久々の上京
毎年何回かの催しがあり、その呼びかけがある度に参加して見たいという気持ちはあるのに、どうしても二の足を踏んでしまうのはなぜだろうと思う時、やはり一人での単独歩行に自身がないことに気が付きます。
数十年前は、一人で東京へ行っていた自分が、どうしてこんなにまで臆病者になってしまっただろうと情けないと思うと同時に、体調が優れないことや、ホームからの転落事故を聞くと、この歳まで事故に遭わなかった自分を何も危険にさらすこともないだろうと、知らずしらずの内に自分にブレーキをかけてしまっているのかも知れません。
日本には視覚障害者が35万人はいるとされています。その内どのくらいの人が単独歩行をしているかについては定かではありませんが、視覚障害者の単独歩行中に二人に一人はホームから転落していると言われています。中には5回も転落経験があるという視覚障害者もおります。
「バリアフリー」とか、「ノーマライゼーション」とか言われる中、視覚障害者にも不注意はあるとは言え、何と視覚障害者がホームからの転落事故が多いことか!!これは、わ笑って済まされるものではなく、視覚障害者の歩行が常に危険にさらされているいるということを意味します。そんな中、A会社が主催するイベントに参加すべく、一人で上京することになりました。
2002年から、支援費制度が開始され、事業者と契約することでホームヘルパーさんと外出が可能となりました。これは視覚障害者に取っては大変有りがたい制度であり、多くの視覚障害者も利用しています。
そこで、この度、私が上京するに当たって、私が契約している事業者へホームヘルパーの要請をしましたが、受け入れてもらえず、仕方なく一人で上京ということになりました。
とは言え、往復とも単独であればおそらく東京行きを断念したかも知れません。が、ご親切に東京の早川様が案内して下さるという嬉しいお返事を頂きましたので、私の希望が叶えることになりました。イベントへ行くこともさることながら、初めて早川様にお会い出来るのも楽しい一つとなりました。あるいは、こちらの方に重きがあったのかも知れません。
さて、2004年11月20日の当日、午前10時17分下諏訪駅発「あずさ12号」で上京するためヘルパーさんに下諏訪駅まで送ってもらいました。幸いと言うべきか、同じ列車で東京へ行くという知り合いがおられて、私は前もって座席指定の切符を買っていましたので、車内は指定席まで案内して頂きました。
道中新宿駅まで行って快速電車で戻ればいいかとも考えましたが、新宿駅は最近まで改築工事をしていてな単独歩行は無理だろうと聞いていましたので、八王子駅で下車しました。
私の記憶では、八王子駅は3番線に停車するとばかり思っていたのに、2番線に停車したのでちょっと勝手が違いました。下車して快速電車を待っていると、中年らしき女性が、
「そこから先は危ないですよ」
と声をかけてくれました。私が乗車するのをヘルプしてくれるのかなア…。それとも同じ電車に乗るのかなア!!と思っていましたら、いつの間にかその女性はいなくなっていました。つまりそれは、私が人に頼ろうとする甘えからくる思いこみでしかなかったのですね(笑い)。
暫く待っていると、快速電車がホームに入ってきましたので乗ると、どなたか座席を譲ってくれました。車内のアナウンスに、「立川」・「国立」・国分寺」・「三鷹」・「吉祥寺」や、車内のみんなの話し声に懐かしく、とうとう東京へ来たなアと思いつつ、4、50分がいつの間にか過ぎて中野駅に着いていました。
下車して階段を降りて改札口へ行くと、
「中野サンプラザのイベント会場へ行かれますか?」
と声をかけて近寄って来る女性に
「はい、そうです」
と言いますと、
「じゃあ、私が一緒にご案内します」
と言って会場まで案内してくれました。サンプラザまで行く途中で尋ねると、今日のイベントのためにA会社よりボランティアを頼まれて時々中野駅まで来ておられるとのことでした。
イベント会場へ着くと、フロアには十数社が視覚障害者用器機を出展していました。受付をすませて、各メーカーの器機を手で触りながら見て回りました。皆さんとても親切で丁寧に説明をしてくれました。私が最も期待していた「ユビキタス」の講演はなかったようでした。ちょっと残念でした。即売もしていましたので、買いたい物も幾つかありましたが、2点だけ買うことにしました。
午後4時に閉会となり、早川様と「初めて行き会った感じがしないね」などと、いろいろ雑談をして、5時の会食までを過ごしました。
会食の時、自己紹介があり、山口県や岡山県からも参加しておられました。大変熱心というか感心する他ありませんでした。私は新宿駅19時発の「スーパーあずさ31号」に乗るため、6午後時過ぎに一足先に挨拶して早川様と会場を辞しました。
思っていた通り、新宿駅は私が数十年前利用していた時とは全く様変わりして、ホームを移動するにもエレベーターを利用しなければならず、到底一人では歩行出来るものではありませんでした。発車時間も近くなり、早川様に「あずさ」の座席まで案内して頂、早川様とお別れして帰路に着きました。
早川様には大変お世話様になりました。心より厚く御礼申し上げます。