経絡には12本があり、それぞれ次の名称が付けられています。
「手の太陰肺経」・「手の陽明大腸経」・「足の陽明胃経」・「足の太陰脾経」・「手の少陰心経」・「手の太陽小腸経」・「足の太陽膀胱経」・「足の少陰腎経」・「手の厥陰心包経」・「手の少陽三焦経」・「足の少陽胆経」・「足の厥陰肝経」などです。
この12本の経絡はそれぞれ個々に働いているものではなく、「手の太陰肺経」から足の厥陰肝経」まで、1本の管のように繋がって作用しています。経脈は人体を流れる気血の本管としてとらえられており、絡脈は経脈と経脈を繋ぐ支脈であるといわれています。
鍼灸の成り立ちで、鍼灸は自然哲学に基づいて発展してきたと書きましたが、「天地人」という言葉があります。
すなわち、天と地の間に人があり、人体も小宇宙の一つであるという考えです。
地球が昼と夜があるように、人体にも陰陽と表裏があり、その部位によって区分されています。太陽が当たる部位を「陽」・太陽が当たらない部位を「陰」ととらえています。そして、人体に経絡が配置されており、この経絡を気血が巡行していると考えられています。経絡はその流注において、人体の各内臓を巡り、気血が巡行することで、生命が維持されているということになります。気血の加不足が生体の異常反応として経絡上にある穴に現れることになります。これは、陰陽五行説に基づいた考えに立った東洋医学の思想です。
経絡には、人体の流注において、多数の経穴(つぼ)が存在しています。この経絡中の気が増加したり、減少したりあるいは、内蔵に何らかの異常が発生することにより、この穴に異常反応が出現するようになります。
では、診断治療はどのような方法があるのでしょうか。
「望診」・「聞診」・「問診」・「切診」・「脈診」などがあります。
望診は、患者を望めて診察するもので、現代医学の視診に相当します。例えば、顔面や前腕の皮膚の色、大小便色などで、5色により臓腑の病を判定しまた、それぞれの色の状態によって、種々の予後を示すことになります。
聞診は、聴覚や嗅覚によって診断する方法で、5音・5声・5香などによって5臓6腑の病の存在を判定します。腹鳴や腹水音などもその一つです。また、嗅覚では膿汁・大小便・口臭体臭などを対照として、病の所在を判定をします。
問診は、患者に尋ねて、その訴えを聞き、病を判定する方法で、現代医学の問診に似ています。すなわち、既往症・家族歴・現病歴・発病以来の治療の概要・体質傾向などを尋ね、自覚症状を問診の手がかりにします。
切診には、脈診・腹診・切経があり、患者に触れて病の状態を知る方法です。 脈診は、橈骨動脈に手指を当てて動脈の微妙動きを察知して判定します。
例えば、悪寒・熱・汗・食欲・口渇・便通・排尿・月経・出血・睡眠・眩暈・肩こり・冷えと上せ疼痛・浮腫などが対象となります。
腹心は、胸腹部に両手を当てて、患者の鎖骨下部・胸骨上・心窩部・臍部・下腹部・胸脇・側腹部などを触診し、その部に現れた隆起・陥下・皮膚の滑らかさ・乾熱・硬さ・厚さ・ひきつれ・圧痛などを察知して判定します。
これまでに書いた経絡とその診断については、極々簡単に記したものですので、診断については、もっともっと複雑多岐に渡っており、簡単なことではありません。特に、証の決定には、たくさんの情報をもとに判断しますので、高度な知識と熟練が必要となります。