ポテトチップ×チョコレート〜恋敵は黒いヤツ〜

ポテトチップ×チョコレート

〜恋敵は黒いヤツ〜


 リリアン女学園高等部に通う学生、桂は何を隠そう無類のチョコレートとポテトチップス好きである。彼女は部活のテニスを終わらせ、家に帰った後は必ず保管してあるチョコレートとポテトチップスをコーラで流し込むのが習慣、いや生活の必須要素として組み込まれていた。しかし、それを好まぬものもいた。者ではない。これこそ、何を隠そう食われるポテトチップスとチョコレートであったのだ。
 彼らは別段食われることに異存はない。しかし、コーラ。この黒い液体こそが彼らの憎むべき相手なのであった。毎度毎度、包装されそして桂の手に届きやっと、やっと念願かなって合間見えたポテトチップスとチョコレート。その間に割ってはいるのがコーラであったのだ。
 
 OPテーマ
 さらば〜 大地よ〜 旅だ〜つ俺は〜有機栽培〜 ポーテートー
 畑を離れ、ダンボールの中へ! おいしさたも〜ち今ー、とびーたーつーー
 かならーずチョコとー 添いとーげるぜと〜


「あ〜ぁ 疲れたぁ」
 ドアを開けて制服を脱がぬままベッドに倒れこむ桂。数回深呼吸して顔を上げる。
「よし! 」
 疲れが少しは取れたのか、スッと立ち上がって勉強机の椅子に座ると、徐に一番右下の引き出し、つまりもっとも大きなそこを開け中からポテトチップスとチョコレートを取り出してベッドへ投げた。そして、するすると慣れた手つきで着替えた後部屋から出た。
 トットットッ
 階段を下る音が開け放たれたドアから聞こえる。そんな中、それよりももっと小さな。ネコの足跡よりも小さな声で、会話している者たちがいた。
(チョコ、チョコなのか・・・!?)
(ポ、まさか、ポテトチップス!? ポテトなの!?)
 今まで同じ所に入っていたというのにおかしなセリフが飛び交う。
(あぁ、漸く一緒になれるんだね。このときをどれだけ、どれだけ待ち望んだことだろう! 俺の同胞が違う根っこで育っている間から、いや、世界が生まれたその日から!! 俺は君と一緒に食べられることだけを夢見ていたんだ!)
(その物言いはきになるけど、でも私もあなたと一緒に食べられることだけが、生きる目的だわ! ほん、本当に・・・)
(お、おいおい泣くなよ。これから一緒になれるんだ。悲しいことじゃないんだよ。)
(そうね…… なんだか眼から甘い液体がでてきちゃうわ。眼なんてないけど。)
(あぁ、俺もだ。俺もしょっぺぇなにかがしたたってきやがる)
 トットットッ
 へたくそな鼻歌と共に桂が部屋に戻ってきた。開けっ放しにしておいたのは、このためか両手に何かを持っている。なんだろう、なんだろう。今から自分達を食べてくれる人が何を持っているのか二人は気になった。そしてよ〜くみるとそれは、コーラだった。



(おい! どうして、どうしてコーラなんだ、桂! どうして俺達をそっと一緒に食べてくれない!!)
 桂は無造作にポテトとチョコを同時に放り込み、そしてコーラを流し込んだ。
(あぁ、チョコ! チョコぉぉぉおおお!!」
 手を伸ばせど、手はなく。見る見るうちに噛み砕かれて薄れていく意識。頼んだぜ、相棒。俺たちゃ、全にして個、個にして全。俺が、俺が死んだところ、で・・・
(ポテトーーーーーー!!!)
「ほんと、最近の番組っていいのないのよねぇ・・・」
 部屋に戻った桂はまず右手にもったペットボトル1.5リットル仕様をグラスに注ぎ、まず一杯。ぷっはー! などと勢いをつけたところで豪快にポテトチップスを彼女お決まりのセリフでパーティー開きしたのだった。
「○○ワタをぶちまけろ!!」注)顔に傷はない。
 部屋に死神がいるような人ならばもう少し優雅にしただろうが、彼女は残念ながら桂であった。そして、それが終わって一枚口に放り込んで口をもしゃもしゃしている間にもう一つ。チョコレートの包みを開け始めた。こっちはやや丁寧に。銀紙を綺麗にむけるかどうかで小さい頃、今日は勝った! などと内心はしゃいでいたのを思い出す。ちなみに、中学を卒業してからこっち、勝率は1割をきっている。どこでまちがったか、ハラワタこそぶちまけないがどうも指先が器用でないらしい。漸く出てきたチョコの頭をパキッと折ってそれをまた口へ放り込んだ所であった。そこで、二人の願いは達せられたはずだったのだ。

 ポテトは思った。どうして、どうして悲しみはなくならない! どうして人はいつもコーラを一緒に飲むんだ! どうして、どうして……!
 そのときである、チョコの姿と共に遠ざかる意識の中一つの光をポテトは見た。
「汝、力を欲するか」
「欲しい! チョコと添い遂げるための力が欲しい!!」
「力を欲するか!!!」
「……!!!!」
 最早声も出ず、ただ意志でそれに答えたポテトは次の瞬間その体に力がみなぎっていくのを感じた。これなら…… やれりゅ!! 舌をかみながらポテトはその拳を近くに生えていた白い歯にたたきつけた。自分の黒い拳が白い壁にめり込む。飲み込まれても、飲み込まれない! もう一発叩きつける。そのたびに白い歯は徐々に徐々に黒く変色して行った。
(ポテト! ポテトどうしたの!? あなた、変わってしまったのね…… ミュータンスに魂を売ってしまったのね。どうして!? あの純粋な頃のあなたはどこへ行ってしまったの!? 男爵でもメークインでもなんでもいい! 私はポテトの貴方を愛していたのに……)
 それは悲しい物語の始まりであった。



 続きません







[執筆:芝村巡査  芝村police box




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