原因不明な踵の壊死
Q:
はじめまして。
事の始まりは、今年の3月5日におこりました。
夜中、階段から転落してしまい、主人に救急車で、夜間にやっている外科の診療所に、連れていかれました。そこでの診断は右足首の捻挫と言うことで、X線で診療は終わりました。
しかし、何故、こうも、足首がぶらぶらとなっているのかなんてことは深く考えませんでした。その後、精神的な疾患で(摂食障害)で、すぐ病院に入院しました。
5日も経ってから、右大腿骨裏側から、足の指まで、麻痺を起こしていることに気がつきました。触っても感覚がなく、いつも足先は冷たく、必死に暖めたりもしましたが、効果はなく仕方がないので、放っておいてしまいました。
3月10日ころに、足の踵(内踝の下)に両方潰瘍が出来始めました。私が入院していたのは精神科だったため、潰瘍に関しても、きちんとした治療が行なわれませんでした。そこの潰瘍だと思っていたところが、その後壊死していたと言うことにのちのち皮膚科で判明しましたが・・・。
病院を、退院して何とか自力で、左足を使い歩行をしていますが、何故、こうなっているのかと言う疑問にぶつかり、中規模の総合病院に通い始めました。
右足の、麻痺、むくみ、壊死・・・どの科にまずは行くかもわからず、整形・皮膚科・内科・心臓血管外科・外科に行きました。整形では、『腓骨神経麻痺』との診断でした。
神経伝達検査、X線、MRIなど、検査はしましたが、これといって原因になる要素はないといわれ、理学療法も受けても無駄だと言われました。今度は皮膚科に行きました。
Drは、両方の踵とも壊死をしているので切り取らなくてはいけないと言い、壊死をしている部分を切っていきました。右は、骨のところまで達していて骨がむき出しの状態になりました。軟膏を、状態に合わせ徐々に変え何とか9月ころに治りました。しかし又、治った矢先に右足に2つ壊死が出来現在自分で治療中です。
血液の病気ではないかと思い(膠原病、糖尿病など・・)内科に行き、血液検査を行ないましたが、そこの病院ではわからないとの事でした。
では、足先が冷たくなっていると言うことは、血管系の物かと思い、心外に行きました。足の血圧や、検査をしましたが、少し、右足の圧が低いと言うことで、たいしたことはないといわれ、やはり原因はわかりませんでした。
右足の壊死の状態が悪いときに、右そけい部にゴルフボールほどの大きさのしこりがあり、心外、外科で、切り開いて、見ないとリンパ管か、静脈瘤か分からないと言われたので、そんな判断がつかない医者に、見せたら大変だと思い、急遽病院を変えることになりました。
J大学付属病院に通い始め、そこでも、原因がわからないと言われてしまったので、又病院を変え、今はM市立病院に通っています。しかし、そこでも、整形外科のDrには、もう足は治らないだろうと言われています。やはりリハビリを受けても駄目だと・・・。
だんだん、足の甲のほうにぴりぴりとした痛みが走っていったり、足が、痛くて眠れない夜もあります。しかし本当の原因は何なのか、なぜ、腓骨神経麻痺なのに腓骨より上(大腿部)にまで、麻痺が起こり、浮腫みが起こり、壊死を起しているのか??謎です。右足をかばい、左の腰が、最近ではひどく痛みます。
4件もの病院に行き、分からないと言われ、だんだんと、自分は、どんな体になっていってしまっているのだろうなどと考えると不安でたまりません。
私は、どんな治療を行ない、どのような、病院にかかればよいのでしょうか?何もかも分かりません。日本の病院・医療では分からないのですか??それとも、何処に行っても分からないのでしょうか??
どうか、お教えください。よろしくお願い致します。
A:
何とも痛々しい症状ですね。実は、あなた様の質問のメールを拝見して、踵の壊死がただごとでない症状であり、メールを頂きましてから、大変難しい病気であり、私には到底判断出来るものではないように思い、お返事を差し上げるのに苦慮しました。
腓骨神経麻痺と踵の壊死が主症状でありますが、単なる捻挫だけで壊死を発生するとも思えませんし、幾つもの病院でX−線やMRIそして、血液などの精密検査をうけているにもかかわらず、下肢の血圧が多少低いというだけで壊死の原因がよく判らないということであれば、私には到底判断出来る病名ではないように思います。
確かに、腓骨神経麻痺があれば血液循環は悪くなるであろうし、圧も下がることはあり得ます。ただ一つ気掛かりになることは、踵の壊死による鼠径部の腫脹です。原因が不明というだけでかたずけられる病気ではないように思われます。
★下肢の血管のどこかに血栓が出来て、動静脈に閉塞が発生しているとか?
★血栓がないまでも、何らかの原因で、血液循環が悪いとか?
★腰椎に異状があるとか、例えば、腰部脊柱管狭窄症の初期であるとか?
★あるいは、細菌性のものであるとか?
そういうことも考慮して、今一度再検査をされて見ては如何でしょうか。
以前当院へ来院しておられた患者さんで、飛行機に乗っている際に今でいう「エコノミー症候群」で、足部が冷たく激痛を伴い、これから来院したいとの飛行場から電話が入り、直感的に動脈に血栓を発した可能性があると判断して、病院へ紹介し手術をして、壊死にならずにすんだという事例がありました。
あなた様の場合、診断では「腓骨神経麻痺」となっており、転落後に麻痺症状が発生したということであれば、転落が要因になった可能性は十分にあります。
原因としては、膝窩部周辺の外傷で侵されることが多く、股関節部の脱臼や坐骨神経麻痺でも、腓骨神経は障害されます。
睡眠時・泥酔時・長時間しゃがんだとき、あるいはギプス・副子などの圧迫、ときには神経炎による麻痺もみられます。
つまり、腰髄から出た神経は、座骨神経として下肢へ走行します。大腿部後側の中央で腓骨神経と脛骨神経に別れ、腓骨神経は膝の外側から下腿の前に出て足部へ下って行きます。
腓骨神経の部位がお解りいただけたかと思いますが、「腓骨神経」は腰髄か発していますので、大腿部も麻痺することがあり、腓骨神経は最も外傷を受けやすい神経の一つです。
私のところへ来院した患者さんは、子供たちに剣道を指導しているだけで、はっきりした上記の原因もないのに、朝目を覚ました時、腓骨神経麻痺を発生していたという実例もあります。
日本の医学の水準は世界でもトップクラスと聞いています。優秀な先生はおられるはずですので、最後まで諦めず治療に専念して下さい。どうぞ、お身体を大切になさいますように。