鳥のソナタ Part 3

第 11 羽 夫婦水入らず
  ところが、夫のヒサ(サンヒョク)が旅行に選んだところは、こともあろうに、ハル(ユジン)とゴマ吉君(チュンサン)が初雪デートした場所の湖の側の山林の中だった。
確かに、この辺の観光地といえば、そこが一番有名な景勝地だったのである。
季節は秋だったので、雪はなく、ハルは、ゴマ吉君や子供達のことはスッカリ忘れて、思いっ切り、夫のヒサと楽しく飛び回って遊んだのである。
そういえば、子育て中は、ほとんど穴倉ともいえる巣箱の中で、一日中過ごしていたのである。
「良くもあんなに頑張ったものだ」と、ハルは自分で自分を褒めてやりたい気持ちで一杯だった。そして、夫のヒサも、立派なお父さん振りを見せてくれて、あらためて惚れ直したことは、間違いなかった。
そして、この旅行中に、観光客の人が、大好物のお米とトウモロコシをくれたことが、一番嬉しかった。というのも、しばらくの間、子供達への口移しでの餌やりに忙しく、、殆ど、自分達の為の食事はゆっくりとることができず、2羽とも栄養不足になっていたのだ。
誰にも気兼ねすることもなく、おいしいご馳走も一杯食べ、湖でゆっくりと水浴びし、本当に楽しい旅行だった。
第 12 羽  あずき色の男の子の出現
  ところが、楽しい旅行を終えて、夫婦水入らずで幸福な生活を送っていたある日のこと、突然、ハル(ユジン)の目の前に、得体の知れない、あずき色のボサボサした羽毛の、どう見てもハルのタイプではない男の子が、突然姿を現すようになった。この男の子は、ハルを見かけると、少し猫を蕪って照れているような時もあるが、やっといなくなったと思えば、又時々現れては、イタズラをしており、この男の子の出現で、せっかくのヒサ(サンヒョク)との水入らずな幸福な生活のペースを、すっかり乱されてしまった。
こんなに、お行儀が悪いのはきっと、お母さんから、キチンと躾られずに育った可哀想な子なのかもしれない。
本当に嫌な感じだったが、ハルはこのように考えて、なんとかやり過ごしていた。そのうち、いつの間にか、この男の子の姿も余り、見かけることもなくなり、ハルは、少しホッとしていた。
第 13 羽  ゴマ吉君(チュンサン)の影
  そして、とうとうヒサ&ハルは結婚一周年を迎え、2羽で結婚記念日のお祝いをしようと、待ち合わせをした日のことだった。
久しぶりに、念入りに毛繕いをして、水浴びをし、おしゃれをした為、ハル(ユジン)はヒサ(サンヒョク)との待ち合わせの時間に遅れそうになった。
慌てて外に出ると、初雪も降り出して来ていた。
少し遅れるということを、ヒサに携帯電話で伝えてから、小走りに駆け出し時だったた。ハルは、雑踏の中にゴマ吉君(チュンサン)そっくりな後姿を発見したのだ。
「これは、夢か幻か??」本当に良くわからないまま、ハルはヒサのことはすっかり忘れて、跡を着いて行ったのだが、追いかけても追いかけても、その後ろ姿に辿りつく事ができず、見失ってしまったのである。
そして、慌てて追いかけた時に、ハルは携帯電話を落としてしまい、待っているヒサが、何度電話をかけても通じなかったのだ。
そして、待ち合わせの場所にやっと辿り着いた時、心配して理由を聞くヒサの前で、ハルは疲れ切って倒れてしまったのである。
そして、予約したディナーコースは、すっかり冷め切っていて、ハルは、ヒサに申し訳ないと思ったが、どうしても、さっき見かけた、ゴマ吉君に似た後ろ姿のことが、気になってしょうがなかった。
ゴマ吉君のような、素敵なごま塩加減の配色の羽毛を持った男性は、まだ一度も巡り会ったことがないのだ。あれは、きっとゴマ吉君に違いない。


第 14 羽  テツ(チェリン)の帰国
  ゴマ吉君(チュンサン)に似た男性の姿を目撃した日から、ハル(ユジン)はヒサ(サンヒョク)への申し訳なさや、ゴマ吉君のことを思い出し、憂鬱な日々を送っていた。
そんな折、かつてのクラスメートで恋のライバルだったテツ(チェリン)から、突然、メールが届いた。
テツはアパレル関係の仕事をする為、しばらくパリに留学しており、最近、帰国したばかりだという。そして、ヒサ&ハルの新居の側にお店をオープンするので、今はその準備に追われているとのことだったが、開店前に一度会おうということだった。
そして、テツは、アルバイトにハルの親友で、クラスメートのトモ(チンスク)を雇ったということで、3羽で、久しぶりに会うことになった。トモは学校を卒業してから、中々いい職場に巡り会えず失業していたのだった。
久しぶりに会ったテツは、益々派手になっていた。
2羽は徹夜で開店準備に追われていると言い、眼は充血して赤くなっているのが、少し気になった。
しかし、テツは自分でデザインしたという薄茶色の上品な衣装を身に着けており、頭には、こげ茶色の高そうな帽子を被っている。その上、見栄を張って、アルバイトのトモにも、会社の経費で同じ衣装と帽子を被せて、これ見よがしに、ハルとの待ち合わせの場所に現れたのだった。その態度は、まるで学生時代、ゴマ吉君を奪われたハル(ユジン)への恨みを晴らすかのようだった。
テツの充実し切った美しい姿と衣装は、出産後で、少し衣装も擦り切れてきていたハルには、とても眩しく感じられた。
そして、親友のトモは、アルバイトの身の上なので、横で小さくなっている。ハルは、とても嫌な感じがした。
やっぱり、その予感は的中した。
テツは、「私、恋人ができたのよ。今度紹介するわね。」とニヤリと薄笑いを浮かべたのである。


第 15 羽  テツ(チェリン)の恋人
  そして、その数日後、ハル(ユジン)は、偶然を装って、待ち伏せしていた、テツ(チェリン)とそのハンサムな恋人のデート現場に、バッタリ出くわすのである。
ハルは、そのテツの恋人を初めて見た時は、心臓が止まりそうになった。その恋人は、「学生時代の初恋の人(鳥)、ゴマ吉君(チュンサン)とうりふたつではありませんか!!」もちろん、テツ(チェリン)は、そのことを意識して、わざとにハルを待ち伏せしていたのだ。
そして、動揺するハルの心を見抜いて、まるで見せびらかすように、イチャイチャとするのだった。
ハルは、とても辛かったが、結婚1周年の日に道すがら見かけた、ゴマ吉君ソックリの後姿の男性は、きっと、このチェリンの恋人だったのだろうと納得し、「かえって、ゴマ吉君のことがふっ切れて良かった」とも思っていた。
 

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