鞭打ち症
鞭打ち症は、外力により頭が激しく前後に振れたとき、頸椎(ケイツイ)および周囲の支持組織が損傷を受けて起こる諸症状です。受傷の瞬間の頭部の振れ方が、鞭の先が描く軌跡に似しているので、この名があります(鞭打ち症候群)。
鞭打ち症は自動車の運転中の事故が主な原因ですが、具体的には、自動車で追突された時などに、躯幹が前に圧されるとともに頸部が衝撃的に後方に振れ、頸椎捻挫(ネンザ)により筋・靱帯・関節、時に脊髄が損傷することもあります。過伸展損傷といわれるもので、痛み・めまい・耳鳴りなどがあり、しばしば症状は慢性化します。
患者さんは自覚症状として、頭痛・頭重や頚部から上肢にかけて疼痛と痺れがあり、頭部の前後左右あるいは、回旋時疼痛が増強すると訴えます。X−線の検査結果、頸椎に以上が認められないときでも、自律神経失調症様症状が持続して、頭痛や頭重に悪心を随伴することもあります。
触診的には、頸椎の周囲の僧帽筋や板状筋・胸鎖乳突筋のSPASMが認められることが多くあります。
治療は、安静にすることは勿論、重症の場合は、医師の受診加療を勧めますが、頸椎に異常がなく、持続性頭痛・頭重や肩こりがあり、上肢が痺れるなどの症状には鍼灸が奏効します。
頭痛や頭重・めまい・耳鳴りなど、症状が一進一退する場合、鎖骨内側で2〜3センチ程度上方に鍼を刺入して、星状神経節を刺激する方法もありますが、これは高度の技術を必要とするため、医師との共同治療が安全でしょう。
前処置として、ホットパックで局所を十分温めてから、鍼治療すると筋肉のSPASMがより速く改善されると思います。
代表的なつぼは、天柱・風池・肩中兪・肩井・曲池または、三里・外関・合谷・D門などです。
患者 M.Y.さん 男性(60歳)
初審 平成11/7/3
平成11年4月車の運転中信号待ちしている際、後方より追突される。X−線の検査結果頸椎には異常はないと診断されたが、全身倦怠感及び上肢の痺れと持続性頭重感があり、思考力がないと訴えます。
治療は全身倦怠感を主に全身に軽度の鍼をした後、頭重・上肢の痺れに対して、僧帽筋・板状筋・胸鎖乳突筋に散鍼をして後揉法をしました。
処置後は頭重や肩こり症状が軽減して、楽になり大変気持ちが良いと言います。