オテロ Othello |
世界初演
1985年1月27日 ハンブルク カンプナーゲル ハンブルク・バレエ
音楽
アルヴォ・ぺルト アルフレット・シュニトケ Navasconcelslos など
振付・舞台美術・衣裳
ジョン・ノイマイヤー
主なオリジナル・キャスト
オテロ | ガマル・グーダ |
デズデモーナ | ジジ・ハイヤット |
イアーゴー | マックス・ミディネット |
エミーリア | Anne Brossier |
キャシオー | ジェフリー・カーク |
ブラバンショー | エデュアルト・ベルティーニ |
ビアンカ | レナ・ロビンソン |
The wild Warrior(荒くれの戦士) | ラルフ・デルネン |
La Primavera(春) | ステファニー・アルント |
オテロの音楽 |
第1幕 ヴェネツィア
出会い | Nana Vasconcelos*, Voces |
互いの肖像 | Anonym, Lamento di Tristano Batucada Fantastica. Mascha de Ranchs, Ensaio Geral Brasilianische Folklore Michael Praetorius, Resonet in Laudibus |
愛 − 布 | アルヴォ・ペルト、 鏡の中の鏡 |
Moresca** | Nana Vasconcelos, O Berimbau |
デズデモーナの告白 | |
ブラバンショーの非難 | |
オテロの答え | |
別れ | |
イヤーゴーとエミーリア、別れ | Nana Vasconcelos, Vozes |
* Nana Vasconcelos この作曲家のサイトはこちら。Wikipedia のサイトはこちら。
** Moresca morris dance ともいわれる。ランダム・ハウスによれば、足に鈴をつけた男性が仮装して
May Day の祭りに踊る、とある。Wikipedia の Morris dance の項はこちら。このモリス・ダンスは英国のTVドラマ“バーナビー警部”の中で見たのだが、第何話なのか思い出せないのが残念。
第2幕 キプロス
朝の歌、 キャシオー | 作者不詳 Bonny sweet Robin 作者不詳 Calleno custure me |
戦い | Alfred Schnittke Concerto grosso Nr. 1 Preludio Andante |
気晴らし | Toccata Allegro |
対話、疑念 | Recitativo |
絶望 | Cadenza |
幻想 | Rondo |
不審の念、疎外感 | Postludio |
布が失われる 娼婦 ビアンカ |
Nana Vasconcelos. Ondas |
嘘、失望、決意 | Arvo Part. Tabula rasa Ludus |
殺人 |
Silentium |
以上はカンパニーのサイトによる。
(S)
あらすじ |
第1幕 ヴェネツィア
舞台はヴェネツィアということだが特定の時代や場所を感じさせない抽象化が見られる。カーニヴァル的な喧騒の中で色白の美女デズデモーナと黒い肌のオテロの目が合い、二人は互いに魅せられて行く。ボッティチェリの名画“春”から抜け出たような美女プリマヴェーラの姿も現れる。これはデズデモーナの分身であり、オテロの見た幻想でもある。いっぽう黒い面をつけた野卑な戦士も現れる。これはオテロの分身でもあり、デズデモーナの心奥に潜む男性像でもあろう。やがて、デズデモーナとオテロは接近して踊る。祝祭的な踊りでこの場は終わる。
オテロとデズデモーナの寝室でエロスの香りの濃厚な踊りが展開される。つづいては幸福な二人の前での仮面劇の上演。ハンカチーフを持った赤い衣裳の女装の男と、黒い面をつけたムーア風な首領と白人兵士らの踊り。これは後の悲劇を予想させるものがある。オテロは現在の幸福が心配になる。デズデモーナは慰めるが、オテロは不安そうに踊る。オテロに怨みを持つイヤーゴーは愛し合う二人の仲をさこうと策略を練る。イヤーゴーは妻エミーリアをそそのかし、奸計の片棒をかつがせることにする。やがてオテロたちを乗せた船はキプロスに向けて出発する。
第2幕 キプロス
キプロス島。オテロ夫妻の寝室からオテロが出てきて、いわれのない不安を吐露する。副官キャシオーそしてイヤーゴーも加わってのやりとり。イヤーゴーはオテロにデズデモーナとキャシオーが不貞を働いているように信じさせようとする。何も知らないデズデモーナはただ無心に振舞う。
オテロ夫妻、イヤーゴー夫妻、キャシオーの五人の踊りでは、各人の心象風景が克明に描かれる。ややあってイヤーゴーはオテロをさらに惑わせるような言動をとる。疑心暗鬼にさいなまれるオテロはすでに完全にイヤーゴーの支配下にある。倒れたオテロの妄想の中にデズデモーナとキャシオーのラヴシーンがちらつく。もうデズデモーナがすがってもとり合わない。
いっぽうエミーリアは問題のハンカチーフを手に入れ、天に涙してしまう。イヤーゴーはこれをオテロに見せて彼の猜疑心に油を注ぐ。デズデモーナは何で夫が乱心したのかわからないまま悲しみにくれるばかりである。判断力を失ったオテロは妻とプリマヴェーラを前にして妻を責め、ついに彼女を殺してしまう。プリマヴェーラも黒い戦士も倒れる。
エミーリアは事態を見て驚き後悔し、イヤーゴーは哄笑して去る。オテロは妻のなきがらを抱き、ハンカチーフを首に巻いて自殺する。
このバレエでは、オテロが妻の無実を知ったのかはわからない。救いのない幕ぎれは観客に何かを考えさせるものとなっている。
(以上のあらすじは1994年来日時のプログラムからのものです。カンパニーのサイトには目下、簡単な記述と音楽につての記載しかないため、とりあえず、掲載しました。S)
ギドン・クレメルの“琴線の触れ合い( 音楽友の社1997年刊、カールステン・井口俊子訳 )”に次のような記述があります。引用します。
1987年ジョン・ノイマイヤーは彼のハンブルク・バレエ団とシェイクスピアの”オテロ“を創作した。ペルトの”タブラ・ラサ“とシュニトケのコンチェルト・グロッソの音楽からインスピレーションを得たものだった。パリでの公演を見た私はすぐに一緒にやりたいと思った。音楽と演奏者が演出の重要な要素となっていた。タチヤーナが何年かぶりに許可を得て西側にやってきた。まず最初はハンブルクで、それから1989年にはザルツブルクでアルフレード(・シュニトケ)、アルヴォ(・ペルト)、サウリウス、タチヤーナが集まった。ジジ・ハイアットやガマル・グーダといったダンサーたちの踊りも見る人の心を打った。ペルトの“鏡の中の鏡”がもつ純粋さ、そして“タブラ・ラサ”の第二楽章の息をのむような静けさは無垢の極地と恋する者の深い情感にも匹敵した。製作も呼吸も申し分なく調和していた。
(S)