昔は打膿灸(中指頭大や直径1.5〜2センチ・長さ2センチ程度)といって、大きい艾でお灸をしたものですが、火傷が大きいため、局所に水瘍あるいは、膿瘍が液が浸出して、瘢痕治癒するまでに数週間かかることから、現在はほとんど用いられていません。
したがって、通常用いられている灸は、米粒または、半米粒大の艾を使用するため、皆さんが想像しているような熱さはなく、心地よい感じがします。
艾は山野に野生する蓬(菊科植物の多年草)から作られますが、5、6月ころ、蓬を刈り取り、乾燥させて石臼でひき、篩にかけます。これを、繰りかえし行って、後に残った白い線維様物質表白して、長く貯蔵した物がさらし艾です。
艾には、揮発性油・値チネオールテルペン類・アルコールなどの成分を含んでいますが、艾が燃焼温度が低く、緩和な快い温感を与えているのはこのためです。
艾は産地によりまた、品質によって含まれる成分に多少の相違がありますが、艾の品質に関係の深いのが灰分であるといわれます。この灰分の含有量が少ないほど艾の品質が良いといわれています。そして、艾を散艾と切艾との2種類に分けます。
散艾(ちりもぐさ)は、精製した艾を何ら加工せず、そのまま適宜の大きさ(糸状・麦粒大・米粒大・豌豆大)に指でひねって艾柱を作って用いる物ですが、一定の基準があるわけではなく、術が病症に応じて適宜に定めているものです。
切艾(きりもぐさ)は、1寸4方紙片艾を巻き、細長い円柱状にして、これを10個切って作ったものですが、大切り・中切・小切りなどに分けられています。
艾を燃焼させますと、徐々にその温度が上昇(漸増)して最高に達し、徐々に温度が下降(漸減)します。同大の艾(がいちゅう)でも、ひねりの硬軟や湿り気などの度合いによって、最高温度・燃焼時間および温度の上昇下降の経過が異なります。
柔らかくひねった艾(がいちゅう)は、最高温度が低く緩和で燃焼時間も短いです。その反対に、硬くひねった艾(がいちゅう)や湿った艾(がいちゅう)は最高温度も高く、したがって、点火から立ち上がりまでの時間が長く、燃焼時間も長くなります。
灸は大きく、有瘢痕灸と無瘢痕灸とに分けられています。
有瘢痕灸は、体表の一定部位に置いた艾Tを燃焼して、皮膚その他の組織に温熱的刺激を与え、火傷を生じさせる方法です。その生体作用起点は、温熱刺激と火傷部に生ずる火傷毒素(ヒストトキシン)が有効な生体反応を起こします。
また、無瘢痕灸は皮膚に瘢痕を残さず、緩和な温熱的刺激を与える方法です。これには、温灸器を使用する方法・乾性温灸・湿性温灸などがあります。
灸は、温熱的刺激であることはお分かり頂けたと思いますが、灸もまた、体表の特定の部位に刺激を加えることにより、効果的な生体反応を起こし、身体の変調を強制して、身体各部に影響を与え生体の機能を調整して、疾病の治療や保健に寄与しています。
灸は、国が定める国家試験に合格した者意外は、他人に施灸をしてはならないことになっています。