第33回 ニジンスキー・ガラ 2007年7月15日(日)


指揮:クラウスペーター・ザイベル
演奏:フィルハーモニカー・ハンブルク
おしゃべりは・・・:ジョン・ノイマイヤー

神話と童話

I

眠れる森の美女
から
プロローグ:森で道に迷う
グラン・パ・ド・ドゥ


音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
振付:ジョン・ノイマイヤー、マリウス・プティパ
舞台美術・衣裳:ユルゲン・ローゼ
初演:1978年7月16日、ハンブルク
    1890年1月15日、サンクト・ペテルスブルク、マリインスキー劇場
プロローグ:
デジレ王子:アレクサンドル・リアブコ
善の精:エレーヌ・ブシェー
悪の精:ピーター・ディングル
グラン・パ・ド・ドゥ
オーロラ姫:バルボラ・コホウトコヴァ
デジレ王子:オットー・ブベニチェク

シンデレラ・ストーリー
から
パ・ド・ドゥ

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
振付:ジョン・ノイマイヤー
衣裳:ユルゲン・ローゼ
初演:1992年5月15日、ハンブルク
シンデレラ:エレーヌ・ブシェー
王子:ティアゴ・ボーディン

ダフニスとクロエ
から
パ・ド・ドゥ

音楽:モーリス・ラヴェル
振付:ジョン・ノイマイヤー
衣裳:ユルゲン・ローゼ
初演:1985年12月20日、ハンブルク
クロエ:ジョージーナ・ブロードハースト
ダフニス:ヨハン・ステグリ

アムレート
から
パ・ド・ドゥ

音楽:ミカエル・ティペット
振付:ジョン・ノイマイヤー
舞台美術・衣裳:クラウス・へレンシュタイン
初演:1985年11月2日、王立劇場、デンマーク
オフィーリア:シルヴィア・アッツォーニ
アムレート:アレクサンドル・リアブコ

白鳥の湖
から
パ・ド・ドゥ

音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
振付:マリウス・プティパ
初演:1895年1月27日、マリインスキー劇場
オデット姫:ポリーナ・セミオノヴァ
ジークフリート王子:Wieslaw Dudek

くるみ割り人形
から
パ・ド・ドゥ


音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
振付:ジョン・ノイマイヤー
衣裳:ユルゲン・ローゼ
初演:1974年10月27日、ハンブルク・バレエ
バレリーナ:ウリアナ・ロパートキナ
ドロッセルマイヤー:エドウィン・レヴァツォフ
II
パルツィヴァル
- エピソードとエコー
から
アーサー王の宮廷
死と記憶
音楽:ジョン・アダムズ(TheChairman Dance)
    リヒャルト・ヴァーグナー(パルジファルへの前奏曲)
振付:ジョン・ノイマイヤー
舞台美術:ペーター・シュミット
初演:2006年11月24日、ハンブルク・バレエ、バーデン・バーデン祝祭劇場
アーサー王の宮廷
パルツィヴァル:エドウィン・レヴァツォフ
Gornemans de Gorhaut:セバスティアン・ティル
パトリシア・ティッツィ
ジョージーナ・ブロードハースト、アンナ・ラウデーレ、ステファニー・ミンラー、アンナ・Rabstzyn、イリーナ・クロウグリコヴァ、リサ・トッド、ミリアナ・Vracaric、ディナ・ツァリポヴァ
アントン・アレクサンドロフ、ティアゴ・ボーディン、ヨハン・ステグリ、コンスタンティン・ツェリコフ、ジョゼフ・エイトキン、ウラディミル・ハイリアン、パーシヴァル・パークス、オーカン・ダン、キラン・ウェスト


