第4学年 総合的な学習授業案
 
1,日時 平成12年12月6日(水) 
 
2,テーマ名  ケナフに学ぶ
 
3,目標
・ケナフについて、自分なりの課題を設定し追求しようとする。
 
4,テーマと子ども
 男子21名女子15名。元気な明るいクラスである。夏休みに男子1人が転校し
36人である。授業中は、友達の発言を聞いたり、学習内容をノートにまとめたり、前向きに取り組む子が多い。発言も、意欲的にする子が多く、活気ある授業を行うことができる。
 総合学習では、4月から、ケナフを育てている。特に1学期は、ケナフの世話を中心に取り組んできた。子どもたちにケナフを育てようと呼びかけると、子どもたちは、昨年度校長先生が育てていたケナフを覚えている子がいて、僕もやってみたいと意欲をみせる子がいた。私は、頑張って育てれば4メートルぐらいになることを話すとよけいやる気になった。4年生の子どもたちは、やってみようという気持ちが前面に出る子が多い。
 1学期は、ケナフの観察や草取りを行った。ケナフはどんどん大きくなるにつれて子どもたちもびっくりしていたようである。ケナフがいつの間にか自分の身長よりも多くなっていく様子を観察し驚いている子もいた。子どもにとってはあたかも自分が大きくなったような気持ちになっている子もいたようである。自分とケナフとが重なって関わりを見せているように思えた。夏休みも水かけ当番を中心にケナフの世話をした。2学期に入っても毎日の水かけを行い、その成長を観察してきた。
 11月に入り、子どもたちにこの後ケナフをどのようにしていきたいのか、アンケートをとった。子どもたちから主に出されたものは、食べること紙をすくことであった。子どもたちの詳細は以下の表に記す。
 
 総合学習は、子どもの主体的な学習を願った教科である。教師が一方的に教える授業と違い子どもから問題が出されそれを追求していく。これまで子どもたちはケナフのことをインターネットをつかって調べさせることもしてきた。しかし、今のところケナフを漠然と捉えているだけで、本当に何をしたいのか、自分の課題が決まっていないのが現状である。
 
 そこで、11月後半に収穫したケナフを使って何をしたいのか、子どもたちに投げかけることにした。単なる紙すきという答えだけなく、その紙すきから次に何をやりたいかまで、子どもたちに考えさせることにした。
子どもたちから
・紙すき
・料理
・ケナフはどこが産地なのか
・ケナフはなぜ注目されているのか
・ケナフ新聞作り
・ケナフのひみつを探したい
などの考えが出された。
 
 総合学習は、子どもから出発する教科である。子どもたちが教師の目標に沿って授業をするのではなく、子どもたち自らがやりたいことをやるという観点で授業展開を組んでいこうと考えている。
 
 このような活動をすることで、子どもたちには、自分の課題を解決追求する力が育ってほしいと願う。
 
 教師側の手だてとしては、紙すきや料理の方法をある程度把握しておく必要がある。子主たちの疑問に答えることも教師の役目であろう。また、一人ではすべてのカバーできなので、級外の先生方や地域の方を巻き込んでいくような取り組みをしていくことが今後必要になる考える。
総合学習の捉え方 
雑誌総合学習  
 
総合学習的な学習における学習のあり方
 
1,総合的な学習の時間の趣旨・学習活動から
 総合的な学習の時間において、各学校は、地域や学校、児童の実態等に応じて、横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする。
 
各学校においては、2に示すねらいを踏まえ、例えば国際理解、情報、環境、福祉、健康などの横断的・総合的な課題、児童の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた学習活動を行うものとする。
 
横断的・総合的な課題
 

 
   テーマ
 

 
 
 
 児童の興味・関心に基づく課題
 
地域や学校の特色に応じた課題
 
 
 
学習課程の設定
(1)自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決すする資質や能力を育てること。
(2)学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにする。
 
 
         学ぶ力
 
 
関わる力
 
調べる力
 
考える力
 
表す力
 
 
学ぶ力は、学習課程で、もう少し細かく分かれる。すなわち
・問題発見力
・計画力
・行動力
・自己評価力
・実践力
という5つの力だと考えている。
 総合的な学習については、今日のような評価は行わず、「つけたい力」の観点に基づいて自己の評価、相互評価、教師の評価を組み合わせた加点的な評価を行っている。
 
5,展開  20時間  本時は14時間目


目標

活動内容












10














































 

・ケナフのことを知り、育ててみようとする気持ちになる

・ケナフの観察栽培をする




・自分の課題を解決するために追求する





































・自分たちの成果を発表しよう

・他の学校にも自分たちの成果を紹介しよう

 

 
  ケナフを育てよう  
・大きく育てるぞ
・たくさん水をあげて大きく育てよう
 
  ケナフを大きくするためにはどうすればいいのかな  
・水をたくさんあげることが大切
・どんどん大きくなってきた
・支えもしないといけないな
・ケナフを倒さないようにがんばろう
 

 
大きくなったケナフで何をしたいかな
課題を考え、学習計画を立てよう

 
 
