肋間神経痛




 疼痛は肋間神経の高さに従って胸郭を半帯状に取り巻くように放散し、呼吸や咳などの胸郭運動により増強されます。神経痛は胸神経あるいは肋間神経が主であり、種々の要因で起こります。

 原因としては、肋骨への癌転移、多発性骨髄腫、肋骨骨折、肺あるいは縦隔洞腫瘍、脊髄あるいは脊椎腫瘍、変形性脊椎症、脊椎カリエス、大動脈瘤、脊髄症、胸膜炎、帯状疱疹などが挙げられますが、原疾患が不明のこともあります。特に夏、冷房に当たり過ぎて肋間神経痛を発生することがあります。注意したいものです。重要なことは心臓、肺、食道など胸部内臓器疾患との鑑別が必要です。

 Nさん男性五十歳代は、肋間神経痛として個人医院で治療を継続中であったが、鍼灸が効くと聞いたと来院。
 2回程治療したが、処置後は一時的軽減したかのようであったが、それほど疼痛は改善せず、大きく深呼吸をさせると息に悪臭があり、肺癌の疑いありと判断、再度医療機関で再検査を勧めました。検査結果は思った通りでした。

 Oさん六十歳代女性は、右背部から胸部に激痛を訴え来院。問診すると一昨日より痛くなり今日まで我慢して仕事をしていたといいます。
 脊柱の疼痛部位を圧迫すると、飛び上がらんばかりに痛がります。胸部へ激痛を放散するため、ベッドから起きあがることが出来ない状態です。脊椎圧迫骨折の疑いありとして医療機関を勧めました。
 その日は、日曜日のため鍼治療した後、レーザーを照射して、安静するようにと告げて帰宅させました。翌日X−線の検査結果第10脊椎圧迫骨折であったと報告がありました。

 肋間神経は、脊髄から発して肋骨下縁内側を走って胸部の前あるいは腹部に達していますので、肋間神経痛は、脊椎や胸部内臓の疾患との鑑別が難しいのです。

 上の2例のように単なる肋間神経痛と考えず、数日お灸をして改善されないようであれば、専門の鍼灸院もしくは医療機関を受診して下さい。それを念頭においた上で以下の治療を行って下さい。

 代表的なつぼは、厥陰兪・心兪・膈兪・肝兪・P中・大包・帯脈・淵液・章門・期門などですが、部位を記述するのが大変難しいため、簡単に記すことにします。

 厥陰兪・心兪・膈兪・肝兪は背部にあり、脊柱の外方3センチにあります。上から第4・第5・第7・第9の高さに位置します。

 淵液・大包は側胸部にあり、腋窩線上にあります。

 P中・期門・章門は胸腹部にあり、P中は胸骨上で左右の乳頭の高さで胸骨と交わる点です。期門は乳線上で、第肋軟骨の下際です。章門は第11肋骨先端の下際です。

 肋間神経痛には、医療機関では神経ブロックを行うようですが、灸は3〜5壮すえるようにして下さい。

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