死と記憶

ヘルツェロイデ:クシャ・アレクシ
ガハムレット:アミルカール・モレ・ゴンザレス
迷宮への使者 音楽:ジャン・カルロ・メノッティ
振付・衣裳:マーサ・グラハム
舞台美術:イサム・ノグチ
初演:1947年2月18日、ジークフリート劇場、ニュー・ヨーク
アリアドネ:折原美樹
ミノタウロス:タデイ・Brdnik

祭典
から
最後のソロ


音楽:イゴール・ストラヴィンスキー
振付:ジョン・ノイマイヤー
初演:1972年11月25日、フランクフルト・アム・マイン
ニウルカ・モレド

シルヴィア
から
パ・ド・ドゥ

音楽:レオ・ドリーブ
振付:ジョン・ノイマイヤー
舞台美術・衣裳:ヤニス・ココス
初演:1997年6月30日、パリ・オペラ座バレエ
ダイアナ:ラウラ・カッツァニガ
エンディミヨン:カーステン・ユング

ダイアナとアクテオン
から
パ・ド・ドゥ


音楽:チェザーレ・プーニ
振付:アグリッピナ・ワガノワ
初演:1935年、キーロフ・バレエ、レニングラード(サンクト・ペテルスブルク)
ダイアナ:カロリーナ・アゲーロ
アクテオン:マキシミリアーノ・グエラ

シルヴィア
から
別れのパ・ド・ドゥ

音楽:レオ・ドリーブ
振付:ジョン・ノイマイヤー
舞台美術・衣裳:ヤニス・ココス
初演:1997年6月30日、パリ・オペラ座バレエ
シルヴィア:ジョエル・ブーローニュ
アミンタ:ロイド・リギンズ
瀕死の白鳥 音楽:カミーユ・サン・サーンス
振付:ミハイル・フォーキン
初演:1907年12月22日、マリインスキー劇場
チェロ:トマス・ティラック
ハープ:イリーナ・コトーキ
ウリアナ・ロパートキナ
ヴァルス・レント
(ゆっくりとしたワルツ)
音楽:ジョージ・バランシン
振付・衣裳:ジョン・ノイマイヤー
初演:2005年7月3日、ハンブルク州立劇場
へザー・ユルゲンセン
カーステン・ユング
III
ロミオとジュリエット
パ・ド・ドゥ
音楽:エクトル・ベルリオーズ
振付:アメデオ・アモディオ
初演:1987年4月22日、ベローナ、Atterballetto di Reggio Emilia
ジュリエット:アレッサンドラ・フェッリ
ロミオ:ロベルト・ボッレ
シェエラザード
から
音楽:ニコライ・リムスキー・コルサコフ
振付:ミハイル・フォーキン
初演:1910年6月4日、ガルニエ宮、パリ
S. ディアギレフのバレエ・リュッス
ウリアナ・ロパートキナ
イワン・コスロフ
Ring um den Ring
から
音楽:リヒャルト・ヴァーグナー
    (テープ録音)
振付:モーリス・ベジャール
初演:1990年5月7日、ベルリン・ドイツ・オペラ
ブリュンヒルデ:ポリーナ・セミオノヴァ
ジークフリート:ミハエル・バンツァーフ
Opus 100 - モーリスに 音楽:サイモンとガーファンクル
    (テープ録音)
振付:ジョン・ノイマイヤー
初演:1996年12月20日、ローザンヌのメトロポール劇場でのガラ
イヴァン・ウルバン
アレクサンドル・リアブコ

夜の彷徨
から
ロンド - フィナーレ

音楽:グスタフ・マーラー
    (交響曲第7番第5楽章)
振付・舞台美術・衣裳:ジョン・ノイマイヤー
初演:2005年12月4日、ハンブルク・バレエ
ハンブルク・バレエ・アンサンブル