  紙すき  
 ケナフで紙ができると聞いたことがあるので、紙を作って みたい
 どのようにしたら紙ができるか調べる

 調べたら実際に紙を作ってみる

 できた紙を使って友達に年賀状を書いてみる

 紙の作り方を発表する
 
  食べ物  

 ケナフで食べ物ができそうだ

 ケナフで食べ物をつくってみたい

 ケナフ料理の作り方を調べよう
 インターネットで調べてみよう
 
 ケナフ料理を2年生にもたべてもらおう
 
  染めもの  
 
 ケナフでそめものを作りたい

 どうやってやるのか調べてみよう
 染め物に挑戦しよう

 きでたことをみななに発表しよう
 
  ケナフのことを調べてみたい  

 どうしてケナフが注目されているのか調べよう

 ケナフってどんな植物なのかな調べてみたい

 調べてことを発表してみたい

 
 インターネットでケナフを育てている学校と交流をしてみた い


 
 
 
6,本時の授業
 
(1)本時の目標  
自分の課題が達成できるように活動することができる
 
(2)研修テーマとの関わり


 

自ら学び、意欲が持続する支援の工夫
 


 
 自ら意欲が持続するためには、自分の課題にどれだけ挑戦できるかである。そのために本時の計画を子供と共に綿密にしていくことが必要である。計画がしっかりなされたなら子どもたちは目的をもって前向きに取り組むであろう。
 また、子どもたちの意欲を継続させるためには、アシスタントティーチャーが必要である。子どもたちの目的に添うためには、担任一人ではカバーできない。本校では、学年部で手助けをお願いするのは難しいので、級外の先生に依頼する。教師は、子どもたちの質問に答え、危険がないか確認しながら授業を進めることになる。
 
 
 
 
(3)本時の展開
 

学習活動と予想される児童の表れ

 
 

(評価)自分たちの行う、活動を他の人に発表できたか

 
 ※説明の仕方が分からない子については、事前に何を説明すれば良いのか話しておく。






 


 

今日やることをグループごと発表しよう
 


 

  紙すき
 今日は実際に紙すきをします
 どんな紙ができるか楽しみです
 
 料理
 自分たちで料理を作ってみます
 本当にできるのか楽しみです
 
 染め物
 布に色を染めてみます
 どんな色が染まるのか楽しみです
 ケナフでどんな染め物ができるのか楽しみです
 
 

(評価)自分の目標に向かって活動できたか


 担任一人では対応できないので、級外の支援をあおぐ

※紙すき、染め物、新聞作り 担当し個人指導に当たる
料理は、アシスタントティーチャーとして にお願いして、指導に当たる。 








 


 

自分の課題に向かって頑張ろう
 


 

 紙すき
  紙になる材料を水に溶かして、紙すきの準備をする
  紙すきをしてみよう
  紙が厚さが同じぐらいになるように、ていねいに紙すき  を行う
  紙すきを行った、紙は、天日で乾かす
  

  
 新聞作り
  みんなに読んでもらえるように、字を大きく書いたり、  絵を入れたりして工夫しよう
 


 染め物 
  お湯を沸かし染める準備をしよう
  ケナフの花や葉で染めてみよう
  染めた布を乾かそう
  
 


 料理    作る料理 天ぷら ハンバーグ クッキー          
  料理の準備をしよう     
  料理の材料を切る      
  料理に取りかかろう     
  できた料理を試食しよう   
  他の人にも食べてもらおう 
  ハンバーグ(1)
 
  ハンバーグ(2)
 
  ハンバーグ(3)

  天ぷら(1)
 
  天ぷら(2)
 
  クッキー
 
 

※危険の無いように、教師が見守る。







※アシスタントティーチャーとして、  にお願いして、料理をみていただく。紙すき、新聞作り、染め布は、  が行う。






 

 
 



(評価)活動の反省がで
きたか




 
  今日の学習の反省をしよう  
 自分の目的にそって活動できたか
 反省しよう 
 


 

資料
 
21世紀の学校づくり−生活科と総合的な学習−
 
99/8/3 静教研生活科研究部  講演:中野重人先生(国立教育研究所)
 
 
◆先生たちの心は晴れていますか?
総合的な学習の時間を作るために、各教科から時間を供出しました。945時間
のうちの110時間が、総合的な学習にあてられています。国語などは、1〜6
年で220時間ほど供出しました。教科の時間数が減ることを、納得できます
か、認めることができますか?心のどこかで、モヤモヤしているんではないで
しょうか。
 
でも時間の針は止まりませんよ。2年後は総合をやらなくてはいけないので
す。学習内容が減りました。自分の好きな教科も何時間かずつ削られていま
す。先生たちは「さあ、総合をやろう」と本気で思っているでしょうか。現場
に戸惑いはないでしょうか。
 
 
◆なぜ総合的な学習を創るのか
公式な理由として示されているものには、「生きる力」「現代的課題に対応す
る」「特色ある学校づくり」の3つです。これだけの理由で心のもやもやは晴
れますか?今までだって、「生きる力」をつけてきたし、国際理解やコン
ピュータもやってきた。行事では「特色ある学校」になるよう努めてきたじゃ
ありませんか。新しく総合的な学習を創る意味があるのか?こんな疑問があり
ませんか?学習内容を減らされて、釈然としている、そんな先生も多いのでは
ないでしょうか。
 
