帯状疱疹・ヘルペス




 Kさん女性(75歳)は、数日前左背部に夜眠れないほどの激痛が発生して、掛かり付けの内科医の先生に診てもらったが、異常ないし多分何か運動でもして痛くなったのだろうといわれて当院に来院しました。

 問診してみると、激痛のためここ二日夜一睡もしていないとのこと。しかし、昼間はそれほど激痛はないと言います。現在最も痛い部分はどこですかと聞くと、左健康間部付近だと言います。深呼吸をさせても、吸気時に軽度の疼痛を誘発しますが、耐えられないほどの痛みではないようです。

 橈骨動脈で脈を拝見しても正常であり、胸背部を触診すると、背部では、第3肋骨〜第7肋骨(肋骨下縁)の高さ及び、腋下線、胸部(胸肋関節)も背部と同様の高さに圧痛が認められるものの、内臓に異常があるようにも思えません。

 肋間神経痛であれば、睡眠を妨げるほどの激痛なら呼吸困難があり、しかも吸気時苦しいはずなのですが、患者さんの訴える症状からみても、肋間神経痛とは判断しにくい感じです。

 当院を来院した時は、発生から三日経過しており、患者さんには「帯状疱疹・ヘルペスウイルス」の感染も考えられると説明した上で、疼痛の緩和を目的に状態を観察しながら、鍼とスタービームで治療を開始しました。

 3回目の治療に来院した時、左胸部全体に疱疹が出現しました。やはりヘルペスでした。右胸部にも多少ありましたが、最も激痛があった背部には疱疹は出ていませんでした。

 数十年前までは、「帯状疱疹・ヘルペス」はお灸で治療していたようですが、私はすぐ医療機関で治療をすることを勧めました。

 Kさんを受診した内科医の先生は、「早く発見してもらってよかったね」と言っておられたと患者さんからの報告でしたが、疱疹が出現してから二週間後来院した時は、胸部に軽度のちくちくした痛みがある程度にまで回復したということでした。

 医学大事典には、《疱疹ウイルス》や《ヘルペス後神経痛》について、以下のように書かれています。

 ヘルペスウイルス科。球形の外側にエンベロープを有するDNA型ウイルスである。直径は180〜200nmで二本鎖のDNAを有する。人のヘルペスウイルスには、単純ヘルペス、水痘、サイトメガロ、EBウイルスがあり、サルのBウイルスもこの群に入る。特徴は潜伏感染の様式をとることである。

 帯状疱疹を起こす水痘・帯状疱疹ウイルスが脊髄後根神経節やそれに対応する神経節を侵し、疱疹が治癒した後も数カ月また何年にもわたって起こる疼痛である。好発部位は三叉神経第1枝の領域であり、そのほか肋間神経にも起こる。疼痛は痒いような、刺すような、焼けつくようななど、種々に表現される。比較的年齢の高い人に多く、種々の治療も奏効しないことが多い。

 Kさんの場合は、肋間神経であったことと、発見が早かったことそれに、疱疹をつぶさなかったことが、比較的短い期間で治癒出来たと思われます。

 しかし、三叉神経の場合は疼痛も激しいことや脳神経も侵されかねないことを考えれば、安易に自分で治療せず、早く専門医の受診をされることを勧めます。


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