今回の二ジンスキー・ガラの公演が終わったのはとうとう12時を過ぎてしまいました。本当にダンサーの方々もスタッフも観客も体力勝負。そして今年はゲスト・カンパニーの公演がなくて、“椿姫”のガラ・パフォーマンスだったため、ラウラ・カッツァニガ、エレーヌ・ブシェー、カーステン・ユング以外のファースト・ソリストの方々は休めましたが、他の殆んどのダンサーの方々は休みなしです。本当にお疲れ様でした。
また、今年のバレット・ターゲではまたもアルセン・メグラビアンが怪我でその姿を舞台上に観ることができませんでした。私はこうしてバレット・ターゲでしか観ることができないので、2年間も観ていないのは寂しい限りです。早く良くなってね。また、この日観客の中にエミル・ファスフットディノフを見かけたので、怪我をしたのかしら、と聞いたら、足の骨をちょっと、とのことで大したことはない、とのことでした。彼はグループ・ダンサーの一人ですが、いい踊りをするダンサーです。

“眠れる森の美女” はノイマイヤー版とプティパ版と両方で。
ノイマイヤー版の方は、デジレ王子が森で道に迷って、悪の精に邪魔されながらも、善の精に導かれて森の奥に入っていく、というプロローグ。エレーヌ・ブシェーが善の精を踊ったのは初めてだと思うのですが、とても丁寧で愛に満ちていて素敵でした。ピーター・ディングルの悪の精も悪役ぶりが身についてきて(?)良かったし、アレクサンドル・リアブコの踊りはいつものように素敵。
プティパ版はオーロラ姫とデジレ王子の結婚式のシーン。バルボラ・コホウトコヴァ、オットー・ブベニチェクの二人は正統派のクラシックのパ・ド・ドゥを。バルボラやオットーの魅力はこうしたクラシックでも発揮されるのですが、やはりこれだけの演目があるのですからノイマイヤー作品も踊って欲しいものです。バルボラもオットーもこの作品だけでしたのでとても寂しく思いました。

“シンデレラ・ストーリー” からシンデレラ(エレーヌ・ブシェー)と王子(ティアゴ・ボーディン)のパ・ド・ドゥ。二人とも多分今回が初めてです。エレーヌは善の精に引き続きなのに、まったくそんなことを感じさせることなく、恋を夢見る乙女をたおやかにのびのびと、ティアゴも伸びやかで素直な踊りでとても魅力的でした。若い二人の伸びやかな踊りにはとても惹きつけられました。
そしてこんなにいいティアゴを観たのは初めてだったので、あとでティアゴ・ファンの友人にそのことを話したら、“ティアゴ・クラブ”へようこそ、といわれてしまいました。

“ダフニスとクロエ” ノイマイヤーのパ・ド・ドゥにはリフトを多用するものがあって、これもそのひとつ。ヨハンのダフニスにとって、ジョージーナ・ブロードハーストのクロエはちょっと重そう。ヨハン、頑張れ!、と心の中で何度か思いました。そのためか二人の恋心はあまり伝わってきませんでした。この作品はこういう形でしか観たことがないので、どうにか全幕を観たいものです。

“アムレート” 要は“ハムレット”のことなのですが、原典主義のノイマイヤーのことですから、シェイクスピアの“ハムレット”の原典となった“デンマーク人の事績”から名称を採っています。“ハムレット”という作品もあり、観たことがあるのですが、このシーンではその違いはわかりませんでした。
パ・ド・ドゥはアムレートが外国で勉学するために、愛するオフィーリアと別れを惜しむシーン。
(ロンドンと書いていたのは間違い。あらすじには単に外国としか書いてありませんでした。8月6日)
アムレートの衣裳はオフ・ホワイトのV字セーターの下からだらしなくシャツがはみ出ている、といったもので、自分に興味が持てるもの以外には無頓着、という性格が垣間見えます。オフィーリアはまだ人形遊びをするような幼さがあるが、アムレートに淡い恋心も抱いていて、アムレートがいなくなることに寂しさを感じている。シルヴィア・アッツォーニ(オフィーリア)とアレクサンドル・リアブコ(アムレート)からは愛が伝わってきます。特にシルヴィアの情感の表現は特筆すべきもので、本当に素晴らしいものでした。

