鍼灸の科学化こそが求められている
最近、久しぶりにある協会の評議員会に出席して感じたことは、みなさんどうしてこんなにまで発言もなく静かにしているんだろうなアということでした。折角その支部を代表して出席しているだろうにと思うと、果たしてこんなことでいいのだろうかとちょっと心配になります。
近年私どもを取り巻く様々な諸問題について、理事長が詳細に説明をしているのですから、少なくともそれについて疑問なりあるいは自分の考えなりがあるだろうに…。自分の考えや意見を述べているのはほんの数人に過ぎず、それですべてが決議されていくようでは、本当の審議がされたのだろうかと疑問思うのは私一人だろうか!いや声には出さないがそう思う人はいるはずだと思います。
私が最初に久しぶりにと書いたのは、私の支部の評議員が健康を害して、途中から再度私が代わって出席することになったからでした。
このように大勢出席していてもあまり発言がないのは、ことこの協会の評議員会だけに限った現象ではなさそうに思います。幾つかの会議に出席していても、質問や意見を述べるのは大体決まった1部の人であります。
今回出席した評議員会で、取り上げられた中で私が最も興味深く感じたことは、以前から問題視されている「鍼灸・マッサージ」に関する法律217号の中の第19条でした。
「鍼灸・マッサージは、視覚障害者にとっては最も適した職業であり、大半の視覚障害者は、鍼灸・マッサージを職業として、生活を支えてきたという鍼灸・マッサージの歴史があります。
ところが、ここ10〜20年くらいの間に、晴眼者の鍼灸・マッサージの有資格者が増加して、視覚障害者の鍼灸・マッサージの職域が狭められていることは確かな事実です。そのため、鍼灸をこの法律19条にマッサージと同様包含して、晴眼者の鍼灸養成学校の新設を制限するということでした。そのための請願を国会議員へ働きかけているというものです。だから、ブレーキをかける前にみなさんも協力して欲しいというのが、理事長の強い要望でした。
私も、鍼灸・マッサージ業に晴眼者が進出して、視覚障害者の鍼灸・マッサージ職域が脅かされて、視覚障害者の死活問題になっていることは承知しています。がしかし、なぜそれほどまでに鍼灸を19条に包含することに固執し、躍起になって誓願までしなければならないのだろうか?
鍼灸に晴眼者が進出して来たからこそ、あれほどまでに鍼灸大学の設置に難色をしめしていた文部省(現在の文部科学省)が設置を認可し、今の鍼灸大学があるわけで、未来の鍼灸の発展を考えれば、あながち19条に鍼灸を包含して、晴眼者の鍼灸養成学校を制限することが最良の手段ではないように私は思うのですが…。
それほどにまで視覚障害者の鍼灸・マッサージ業に危機感を感ずるのであれば、『埼玉県吉川市の鍼灸師養成施設「埼玉東洋医療専門学校」(浅野勝己校長、生徒数222人)が開校時(00年)に旧厚生省から認定を受ける際、同省規則で定められた専任教員数を満たすため、学校長(当時)らが知人3人の名義を借りていたことが17日、分かった。』と毎日新聞が報じていたが、このような違反養成学校や、近年巷に無免許で開業している「整体術」・「カイロプラクティック」・「足裏マッサージ」など無資格業者こそ取り締まっていただきたいものです。
もし、視覚障害者の職域確保のために鍼灸・マッサージが視覚障害者のみに与えられていたとしたらどうでしょうか!おそらく旧態依然の鍼灸・マッサージの域を続けていたであろうと思います。そして、鍼灸大学も開設されていなければ、今日ほどの鍼灸の発展はなかっただろうと思います。
例えば、鍼がendorphin(エンドルフィン)を脳から産生することや、パーキンソン病の患者に鍼をすると、血中に含まれるドーパミンが増加することなど、科学的な研究を進められるのは、晴眼者でなければ無理であるということからも、晴眼者が鍼灸業に進出して、晴盲が鍼灸業を共有していくことこそ、より一層の鍼灸の科学化に繋がるのではないだろうか。