あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律および医師法適用上の疑義について
(昭和四五年八月一五日)
(崎防(捜)第二八五号)
(厚生省医事課長あて長崎県警本部長照会)
管下佐世保警察署管内において、いわゆる「すじ切り治療」と称して次のような施術を行なっているが、法適用上に疑義があるので、貴省の見解を得たく照会する。
記
1 事案の概要
被疑者は医師でなく、かつ、あんま、マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律に定める免許または除外事由がないのに、昭和四十二年八月頃から昭和四十五年七月頃までの間、佐世保市須佐町十一番二十七号の自宅ならびに佐賀県伊万里市内数か所に出張して、M(六四歳)ら七○名位に対し、神経痛および高血圧治療と称し患者の腰部または背部にきゅうをすえ、同所をわずかに切開して表皮に接した細筋を針で引出して刃物ですじを切るいわゆる「すじ切り治療」と称する治療を施し報酬を受けていたものである。
2 具体的施術行為
一 経穴測定
同人の施術する「すじ切り治療」の経穴は、高血圧患者の場合は背部に、神経痛患者の場合は腰部に、それぞれ二か所の経穴があるとしている。
経穴の測定は、背部の場合、細紐を使って患者の肘から拇指の先端までおよび拇指と示指で作った輪の円周を測定して加算し、その長さの計測紐を作って紐の中心を喉仏の下にあてがい、両端は左右の肩から背部に垂らして左右肩甲骨内側に接する部位を経穴とし腰部経穴の場合は、紐は使用せず自己の両手を患者の骨盤上部にあてがい、そこを基点として指で経穴を測定している。
二 きゅうをすえる意味
きゅうは、もぐさを小豆大につくり、背部の経穴には各一三回、腰部経穴の場合は各一五回すえているが、このきゅうは、すじきりをする部位の神経を麻痺させ、あるいは止血に役立てるためにすえるものであるという。
三 すじ切りの方法
前記きゅうをすえたあとを、西洋かみそりを使って長さ一ミリ位深さ○・五ミリ位に切開し同所の細筋を木綿針でかきあげてそりをあてすじを切るという方法である。
なお、すじ切り治療したか所は、アルコールで消毒し二〜三日入浴を禁ずるよう注意を与えている。四 被疑者のいう「すじ切り」の効果
経穴のすじを切ることによって神経に刺激を与えるため血液の循環を促進することになり、神経痛や高血圧の治療効果があるとしている。
3 質疑
前記施術行為は、次のいずれの規定で問擬すべきか。
一 医師法第十七条医業(医行為)の禁止
二 あんま、マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律第一条無免許きゅう業の禁止
三 前同法第十二条医業類似行為業の禁止
(昭和四五年九月二日 医事第一四一号)
(長崎県警本部長あて厚生省医事課長回答)昭和四十五年八月十五日崎防(捜)第二八五号で御照会の標記の件について、次のとおり回答する。
記
御照会の行為は、当該行為を行なうにあたり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある行為(医行為)であり、非医師が業としてこれを行なうことは、医師法第十七条の規定に違反するものと解する。