◆総合的な学習を創る意味をどこに求めるか
総合は教育課程4本目の柱です。これまでの3本(教科、道徳、特活)とは違
うというところに、総合を創る意味を見つけたい。「総合」の反対言葉は「分
化」です。「分科」とも書けるでしょう。もちろん「分科」の科は教科を意味
します。各教科があるから、総合の存在価値があります。分けているものがあ
るから、まとめた総合が必要なのです。
 
各教科には、目標があり内容があります。いうならば「ここまで来い来いの教
育」です。早く来た子はりっぱだねと認められ、後れてきた子はダメ。そうは
言わないまでも、先生たちは、のんびり屋さんに対して「何とかしよう」とす
るわけです。
 
この「ここまで来い来いの教育」の授業時間数(=各教科の時間数)は、総授
業時数の9割もあるのです。道徳、特活が残りの1割です。早く来た子は元気
が出ます。「偉かった、よかったね」といえば、そういう子は元気が出ます。
それはそれでいいでしょう。たくさん誉めてあげればいい。
 
では、早く来られない元気のでない子は、しかたのないことなのでしょうか?
学校ではどの子にも元気とやる気を持たせることはできないのでしょうか。そ
れが総合の時間の創出となりました。「ここまで来い来い」ではなく「目的地
を決めて自分のペースで行ってみよう」なのです。これなら子どもに元気が出
る。
 
だから総合では、目標も内容も示さなかった。子どもが自分で目標を見つけ、
内容を決めていくのです。新指導要領ではこんな時間が、総授業時数の1割強
(110/945)あるのです。ここで重要なのは、学校や教師が目標、内容を作らな
いということです。作ってしまえば「ここまで来い来い」の教育になってしま
います。今までと何ら変わりません。
 
自分で何かをしようとするのが目標になります。それは、一人のときもある、
グループのときもある、学校の場合もありますが、ここに新しく総合的な学習
を創る意味があるのです。学校に来る「どの子にも」やる気と自信を持たせる
こと、これが総合の願いです。
 
 
◆総合的な学習の特徴
【体験】と【子どもの側にたった展開】
・先生の側ではなく、子どもの側から授業を考えてみよう。
・まず子どもありき(総合)←→まず教材ありき(教科)
・自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断する
(中教審第一次答申)
・こんなにも「自ら」のオンパレード。それだけ自らやることを願っている。
 自らやる子をどう育てるか?これが新しい学校づくりのポイントになる。 
 
 
◆総合的な学習は、生活科の弟・妹分
・総合は、生活科の発想を取り入れている。生活科の弟・妹分といえる。
・先生の側ではなく、子どもの側から授業を考えてみよう。
・1,2年生に総合がないのは、生活科の中に総合的な要素があるから。
・総合的な学習が私たちに問いかけていることは、
 「他の人のよさがわかっていますか?」
 「他の人を認めることができますか?」
 「自分のいいところがわかりますか?」
 
 
◆指導要領改訂の2つのポイント
【特色ある学校づくり】
・横並び意識からの脱却。それぞれの学校で違っていいのだ。
・違っていてもいいんだけれど、どの学校にも共通する基本がある。
 学校に来るどの子にもやる気と自信を育てること。
 「どの子にも」が大切なこと。
・東京山の手地区では少子化のために、学区外の公立学校へ通う子がいる。
 学校が選ばれるという現象がすでに起こっている。
【総合的な学習】
・目標、内容が示されていない。決められているものがない。
・それぞれの学校で実施することになっている。
 
◆指導要領で見る総合的な学習
・新指導要領のもくじは、前回の指導要領と同じで、変化は見られない。
・新たに作った「総合的な学習という」というもくじ(項目)はない。
・総合的な学習は、第一章の総則に書かれているだけ。
・他の領域に習って、総合を第五章にすると、目標と内容を示すことになる。
・総合的な学習では、この目標の内容を各学校で考えて下さい、ということ
 
◆総合を反対する人がいないのはなぜ?
生活科創設のときには、官民あげて反対されました。「どうせ10年で潰れる
よ」「生活科は、第二道徳科ですか?躾科ですか?」こんな声があちらこちら
から聞こえてきました。今、総合的な学習を反対する人がいません。どうして
でしょう。時代が変わり、社会が変わり、子どもが変わったのです。10万人を
こえた不登校の子どもたち、学級崩壊などの現象が見られ、学校を変えること
が必要になったのです。
 
マスコミは「先生たちはよかったね。やりたいことができるようになったね」
と総合的な学習を批判していません。先生方からも今のところ批判が出ていま
せん。皆さん今、何を思っていますか?私は、本格実施になったら不満、批判
が吹き出すのではと心配しています「110時間もできるのか」「指導計画を作
れない」「うちの学校には何もない」などなど。総合的な学習について前向き
に取り組んでいる人は、まだ10人のうち1人〜2人でしょう。