“白鳥の湖” ポリーナ・セミオノワとWieslaw Dudek。とても美しいのですが、ポリーナならば、自分で運命を切り開いていくのではないかしら、と思わせるようなところも・・・。とてもきれいで上手なんですけどね。

“くるみ割り人形” いわゆる“パヴロワとチェケッティ”のシーンなのでしょうが、パヴロワを演じたウリアナ・ロパートキナは堂々としているし、チェケッティを演じたエドウィン・レヴァツォフはお姫さまを前にしてもう動けていない(踊っていないとすら書けない)ガチガチ状態。ちょっと彼には気の毒でした。口に手をあてて、僕どうしよう、といっているようなパルツィヴァルを思い出してしまいます。無事終わったときにはホッとしたのは、エドウィン君が気になっていたのでしょうね。ロパートキナを観たのは初めてでしたが、とても現代的な印象を受けました。彼女はバレエ学校時代にこの作品を踊っているわけで、その頃だったらぴったりだったでしょう。

ここで第1部は終了。休憩時間には友人とのおしゃべりに花が咲くわけですが、ハンプソンのCDが欲しくってロビーのショップを覗いていたら、シルヴィア・ポレッティさんに出会いました。ニコニコして近づいて来る人がいるので一瞬誰だろうと思ったのですが、彼女だと私も直ぐにわかり再会を喜びあいました。彼女は“椿姫”から観ているとのこと。いつもギリギリにならないとスケジュールが決まらないので来るのは綱渡りのようだといっていましたが、やはり、万難を排してやってくるのねえ、いずこも同じです。

“パルツィヴァル - エピソードとエコー”
“アーサー王の宮廷” はパルツィヴァルがアーサー王の宮殿に行ってゴルネマンから騎士としての心得を教わるシーン。私はゴルネマンが唇に人差し指をあてて、自分の名誉を貶めるより沈黙を守れ、すなわち“みだりに人にものを尋ねるのは失礼である”との教えを授ける、このシーンが大好きで、セバスティアン・ティルのゴルネマンはとても魅力的でした。そしてパルツィヴァルのエドウィン・レヴァツォフも無垢なキャラクターだったらぴったりです。それにこのシーンのジョン・アダムズの音楽はそれほど違和感がありません。
“死と記憶
 ヘルツェロイデが亡くなる前に、夫ガハムレットとの愛を回想するシーン。パルツィヴァルの公演の時よりずっと集中力があり、ヘルツェロイデのクシャ・アレクシもガハムレットのアミルカール・モレ・ゴンザレスも情感があり感動しました。音楽もヴァーグナーですから問題なしです。
(“パルツィヴァル”の問題点はジョン・アダムズの音楽だ、というのが私の見解です。)

“迷宮への使者” アリアドネを踊った折原美樹さんの存在感には脱帽。自分の使命を果たすのだというアリアドネの強い意志が感じられ、それが表現されていました。美樹さんはこの公演で自分が最年長だとおっしゃっていましたが、年齢を経て、テクニックだけではない表現力というものがあるのだとまたしても再認識しました。ミノタウロス役のタデイ・Brdnikの踊りには、棒を肩にかけてそれに腕を回している状態での踊りはバランスなど厳しいものがあるのでしょうけど力強さが表現されていました。イサム・ノグチの舞台美術はシンプルで象徴的で素敵でしたが、ミノタウロスの衣裳は今ではちょっと古めかしく思いました。もっとシンプルでいいのではないかしら。もっともマーサ・グラハムは亡くなっているし、著作権の問題もあるので安易に変更することはできないでしょうね。
マーサ・グラハムの作品には性的な暗喩が含まれているように思われます。
最後に、書いていいかしら、タデイ君の胴回りはちょっと太めでしたぞ、9月の公演までにはシェイプアップしてくださいね。

