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2008年 山形某沢 記憶





ゆっくりと釣り登って行きます











あまりのスローペースに 少しあせりが・・・
このペースでは魚止めまで時間が掛かりすぎる・・
通常 釣り登って楽に3時間で辿りつくのだが






何度も奥様と変わりながら 魚止めを目指す
















奥様に代わり しばらくしたところで

「俺はもう これ以上は行けないよ・・・
戻れなくなるし お前達に迷惑を掛けるし・・」

「せっかく来たんだから お前たちは 魚止めまで行ってきな
俺は先に 車に戻っているから・・・」


私は 当然一緒に魚止めまで行くつもりでいたので
突然言われ 戸惑ってしまった

「ほら 行きなよ!」
の声にせかされ 私は先行している奥様の後を追い
親父と別れた・・・
この時 私は魚止めでのイワナとのやり取りを想像していた
まだ一度も竿を出していないし
イワナの顔も見ていないし・・

私は親父を一人残し イワナの方を選んでしまってた



すぐさま奥様に追いつき しばらく後ろから様子を見ていると
私の存在に気付いた奥様が振り返り
私の側に駆け寄ってきた

「あなた お父さんは?」


事情を説明すると

「バカ! じゃないの!」

魚止めの大イワナの未練もあり
魚止めまでさ 行こうかな・・・と


「あんた なに考えてるの! がん患者だよ!」
「末期のがん患者だよ! 一人で帰れるとでも思っているの?」

「何で早く言ってくれなかったの?
すぐに戻ろうよ!!」



私は奥様に言われるでもなく 自分のおろかさに
今更ながらだが気付いた

奥様共々 釣り道具を撤収しザックに仕舞い
今来た道を取って返した・・・



しばらくして 親父に追いつき 皆で入渓地点を目指した


高さ数メートルの崖の入渓点だが
今の親父にとっては難関となっていた
顔が青くなり 息も不正になり せき込む
途中 何度も休憩し やっと上りきり 無事帰ることが出来たが
やはり一人で帰すべきではなかった・・・

健常者ではわずか数分で上りきる場所であるが
この時はゆうに30分は掛かっていた




私は この釣りで 改めて親父の釣りを間近に見た


低く腰を落とし ポイントへの近寄り・・・・
だが 一つだけ不思議に思っていた事がある

同じポイントを 何度も何度も流す事である
その光景を 何度も見ているうちに ある言葉を思い出した




「いいか イワナつりは足で釣るんだ!
ポイントは 2,3度流して出なければ その場所は諦め
次のポイントを探せ! 長居はするな!」




親父の言葉であり 私が言われた言葉である
それが今 まったくの逆をしている・・・

何度も何度も 同じところを流し 粘る

粘ると言うより いつくしむ様な 楽しんでいる様な 必要以上に
あきれるほどで 3分・・5分と粘るのだ

後で気が付いたのだが
あまり進むと今の体力・体調では 帰れないとの思いがあったのだろう
また 私たちに迷惑をかけてしまうとの思いもあったのだろう・・
だから 一つのポイントを 大事に大事に しつこい位流している

それに気付いてからは 胸が詰まる思いで見ていた
親父の好きなように釣らせてあげればいいじゃないか
その為にここへ来たんじゃないか!


分かっているようで 何にも分かっていない私
奥様の方が何倍も分かっている事に気付かされた

人生最後のつりは3時間余りで終了
距離にして500メートルも進んでいない

私の独りよがりで 魚止めまで行くなどは無理な話で
渓に立てただけでも奇跡である

イワナ釣りキチガイが人生最後の釣りを
好きな釣りをこんなに頑張ったんだ

魚止めまで行ければと思う私以上に
これ以上は進めないと 断念した親父の気持ち・・・・



私のポケットの中には 弟から託された
痛み止めのモルヒネが数粒しまってある





親父お気に入りの 私の車
この車には楽しい思い出がいっぱいあるんだ!と

その後 昔 親父と釣り歩いた場所を車で巡り
思い出を新たに









こぼれる笑顔に
お互い無理を承知の旅だったね・・・





顔がむくんで 別人のような私
ほとんど寝ていません






こらこら・・・まっいいか!





この景色 忘れない





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