石灰沈着
ある日の夜、りりりんと電話が入る。急いで受話器を取ると一人の患者さんからでした。
患者五十歳(女性)
初診日平成14年12月三日
数時間前漬け物の準備をしている最中に、右肩関節がぎくっとした瞬間激痛が発生して、腕が動かすことも出来なくなりましたと言います。
「前も・後ろも全く駄目ですか」と尋ねると、そうだと返ってきます。肩関節に何らかのトラブルが発生したことは間違いないと思われますが、これだけでは様子が判断出来ませんので、取りあえず安静にして明日の9時の予約をして頂き電話を切りました。
患者さんは予定通り翌日の定時に来院しました。患部を触診しますと、肩関節は腫脹し発熱しています。
肩関節を外旋させる筋は、まとまって関節包に付着しており、50歳をすぎれば変性して、外傷がなくても自然に断裂することがあるといわれます。
あまりの激痛のため上肢は固定された状態になっており、ROM(関節可動域)はゼロに等しい状態であり、靱帯損傷や筋肉の断裂なども考慮して、取りあえず整形外科の診察が先決として医療機関を受診して頂くことにしました。
昼頃患者さんからの電話で、X−線の検査結果石灰沈着で、他に肩関節には異常ないとの連絡でした。1週間の薬を処方してもらっただけで、特に注意もなかったと言います。患者さんは強く鍼治療を希望していますので、ほっとパックと鍼・レーザーで治療することにしました。
前処置として、ホットパックで患部を15分温めた後合、谷・曲池・臂臑・肩K・肩貞肩井天宗などの経穴に鍼治療し、レーザーを照射しました。
数日で疼痛をはじめ、腫脹と熱も消失して治癒しましたが、しかし、肩関節があれほど激痛や腫脹し発熱しているのに、石灰沈着だけとは思えない状態でした。やはり、肩関節の靱帯か筋肉に損傷があったと考えるのが妥当と思われます。
患部に熱があるときは、冷湿布というのが原則ですが、上記の症状の場合は、石灰を早く除去するためにも、患部を温め血液の循環を促進することが最適と考えての処置でした。
五十肩にも少し書きましたが、肩関節に急性の激痛が発生したときは、いまに治るだろうと我慢せず、鍼灸院ないし医療機関を受診されることを勧めます。
つぼの部位については、下記の経穴名検索をご参照下さい。