第28回日東医学術大会を終えて


ーー信濃路に咲いた「学術の花」ーー




 長野県戸倉町の科野の「ふるさと創造館」に入るや、地元の若々しい中学生さんらの出迎えを受けて「この大会はこれで成功」と感激し、長野県師会(萩原俊師会長)会員、地元自治体をはじめとする県民の方々の御支援、城田実行委員長を中心とする大会運営役員並びに学会役員諸氏の努力に深く感謝した。「はじめよければおわりよし」と言われるように、2日間の日程を成功裡に大きな実績と感動のうちに終えられたのである。

 10月19日会場を埋め尽くした参加者を迎えて緊張の開会式が始まる。会場実績350名、関係役員も含めると400名を超えるという受付の報告に、思わず胸を熱くした。

 私の基調講演に引き続き、浜松医科大学保健管理センター永田勝太郎先生のいつもながらの魅惑的な語り口による特別講演1では、「21世紀の中心的医療である全人医療を推進する役割を我々も担うことができるのだ」という自信と夢が与えられた。

 続いては、一般口演10題と実技ワークショップ3題が4会場に分かれて繰り広げられ、どの会場も熱心な受講者で埋め尽くされた。一般口演は10題に精選した結果、いずれも質の高い発展性のあるものばかりであった。

 実技ワークショップでは筑波大学理療科教員養成施設吉川惠士先生の「膝関節痛に対する電気針の実際」の講演と実技指導は、臨床実践におおいに役立つものであり、神奈川衛生学園新井恒紀先生の「リンパドレナージの実践」は、手技療法の展望を開くものとして熱い期待を集め、神奈川県川崎師会・中間法人東京都師会の「在宅ケアの実践演技」は、多くの実践家に対して大きな示唆を与えた。夜の懇親会は宿の「白鳥園」開館以来の大人数ながらも和気あいあいのうちに信州料理と美酒を参加者一同満喫した。

 翌日は、水嶋クリニックの水嶋丈雄院長による「自律神経に対する鍼灸手技のアプローチの実際」に関する特別講演2に聞き入り、今日からの臨床に即、役に立つ内容であった。

 そして、人気抜群の田中康夫長野県知事もかけつけ「鍼灸手技も科学に基づいた西洋医学を乗り越え、人によって人が癒される医療としてますます発展するものと信じています」とご挨拶をいただき、大いに会場を沸かせた。「経絡・経穴客観化への道」と題したシンポジウムは本学術大会3年連続の試みであり、今回は現場の研究者としては超一流のメンバー、名古屋市立大学名誉教授渡 仲三先生、関西鍼灸短大名誉教授藤川 治先生、筑波大学理療科教員養成施設徳竹忠司先生のシンポジウムであり、今後の研究の方向性が得られたものであった。

 最後の特別講演3として、東京女子医大川嶋 朗先生の外来臨床現場からの「水の提言」をたっぷり聞かせていただき、医療の原点を示していただいたことに感無量であった。

 来年は福島県。勉強にあわせて、安達太良山の紅葉と裏磐梯の湯けむりに映える阿武隈川の清流に花開いた智恵子抄の世界を楽しみましょう。10月17・18両日にあたりますが、今からご準備いただいて郡山で再会しましょう。

(報告:白畠 庸)


(社)全日本鍼灸マッサ−ジ師会様の御好意により、斯界通信平成14年12月号より転載



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