鍼灸の働き




 鍼灸はなぜ、腰痛やかたこり・頭痛などの症状に効くのだろうと疑問をお持ちの皆さんもたくさんおられると思います。それもそのはずです。あの1本の細い鍼、米粒ほどの艾で、治療するわけですからそう思われるのも当然のことでしょう。鍼も灸も生体に刺激を加えることについては同じことです。

 鍼が生体に及ぼす作用については、いまだに完全に解明されてはいませんが、最近の研究によりそのメカニズムが徐々に明らかになりつつあります。「ゲートコントロールセオリー」はその代表的なものですが、更に、鍼の刺激により、体内にモルヒネ様物質が産生されることが解明されています。その一つが、エンドルフィンという物質で、沈痛作用があるといわれています。

 疼痛が消失することで、筋肉の緊張が緩和されます。結果として、体内の血液循環が改善されて、筋肉内に血液が満たされ、疲労物質である乳酸や活性酸素が除去されると同時に炎症も回復することになります。局所だけでなく、全身的に循環が改善されれば、自律神経失調症なども改善されますし、灸と併用することにより、ご婦人に多いといわれる冷え症にも効果が増します。

 灸は艾に火を点火して、その熱刺激を生体に与えることにより、病気を治すという治療法ですが、鍼と同様、局所の循環を改善するとともに、全身にも作用して頭痛・肩こり・腰痛・下肢の冷え・胃腸機能低下などの慢性症状を快復する働きがあります。

 灸はどちらかというと、慢性症状に効くといわれ、単独でもちいることもありますが、鍼と併用することにより、より一層治療効果を高めることが出来ます。

 生体リズムのバランスが崩れることにより、内臓などに異常が生じた時、体壁反射として、皮膚や皮下組織・筋や筋膜または腱・神経・血管・リンパ管・骨膜などに反応が現れます。

 具体的には、知覚過敏・筋肉強直・代謝障害・血管収縮異常感覚などです。つまり、内蔵に何らかの病的異常が発生すると体表に反応が現れてきます。その代表的なものは、圧痛・硬結・感覚過敏や鈍麻・筋緊張亢進や低下などです。

 鍼灸医学は、このように体表部に現れた諸種の反応を調べて、それによって全身機能状態を知り、また、内臓疾患の所在ないしは病状の推移を察知し、それによって診断しまたは、治療方針を設定しています。

 鍼灸は機械的刺激であり、灸は温熱刺激であります。したがって、生体に直接的には薬理作用はありませんが、体壁部の反応点を治療点として、応用し、刺鍼しまたは、施灸して全身機能を調整しまたは、内臓機能の異常を調整します。すなわち、鍼灸は生体に現れた異常反応点を穴としてとらえ同時に治療点ともしています。

 鍼灸の大きな目的は、生体が持つホメオスタージスの向上を促進することにあります。すなはち、免疫力を高めることにより病気を治すことです。



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