたように思える一方で人魚姫は人間的な苦しみを味わう。船員たちは彼女に水兵服を着せてホーンパイプ・ダンスを教える。王子は彼が拾ってきた小さな少女と楽しく過ごす。しかし航海の中で、王女への王子の愛は強まる一方で、小さな人魚姫は望みを失い激しい痛みに苦しむ。

第2幕
小さな人魚姫は女性になることを決めているが、地上世界の部屋は彼女を閉所恐怖症にする。彼女の順応しようとする努力にもかかわらず、人間の体に慣れることができない。海の幻影が彼女の夢に入ってくる・・・。
王子を深く愛している小さな人魚姫は王子からも愛されたいと願うがいまやはっきりとむなしい結果となった、今日、王子は王女と結婚するのだ。彼女は花嫁の付き添い(ブライズメイド)をしなければならないのだ。
結婚式の最中に、海の魔法使いが奇妙な余興の一部として現れる。魔法使いは人魚姫に危険なナイフを渡し、もしも王子を殺せば、その血で彼女の尾びれを取り戻すことができて深い海の底の家に帰ることができると教える。
すべてのお客が帰った後で、小さな人魚姫は王子に出会います。しかしながら、彼女が決して王子に害を加えることができないのは明らかだ。彼らの別れの挨拶の時、王子はちょっとでも彼女の深い情熱に気づくのか? 彼らはまさに口づけをしそうになったのか? 王子は急に王女と結婚初夜を過ごすべくその場を去る。

エピローグ
小さな人魚姫は、一人残される、地上の世界の迷子だ、彼女はその一員となるために多くのものを犠牲にしたのに。彼女の痛みは詩人の辛い状況を映している。詩人と人魚姫はお互いの影のように思える、彼らはお互いの激しい愛情の対象から捨てられたのだ。彼らは一つだ、創造者と創造されたものだ。人魚姫に魂を与えたのは詩人の人魚姫への愛だ、それが彼女を人魚姫として不滅のものとするように、人魚姫が彼を不滅のものにするだろう。勇気をもって彼らは新しい世界を探していく・・・。
(S、カンパニーのサイトより)