ホームヘルパーの資格




 先日、ホームヘルパー三級の講演(というとオーバーかなあ)をして欲しいと、当地の社会福祉協議会より依頼があり、話をしてきました。

 昨年もこの11月に、ホームヘルパーの講義をしましたので、今年は私でなくても他にどなたかにお願いしてみてはと一度は断りましたが、どうしてもということでまた引き受けることになりました。

 聞くところによると、ホームヘルパーの三級の資格を取るには、50時間講習を受けなければならないとのことです。

 詳しくは分かりませんが、大学の先生をはじめ、看護師やケアーマネージャの専門家にお願いして、医療や心理学、看護の仕方など、いろいろ専門的知識を受講するそうです。

 全て受講して、はじめて資格が得られるとのことですが、人の介護するということは、それなりの知識が必要だということで、ホームヘルパー三級の資格一つを取るにも、大変な勉強しておられるということですね。

 私の場合は、特別講座ということでしたので、視覚障害者の立場から話をさせて頂きました。今年の受講者は、昨年より少なく15名でしたが、最近は、不景気でリストラで退職された女性がホームヘルパーの資格を取る人が増えつつあるそうです。

 2時間の受け持ちでしたが、1時間半は話をして、残り30分を二人一組になってもらい、エスコートの仕方を実際に行って頂きました。

 講義の中で、実技も紹介しながら話を進めましたので、Oさんにサポートをしてもらうことにしました。昨年もOさんに手伝って頂きましたので、ことはスムーズに運び、呼吸はばっちりでした。

 昨年は天気が良かったので、屋外で乗車の仕方なども訓練出来ましたが、今年はあいにくの雨天のため屋内での訓練になってしまいました。

 ホームヘルパーは、各家庭を訪問して高齢者(介護保険認定を受けている者)や視覚障害者に接する仕事ですから、主には、人間関係について、高齢者や障害者に接したとき、どのように対処すれば良いかなど、詳しく話をしました。1時間半も話がよく出来たものと、いまさらながら自分でも感心しております。

 介護をする上において最も大事なことは、介護をする側と受ける側とのお互いが信頼関係を持つことです。ホームヘルパーがどんなに尽くしても、今よく言われる社会的弱者だとして、相手の人格を尊重しなければ、絶対に心のベルトが繋がることはありません。どんなに高齢者であろうとも、視覚障害者であっても、相手にもプライドというものがあるものです。

 ホームヘルパーが絶対守って頂かなければならないことに、プライバシーの問題があります。仕事上で知り得た個人の情報を他言してはならないことです。これを守れなければ、ヘルパーの仕事がどんなに立派であっても受ける側の信頼は得られないことになります。

 同じ家を長く訪問するうちには、相手とも親しくなったりもします。しかし、 人それぞれいろいろな人生があります。親しくなったからといって、相手が話さない限りプライベートなことは聞かないことです。深く相手の生活の中に入られることを拒む者もあるからです。仕事だからといっても限度があり、一定の距離を持って介護に当たることも必要です。

 高齢者だから・視覚障害者だからといって、初めから偏見や先入観を持たないことです。「あれも出来ないのでは…」・「これもやれないのでは…」では、介護を受ける者としては心外だし、不信感をあたえることにもなります。

 私が知っているホームヘルパーの中にも、「視覚障害者だから出来ないはずだ」とか、「そういう家庭だから、そのようにしなければならないんだね」と言います。これこそが、偏見であり、先入観そのものです。

 買い物や病院へガイドして行っても、決して本人を差し置いて、事を済ませてはいけないことです。私も何度か経験がありますが、これでは、相手を無能者とみなされてしまい、惨めな思いをさせてしまいます。折角の親切が仇になってしまいます。

 買い物をするには当然金銭の受け渡しが生じます。お金の受け渡しには注意が大切です。預かったときには、必ず金額を伝えることです。うっかりして、間違えたりしてお互い気分を害することにもなりかねません。この程度で済むことならまだしも、信頼を無くしてしまえばホームヘルパーにとっても不幸だし、一度失った信頼を取り戻すことはなかなか難しいものです。

 病院の他、役場や郵便局あるいは、銀行などへ出向いた時は、窓口で書類を書くことがよくあるものです。そんな時、代筆した場合は、必ず本人に内容をはっきり伝えることです。それによって本人も納得するし、安心もします。

 これは、出先のことだけには限りません。本人に届いた郵便物や公の書類も同様ことです。人によってはこれらは読んでもらったり書いてもらわなければならない場合もあります。要点だけを相手に伝えるのではなく、初めから最後まで読んで上げることです。そうすれば、本人がどういうものであるか判断出来ます。

 くどいようですが、介護をする時現在相手がどんな状態にあろうとも、一人の人間として、尊重し、接することです。決して「おじいさん」・「おばあちゃん」と呼ばず、相手の名前で呼ぶことです。

 そして、相手を思いやることも大切ですが、優しい言葉をかけられることが、高齢者にはどんな親切よりも嬉しいことです。



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