“祭典” からニウルカ・モレドの最後のソロです。彼女はこれを最後に退団してバレエ学校の先生になります。そういう意味ではしみじみとした思いがありましたが、正直に書くと、踊りとしてはいつものニウルカの集中力が感じられませんでした。
彼女は優雅に踊るダンサーではなく強い意志を感じさせるとても個性的なダンサーでした。彼女の踊りに注目するようになったのは、ノイマイヤー作品ではなく、マッツ・エクやシュテファン・トスの作品での彼女を観てからです。その後の“十二夜”、“二ジンスキー”、“冬の旅”、“メサイア”での彼女のダンスと演技は忘れられません。ニウルカ、本当にありがとう。観客からは暖かい拍手が贈られました。

“シルヴィア” からダイアナとエンディミヨンのパ・ド・ドゥです。ラウラ・カッツァニガのダイアナからはエンディミヨンを包み込むような大きな愛が感じられ、カーステン・ユングも今年は特に良くて、この二人ならもう一度“シルヴィア”の全幕を観たいなあ、と思いました。ラウラは来シーズンを限りに引退するといっていました。彼女のステージを観られるのもあと1年です。

“ダイアナとアクテオン” 数年前にマキシミリアーノ・グエラがガラで踊って、会場がそのテクニックにどよめいた作品です。マネージュする時に体を空中で1回転させるというテクニックの連続でハンブルクの観客は拍手喝采でした。しかし今回は体も重くテクニックの切れもあまりよくなく、数年前の再現とは行きませんでした。プログラムの構成もあり、グエラがこれを踊ったのでしょうが、彼には、テクニックではなくもっと表現力を必要とする役を踊って欲しいと思いました。彼にはそれがあるのですから。パートナーを務めたカロリーナ・アゲーロはテクニックのしっかりしたきれいなダンサーです。バレット・ターゲでは“眠れる森の美女”のオーロラ姫だけでしたので、ノイマイヤー・プロパーのパートを踊る彼女を観たいです。

“シルヴィア” またまたノイマイヤー版に戻ります。再び出合ったシルヴィア(ジョエル・ブーローニュ)とアミンタ(ロイド・リギンズ)ですが、シルヴィアは今の生活を選び、別れていく切ないシーンです。とても情感があり、悲しみが伝わってきます。若いアミンタを踊るのはもうロイドには無理かもしれませんが、もう一度はハンブルクで全幕を観たいという思いが強くなりました。

“瀕死の白鳥” ロパートキナの登場です。やはりとても現代的な印象を受けました。もともとこの作品があまり好きではないこともあるのですが、1羽の白鳥の生と死にどうにも共感できませんでした。

“ヴァルス・レント” へザー・ユルゲンセン、最後の舞台です。調子のいいカーステン・ユングのサポートもあったのでしょう、流れるような振付であっという間に終わってしまいました。ノイマイヤーの作品としては殆んど葛藤が感じられないので、多少の憂鬱さと明るさでもって、美しく優雅に、へザーはオーパーの最後のステージを終えました。
へザーを最初に凄いと思ったのは1993年、カンプナーゲルの“オテロ”の公演でプリマヴェーラを観た時でした。彼女には匂いたつような愛と美とエロスがありました。そして広島公演での“祭典”のソロ。自己を完全に投入しきっていました。そのことを7日“眠れる森の美女”の公演後に伝えたところ、随分昔のことねえ、と懐かしそうに言ってくれました。そして広島公演は特別だったとも。
観客からはスタンディング・オベイションが惜しみなく贈られました。

ここで第2部終了。休憩時間に友人からチョコレートやクッキーの差し入れあり。5時前に簡単な食事を済ませただけですからお腹もすきます。今度からお水かお茶も持参することにしましょう。カフェは長蛇の列なので、おしゃべりに花が咲くとなかなか買えませんので。

“ロミオとジュリエット” 今回アレッサンドラ・フェリとロベルト・ボッレはアメデオ・アモディオ版を紹介してくれました。音楽もいつもと違ってベルリオーズです。ベルリオーズの曲は詳しくないので、どのシーンかははっきりしませんが、多分ロミオが恋心に刈られてジュリエットの家に忍び込み、愛を確かめあるシーンでしょう。フェリは10代の少女のように初々しく、ボッレも恋する青年でしたが、このシーンだけではアモディオ版の全貌を類推できずに残念です。それにしてボッレのサポートは安心して見ていられます。

“シェエラザード” フォーキンの振付で、ロパートキナ、3度目の登場です。ゲストで3回、というのは初めてかもしれません。
この曲を聴くと必然的に“二ジンスキー”を思いだすので、ここはオットーに踊らせて欲しいと思ってしまいます。イワン・コスロフもいいのですが、さらに魅了する力がオットーにはあるのです。

“Ring un dem Ring” “ニーベルングの指輪”からです。久しぶりに観たのですが、ブリュンヒルデの強さはポリーナの強さそのもの。でもちょっと若いなあ、という印象です。もう少し人生経験を積んだポリーナでもう一度観たいです。ジークフリートのミハエル・バンツァーフに記憶はほとんどありません。申し訳ない。

“Opus 100 モーリスに” は東京バレエフェスティヴァルの時よりもっと熱く踊られたように思います。彼らの動きは自在で踊りすぎるくらいに踊られ、初めてみるのならこれも素晴らしいと思うでしょうが(事実素晴らしいのですが)、初演のイヴァン・リスカとケヴィン・へイゲンを観ている私にとっては、重力に逆らい、自在に動けなくなった身体をギリギリのところで動かしていく、という二人の表現力とどうしても比べてしまい、何かが違う、と思ってしまいます。踊りには彼ら自身が重なってきます。時を経て、二人の踊りがこれからどのように変化していくか楽しみです。

“夜の彷徨” “夜の歌”の後半から最終楽章です。 サイトで発表になったプログラムやイヤー・ブックには“オデュッセイア”となっていました。今回のテーマのひとつ、神話に相応しい演目でした。私は最後にラウラの海を観ることができるのねえ、と喜んでいたのですが、アルセン・メグラビアンの怪我で“夜の彷徨”に変更されました。
グループ・ダンサーに今日のカンパニーのソリストたちが花を添えて登場します。もっとも私はこの最後の楽章をすっかり忘れていまして、グループ・ダンサーの踊りはこんなにゴチャゴチャしていたかしら、と思ったので、あとで聞いたところ、基本は変わっていない、とのことでした。
前半の“ノクターン”は割と覚えているのですが・・・。
最終楽章はロンド形式で、ダンサーは疾走していきます。賑やかに今回の二ジンスキー・ガラは幕となりました。
ダンサーの方々が次々と登場したあと、指揮者のペーターザイベル、ノイマイヤーも登場。一段と盛んな拍手。そして最後にスタッフ、ケヴィン、ラディク・・・。
観客もダンサーもスタッフもホッとしたに違いありません。この長丁場が無事に終わった、ということと、やっと終わったー、というところでしょう。観客の中には演目の途中で帰宅を急ぐ人もいたのですが、この時間を予想して交通手段を確保してきた人もいるのでしょう、去りがたく思って拍手を贈る観客は昨年より多かったと思います。

いつもはそんなに気にならないオーケストラですが、この日はあまりよくありませんでした。後半になるにしたがって調子をあげていきましたが、最初の方では音のはずれが気になりました。どうしたんでしょう?

ほんとうに楽しい6時間でしたが疲れました。
今回、素晴らしいダンサーのロパートキナやポリーナ、ボッレを観てもあまり感慨が湧きませんでした。このことに関しては私自身の関心がどんどん狭くなっているようで少し寂しい思いもあるんでよね。
(S)